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2020スペインGPまとめ:風聞〜イタたわGP Vol. 281

コンテンツ目次

【イタたわGPまくら話】
●2020スペインGPこぼれ話(全文無料)

【2020スペインGPまとめ】
●スペインGP決勝戦を左右した5つの鍵

●ホンダ
・マルケスは2~3位に甘んじるべきだったのか?
・なぜマルケスは転倒してしまったのか?
・ホンダ「後悔すべき点など皆無」
・マルケス転倒はタイヤのせいなのか?

●ヤマハ
・クアルタラロー、マルケス不在でも大勝利と言える!
・ヴィニャーレス、2位ながら漂う敗北感…
・モルビデッリ「レース中にエアーバッグが膨らんで…」
・ロッシ「ヤマハ3選手のデータは役に立たず…」
・ロッシの問題点はどこなのか?

●ドゥカティ
・ドヴィツィオーゾ、棚ぼたではなく重要な表彰台
・ミラー、腕上がりではないのか?

イタたわGPまくら話

皆さん、こんにちは。
イタリアから管理人のラ・キリコです。

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既に管理人の方より解約手続きを行ってますので、購読者様の方では特に何もなさらなくて大丈夫です。

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本当に申し訳ありません。


では、モトGPこぼれ話を始めますね。
今回は、2020スペインGPこぼれ話です。

どうぞ、お楽しみ下さい。

2020スペインGPこぼれ話

・マルケス、開幕戦で初めて…
マルク・マルケスがモトGP昇格以来、初めて開幕戦を0ポイントで終えた。
これまでの開幕戦リザルトは以下のとおり。
2013年3位、2014年1位、2015年5位、2016年3位、2017年4位、2018年2位、2019年2位。

・マルク・マルケスはFP3で低速走行し、アレックス・リンスのタイムアタックを妨害してしまったが、処罰を受けたのか?
受けていない。なぜならば、両選手が遭遇した際にイエローフラッグが提示されていたため、全選手は減速しなければならなかったから。

・ドヴィツィオーゾ、ヘレス戦で初めて…
アンドレア・ドヴィツィオーゾはモトGP昇格以来、ヘレス戦での最高リザルトは4位だったのに、今回は3位を獲得し初めて表彰台に上がった。

・ヤマハ、久しぶりの1&2位独占
ヤマハが1&2位を最後に独占したのは2017年ル・マン戦で、優勝ヴィニャーレス、2位ザルコだった(※ロッシは最終ラップで転倒)。
その際の予選でも、ヤマハは1&2位を独占しており、PPヴィニャーレス、2位ロッシだった。

・なぜアレイシ・エスパルガロは予選16位だったのか?
冬季テストでは好調だったアプリリア機だが、今回のヘレスGPでは金曜FPからずっと不調だった。
ドゥカティのダヴィデ・タルドッツィ(チームマネージャー)が明かしたところによれば、アプリリアは安全面を理由にレギュレーションの2点において適用除外を求めているとのこと。
明らかにエンジンの何かが正常に機能していないものと思われ、確かに今回のアプリリアはエンジンの最高回転数を1200~1500以下に抑えていた。

・なぜアレイシ・エスパルガロは転倒リタイヤしたのか?
第3ラップで転倒したエスパルガロのコメント。
「ペトルッチやオリヴェイラよりも自分の方がずっと速いと感じて…無理をしたら、ミスしてしまったんです。
残念ですよ。冬季テストの時のセッティングに戻したら、戦闘力が上がってたんですけどねぇ。トップ8内には入れそうだったのに。」

・なぜバニャイアはミシュランの新タイヤで速くなったのか?
バニャイアが予選で4位を獲得し、ドゥカティ勢トップだったのは、そのライディングスタイルのおかげでタイヤを有効活用できているからである。
モト2寄りのスムーズは操縦は、コーナー中盤でグリップを上手く掴めるのだ。

・なぜフランチェスコ・バニャイアは表彰台争いに加わっていながら、13秒差の7位だったのか?
本人のコメント。
「自分のパフォーマンスには満足してるんですが、ただ、第12ラップ以降、タイヤ消耗で苦戦してしまって。フロントが特に酷かったんですよ。」


では、本編に行きますね!

