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感染症と疫学~大学院で学んだことから~

オミクロン株が猛威を振るっていて、息子が通う中学からも「風邪症状が出たら休んでください」との通達が・・・・・コロナウイルスが世に知られてから、2年が経過しますが、いつになったら収まるのやら( ;∀;)

マスコミは毎日、毎日、「感染者数」だの「罹患率」だの「実効再生産数」だの報道しており、SNSには、「そんなの意味がない」「収束とは関係ない」などという意見が飛び交っておりますが、マスコミが報道することについてはさておき、疫学的には、非常に「意味がある」数字なのです。

このことが理解できたのは、「疫学」を大学院の授業で学んだからで、医療従事者の端くれとしては、非常に恥ずかしいことだったなと反省。8割オジサンの西浦教授は、疫学の専門家なので、医師数名が、西浦教授を擁護する意見発信を行っていました。

疫学って何?

疫学とは、集団の中で発生する病気の原因や流行状況などから、病気にかかる法則を研究する学問です。
臨床医は、患者個人の健康に向き合いますが、疫学は「集団の健康」に向き合う学問です。人々の間で病気がどう広がっているのか、何が罹患率の決め手になっているのか、効果的な予防法は何かを分析するのが疫学です。

保健所が中心の積極的疫学調査

積極的疫学調査とは、感染症などの色々な病気について、発生した集団感染の全体像や病気の特徴などを調べ、今後の感染拡大防止対策に用いることを目的として行われる調査です。

アウトブレイク調査は、その中でも重要な調査で、収集した患者情報をもとに、「時」「場所」「人」についてのデータを分類し、解析します。

「時」については、病気が発生した日にち毎に、患者の人数をグラフにすることで、病気が広がる事象が1回だけあったのか、複数回あったのか、人から人に持続的に感染したのか、また潜伏期は何日くらいかなどの見当をつけることができます。

「場所」については、患者が発生した地域を地図などに書き、発生が多い場所や少ない場所を見ます。飛行機のどの座席に座っていたかで、どのくらいの距離の人まで感染するかを検討します。

「人」については、性別、年齢、行動などが重要で、年齢群別の有症状と無症状の新型コロナウイルス感染が確定した割合をみることで、若年層と高齢者層、どちらが罹患しやすいかなどの対策を進めることができます。また、行動として、ある行事に参加した人で患者が大勢発生しているなどがわかると、感染を予防するための対策を考えることが出来ます。

この調査を中心となって、行っているのは保健所。

患者に対する直接の聞き取り調査を行う手法であり、日本のCOVID-19対策にとっては重要な位置を占めています。しかし、感染者が増えると保健所への負荷を極端に増やしてしまうという根本的な課題があり、保健所の負荷を軽減しながら効率良く流行を制御していく方法を探っていく必要があると思われます。

クラスター対策は、積極的疫学調査の賜物

この積極的疫学調査が対策として発揮されたのがCOVID-19のクラスター対策です。各国で行われている二次感染を起こす可能性の低い感染者を全て捉えるのではなく,クラスターからクラスターへの連鎖によって感染爆発が起きることを防ぐことに注力する方針をとっています。
COVID-19の新規陽性者が確認されると、その患者の発症2日前からの濃厚接触者を特定し、前向きに追跡するだけでなく、患者の発症前14日間の行動を調査し、感染源・経路の推定を行っています。

未知のウイルスによる感染症の収束には、感染症の専門的な見方ももちろん必要ですし、コロナウイルスそのものの特性を捉えることも必要、防御機能である免疫からの観点も必要です。疫学が全てではないけれど、疫学的な観点ももちろん必要。このウイルスを収束するためには、疫学を含めた、多くの学問から研究を進めなくてはいけないのではないでしょうか。

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