今回は、スペインGPまとめと言うことで…
ホンダ/ヤマハ/ドゥカティにのみ焦点を当てて、まとめてみました。
どうぞ、お楽しみください。

【2020スペインGPまとめ】

●スペインGP決勝戦を左右した5つの鍵

はい、では今シーズンも、レースの行方を左右した鍵から初めます!

ジョヴァンニ・ザマーニ記者(イタリア衛星放送『SKY』レポーター)がほぼ毎回書いているもんなんですが…
ザマーニ記者、この道25年なんですが、開幕戦に現地いりしなかったってのは初めてのことなんですって。

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で、今回はずっと『SKY』のスタジオからコメンテーターとして解説をしてくれてたんですが…
まずは、新型コロナウイルス対策については、こんな風に言っておりました。
「現地入りしていた全員が常にマスク姿で、あちこちに安全対策が施され、プレスカンファレンスにビデオ通話で参加したり等々…
色々と驚きはしたが、でも、すべて上手く機能してたんじゃないんですか。
ライダーやスタッフタもサーキット内とホテルの往復のみとか、色々と制限があったようだが、それも上手く行っていたし。
あとは、モトGPレースを午後2時に開催するのを何とかした方が良いかもしれませんね。気温があまりにも高すぎますから。
負傷者が多かったが、これも気温のせいじゃないかと思うんです。

でも、とにかく全体的に上手く機能していたと思いますよ。」

そして、レースの行方を左右した鍵は…
今回はこちらの5つになります!

1)酷暑
路面温度58度と言う、セパンよりも暑い極限コンディションのレースとなった。
フランコ・モルビデッリによれば、転倒の大半は暑さのせいだったそうだ。

2)ヴィニャーレスのタイヤ選択
フロントにソフトタイヤを選んだのはヴィニャーレスとロッシだけであり、これはレース後、ヴィニャーレス本人も認めていたとおり、選択ミスだった。

3)マルケスの過剰な自信
第5ラップで転倒持ち直しに成功したマルク・マルケスは、そこから怒涛の追い上げを始め、まるでライバル陣が止まっていたのではないかと思うほど、次々と追い越して行った。
そして、第21ラップで転倒してしまったのだ。

4)ドヴィツィオーゾの明晰さ
レースの流れを完璧に読み解いていたドヴィツィオーゾの能力が、今回の鍵の1つとなった。


5)スズキ不在
リンスはケガで棄権となり、ミールは早々に転倒し…
現在、戦闘力が絶対的に高いマシンが抜けてしまっていたのだ。

ホンダ

・マルケスは2~3位に甘んじるべきだったのか?

第5ラップでフロントが切れ込んだものの、いつもの持ち直し技のおかげでコースアウトだけで済み…
そこから凄まじい追い上げを見せたマルク・マルケス選手
その能力の高さについては高く評価されております…ライバル陣にとっては屈辱的なほどだったと。

しかし、結局、転倒リタイヤとなってしまい…
世間一般では、『マルケスは2~3位に甘んじるべきだった』なんて意見も出ていたんですが…
それに関しては、ザマーニ記者と、あと、エンジニアのジュリオ・ベルナルデッレ氏(モトGP業界では、長年、ホンダ&アプリリアで働いていた)も否定してました。
「チャンピオンライダーたる者、甘んじるべきではないだろう」って。

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これにはトップライダー陣も同意見でして…
例えば、ロッシ選手は、
「序盤でミスしたけど、ペースが良かったからトップ陣のところまで追い上げて行ってましたね。あそこまで行ったら、猛スピードで走るもんでしょ」と言っていたし…

イタリアきっての理論派ライダーこと、ドヴィツィオーゾ選手もこう言ってました。
「気持ちの問題ではなく、あれは無理できそうなスピードが出せていたから、ああ言う風に走ったのでしょうね。
既に表彰台圏内まで来ていてミスしてしまったわけだけど、あれぐらい速かったら挑んでみるもので…実際、そうしたわけでしょ。
当然のことながら、チャンピオンシップの様相は変わってくるだろうし…それはマルクが0ポイントだったからではなく、ケガをして、次戦に出られなくなってしまったからであってね。
残念ながら、ケガと言うのはこのスポーツのネガティブ面であり、誰も望んでいないことだから。
まぁ、マルクは強靭だし、絶対に速攻で復帰してくると思いますけどね。」


・なぜマルケスは転倒してしまったのか?

ただし、ザマーニ記者は、限界点を理解していないと言う点がマズいんじゃないかと言う指摘もしてるんですね。
こちら。
「たとえマルケスでもヴィニャーレスやクアルタラロー、ドヴィツィオーゾら相手に、ずっと0.8秒の差をつけて突っ走り続けるなんて無理だと思うんですよ。
それはもう限界を超えていると自覚すべきじゃないんでしょうか。
まず、マシンやアスファルトの限界点を見極めるべきだったと思うんです。
ライダー達は、皆、アスファルトが酷く滑りやすくなっていたと言っていたじゃないですか。マシンをきちんとコントロールできない状態だったと。
超チャンピオンライダーの立場であるマルケスならば、そう言うことをきちんと理解すべきだったと思うんですよ。
だから、今回は本人の判断ミスだったと思っています。

で、ベルナルデッレエンジニアも、やはり同意見でして…
こんな感じ。
「もっと会計士モードで走るべきだったでしょうね。ルーキー選手でもないのだし、こう言う過密スケジュールの特殊なシーズンなのだから。
マルケスのチーフメカニックのサンティ・エルナンデスが数ヶ月前のインタビューで、
『マルケスが血気盛んな走りをしてしまわないよう、よく落ち着かせていた』と言っていたじゃないですか。
その血気盛んな走りが功を奏したことは何度もあったが、今回はマルケスの限界点になってしまったと言うわけですね。


・ホンダ「後悔すべき点など皆無」

一方、ホンダ側は、当然、そんな風には思ってないわけでして…
チームマネージャーのアルベルト・プーチ氏が、こう言ってました。
「今日はマルクのレベルの高さが、しっかりと理解されたわけでしょ。(手術したての肩のせいで)カタールテストではマルクのパフォーマンスを懸念する者もいたが、今日のパフォーマンスを見れば、問題なしと言うことが明らかじゃないですか。
マルク自身もマシンも、あのパッケージは二歩先に行っていると言えるでしょう。多少速かったなんてもんじゃない、他の誰と比べてもかなり速かったんですからね。
これが違いなんですよ。とにかく、毎年、成長し続けてるんですから。
(転倒については)縁石に乗ってしまったのでしょうね。あと4~5周走っていたら、クアルタラローに追いついていたんですが…マルクの方が1周1秒速かったんですから。
どう言うタイプのライダーなのかは知っていたが、今日は再び、何者なのかと言うことを証明していましたね。
まぁ、今回はあいにく負傷してしまったから、しかっり静養して、これで大丈夫と言う状態になったら、また優勝争いをするようになるでしょう。マルク・マルケスならば、そうなりますから。やることが並外れてますからね。
後悔すべき点など皆無でしょう。今回もまた、当チーム全員がマルクのやることに称賛の念を示してますよ」

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・マルケス転倒はタイヤのせいなのか?

ここ数年は、必要ならば会計士モードで走れるようになっていたマルケス選手なんですが…
どうも、追い上げレースになると限界を超えてしまうようなんですね。

例えば、2018年のアルゼンチン決勝戦もそうだったじゃないですか。
スタート直前にエンジンが停止し、押しがけしつつグリッド内を逆走した後に定位置からスタートしたら、結局、ライドスルー処分になってしまい…
その後、怒涛の追い上げの最中、ロッシ選手を転倒させてしまった時ですよ。
(ブログ関連記事:2018アルゼンチンGP【モトGP:決勝リザルト&トピックス】

ちなみに、上の『レースの行方を左右した鍵』にもあるように、今回のレースの転倒の大半は『暑さのせいだった』と言われてまして…

ミシュランはタイヤはここ2年間でかなり改善され、今回は新カーカスも投入されていたんですが、でも、路面温度が60度まで行ったら問題が起きても仕方がないわけで…
実際、今回はトップライダー陣の多くが、フロントタイヤに泣かされていたんですね。

で、マルケス選手の転倒もそのせいだったのか?と言うと…

ベルナルデッレエンジニアによれば、第5ラップで転倒しそうになって、持ち直した時はそうだったそうです。
ミシュランタイヤ独特の…フロントのフィーリングが掴みにくいと言う問題のせいで転倒しそうになったのだろう…と。
こんな感じ。
「マルケスと言えば、ミシュランタイヤになってから、唯一、限界を超えた走りが出来るライダーですからね。
と言うのも、マルケスは転倒からの持ち直しができるわけだから。ハンドルが切れ込んだ時は特にそうでしょ。
他のライダーなら99%フィーリングを失ってしまうのに、マルケスは持ち堪えることができるんですよ。」

ただし、第21ラップで転倒してしまった時は、このミシュランタイヤの問題は関係ないのだとか。
ベルナルデッレエンジニアの見解は、こうです。
「マルケスが転倒する時と言うのは、だいたい、ハイサイド転倒なんですね。リアタイヤのグリップを失ってしまい、ハイサイドを起こす時なんですよ。
電制システムがなかった500cc時代は良く起きていたが、今は電制システムのおかげで90%は防げているんですがね。
あと、今回のマルケスは白線の上に乗ってしまっていたから、そこでもグリップを失ってしまったわけだし。あれでは電制システムでも防ぐことはできませんね。」

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実際、去年のセパン予選で転倒した時もハイサイドが原因だったんで…
今後、マルケス陣営は考慮に入れておいた方が良い事柄なんじゃないか…と言われてました。


ヤマハ

・クアルタラロー、マルケス不在でも大勝利と言える!

土曜予選でPPを獲得した時、ファビオ・クアルタラロー選手はこう言ってたんです。
「確かに僕は最高峰クラスで一番たくさんPPを獲得したフランス人ライダーだけど(7回)、でも、優勝はまだゼロだから…」

で、その翌日の日曜日には、みごと、その優勝も獲得したわけで!

まぁ、マルケス選手が転倒リタイヤしてなかったら、あの怒涛の追い上げで優勝してたに違いないって声は多数あるんですが…
でもね、ザマーニ記者はこんな風に讃えておりました。
クアルタラローの優勝は、大勝利だと思いますよ。確かに、もしマルケスが転倒していなかったら、マルケス優勝になっていたとは思うが…。
でも、大勝利だったと思う理由は2つあって…1つはクアルタラローが金曜FPで、かなり苦戦していたと言うことなんですよ。
本人が『モトGP昇格して以来、一番厳しい一日だった』と言っていたぐらいですからね。つまり今回、出だしは酷かったと言うわけです。
そのうえ、レース本番ではPPスタートだったにもかかわらず、これまたスタートに失敗してるんですよ。
すぐに3つ順位を落とし、ドゥカティ機の後ろで4位になってましたから。ヤマハ機で抜くには最難関のマシンでしょ。
だから、本来なら、そこで焦って苛ついてしまってもおかしくなかったんです。
土曜日はPPを獲得し、レースでは開幕戦で何が何でも優勝したいと言うプレッシャーも出ていたんですからね。
ところが、クアルタラローは落ち着いて走り続けたんですよ。自分のスピードに確固とした自信があったのでしょうね。
これは、ビッグライダーの素養があると言うことを証明したと思います。
速いライダーだと言うことは周知の事実だったが、今回はギリギリの精神状態を乗り越えることができると言う点を証明したわけで…
つまり、今回の優勝には大きな価値があるんですよ。

で、実際のところ、どんな精神状態だったのかと言うと…
クアルタラロー本人がこう言ってました。

【どんなレースだった?】
「スタートがあまり良くなくって、ドゥカティ2台(ミラー&バニャイア)の後ろに付いてしまったんですよ。あの2人は直線コースで飛行機みたいにすっ飛んで行くんですよねぇ(笑)。
こう言う形でレースを始めたくはなかったんですが、でも、焦りはしませんでした。自粛期間の時はずっと、『焦るな、焦るな』って自分に言い続けてたんで。
あと、昨日のFP4と比べて、トラックのコンディションがかなり変わってしまってたんですよ。モト2レースの後はグリップが落ちてしまうことは覚悟してたんですが、あんなに落ちてしまうとは思ってもいなくって。
リズム的には1分遅かったですよね。」

【今回のレースで、かなり学習できたのでは…】
「2020年版マシンでのレースは初めてで、去年のほど走り心地は良くなかったんですが、でも、色々と分かってきて…トラックコンディションをどう読み解いていくかとか、特に良く分かってきたんですよ。
昨日、PPを獲得し、スピードが出てるってことは分かってたけど、最後まで逃げ切れるとは思ってませんでした。
今も言った通り、今日は多くのことが分かってきて…タイヤについても分かってきたんですよね。」

【今日の優勝が分岐点になる?】
「人生、変わってしまうんでしょうかねぇ…今はただ集中しなければって気持ちだけです。短期間で、次から次へとレースがあるんですから。
マシンの乗り心地が良いかどうかが重要なことだし、良いベースを見つけられたんで、ここから先はどうなっていくもんでしょうかね。」

なんか、今回の優勝でさらに自信をつけて、どんどん強くなっていきそうな感じですね!


・ヴィニャーレス、2位ながら漂う敗北感…

一方、2位になったマーヴェリック・ヴィニャーレス選手はねぇ…
ベストリザルトだろうと言う意見もあるんですが…
今回の2位には、けっこうネガティブ感がつきまとってるんです。

理由は、マルケス選手の次に好ペースを出していたライダーだったにもかかわらず、またもや大チャンスを逃してしまい…
そのうえ、来年のチームメイト相手にいきなり負けてしまったから。
つまり、ヤマハファクトリーのNo.1ライダーの座が、すでに今から危ういものになってしまっていると言うことなんです。

まぁ、上の『レースの鍵』にもあるように、今回はフロントにソフトタイヤを選択してしまったことが大きく響いてしまったんですが…

一応、ヴィニャーレス本人はこう言ってました。
「今、そう言ってしまうのは簡単ですよね。もちろん、来週末はハードタイヤで作業をしてみるつもりだけど、とにかく、今回の2位には満足してるんで。
2回もハンドルが切れ込んで危ない状態になってたわけだから、『安全モード』に入ってリスクを負わないようにしてたんです。
でも、その後、ミラーを攻めて行き、また速い走りができるようになってたんだし。
ある意味、残念ではありますよ…マシンの乗り心地は本当に良かったんだから。
でも、今後、もっと伸ばしていけるって分かってますからね。」

あと、マルケス選手のおかげで改善点が見えてきたんだそうで…
こうも言ってました。
マルクに抜かれて、後ろに付いた時、けっこう色々なことが分かって…次戦に向けてどこを改善すべきかが分かったんですよ。
とにかく、どこのエリアに手を入れたら良いかが明確になったんです。」

今週末のヘレス戦、乞うご期待ってとこですね!


・モルビデッリ「レース中にエアーバッグが膨らんで…」

あと、ヤマハ勢はロッシ愛弟子ことフランコ・モルビデッリ選手も、5位でゴールして好調でした。

レース序盤はスピードが出ていなかったため、それが足を引っ張ってしまい…
また、終盤も第6コーナーでポル・エスパルガロにオーバーテイクをかけようとして接触しそうになり、何秒かロスしてしまったんですが…
それがなければ表彰台争いができていただろうと言われております。

ちなみに、その接触しそうになった時はモルビデッリ選手のミスだったそうで、ご本人もこう言って認めてました。
「表彰台に手が届きそうだったものだから、リスクを負いすぎてしまいました。それまで上手く追い上げて来てたものだから、ちょっと歯止めが効かなくなってしまって。」

で、実は、その接触しそうになった時の衝撃で、エアーバッグが膨らんでしまい、6~7秒ぐらい集中力が途切れて、きちんと操縦できなくなってしまったんだとか。
でも、その後、自然にしぼんでくれたんで、またプッシュして行けたんだそうです。

あとね、ヤマハ勢ではモルビデッリ選手だけ、例のホールショットデバイス(スタート時、ウィリーを抑える装置)を使わせてもらってないんですよ。
ヤマハの方では急いで用意してるんですが、いつになるかは未定だそうです。


・ロッシ「ヤマハ3選手のデータは役に立たず…」

こうしてヤマハ勢が好調だと言うのに、あまりの遅さに懸念され始めているのが…ヴァレンティーノ・ロッシ選手であります(涙)。
昨シーズンもすでに苦戦はしていたけど、今回はさらに苦労していて、ここ最近の最低レースだったと言っても良いだろう…って。

怒涛の追い上げのマルケス選手にも、あっさり抜かれてしまい…
まぁ、それについてはロッシ選手もこう言ってましたが…
「僕は本当に遅かったんでね。苦戦してたんで、あっさり抜かれてしまいましたよ。
(マルケスは)僕より好ペースで走っていたから、邪魔立てしてる場合じゃないですよね。」

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とにかく、他のヤマハ3選手が好調だったのに、ロッシ選手だけが一度もレースで上位にあがって来れなかったってのが心配なんですよねぇ。
午前セッションだと、もうちょっと調子が良かったものの、それでも1周タイムだけだったし…
戦闘力そのものが上がったことは1回もなかったんです。

で、原因は相変わらずタイヤを上手く機能させられないことなんですが…
他のヤマハ3選手が上手くやっているわけだから…
「ロッシにとって心配なレースだった…」なんて声が出ているわけなんですよ。

しかも、現在のロッシ選手には他3選手のデータも役に立たないそうで…
ロッシ本人がこう言ってました。
「常に興味深いものだし、見ることは可能なんですが、ただ、今、役に立つのは彼らのデータではないんですよ。
操縦の仕方で言えば、僕はけっこうモルビデッリに似てるけど、ただ、僕の方が10センチ高くて体重もあるから。
当初、モルビデッリもちょっと苦戦していて、その後、上手く走れるようになったんですが…でも、またいくつか問題を抱えるようになってますよね。今回は表彰台にだって上がれそうだったのに…。
とにかく、あの3人の方がタイヤを上手く扱えるんですよ。タイヤの作動領域に関して、彼らに合った状態を長く維持することができてるんです。でも、なぜなのかが分からないんですよね。
それに今日は暑かったから、タイヤにとってもライダーにとっても特に厳しくて。」

あっ、でもね…
ロッシ選手、すっかり落ち込んで暗い雰囲気になってるわけじゃないんですよ。
最後にこう言ってましたから。
来週は絶対に再挑戦してみますよ。来週、すぐに同じトラックでのレースなんて初めてで…不思議な感じさえしますよね。
でも、おかげで今週末のデータを利用できるし、何が駄目で好結果を出せないのか突き止められるでしょう。

ろっしふみ、がんばって!


・ロッシの問題点はどこなのか?

と言うわけで…
相変わらずタイヤを上手く機能させられないロッシ選手なんですが…
実は、7月18日(土)の午前、ミシュランのピエロ・タラマッソ氏(二輪部門モータースポーツマネージャー)がこんな分析をしましてね…

「ロッシが抱えている問題はいまや周知のことだし、ずいぶん前からの話ですからね。
ロッシのライディングスタイルと言うのは特殊で、バンクの際、他の選手に比べてマシンからあまり身体を突き出さないんですよ。
そのため、タイヤの外側にストレスがかかり、タイヤの温度が上がってしまうんです。
まぁ、必ず解決できるとは思ってますけどね。」

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で、これに対する、ロッシ選手の反論がこちら。
「タラマッソのインタビュー映像を観たけれど、賛同はできませんね。
コーナーを走っている僕の画像を見れば、けっこう身体を突き出しているでしょ。この数年間、その辺の訓練はかなりしてきたから。
むしろブリジストン時代の方が、皆、もっと突き出してましたよ。ところが、ミシュランに代わってから、あまり突き出せなくなったぐらいでね。
問題点がそこだとは思ってません。例えば、ドヴィツィオーゾなんかは身体をあまり突き出さず、きちんとシートの上に乗ってるけれどタイヤの損耗は酷くないでしょ。

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では、いったい何が原因で苦労しているのか?
ロッシご本人の分析はこんな感じ。
「これまでのキャリアで僕はずっと固めタイヤが好みだったんですが、ミシュランはカーカスもコンパウンドも柔らかいんですよ。
あと、僕の体格も関係しているんでしょうね。痩せているとは言え、他のライダーの平均よりも大柄だから。身長があれば、どうしても体重も重くなってしまうでしょ。
だから、その点に関してはタラマッソの意見に賛成しますよ…つまり、問題があるのはミシュランタイヤではなく、僕の方だと言うことです。
他のライダーは速いんですからね。」

んで、第三者は何と言ってるかと言えば…
ベルナルデッレエンジニアは、タラマッソ氏の分析には触れていないものの…
「ロッシがパフォーマンスの不調を言い訳するために色々と言っているとは思いませんね」と断言しつつ…

ロッシ選手の現状がどんなものなのかと言えば…
「現在、自身のパフォーマンスについて、そして、再構築中の技術パッケージについて、どの程度のものなのかを理解しようとしている最中でしょうね。
もう1年も前から技術パッケージの再構築を行っているじゃないですか。昨シーズン末にはチーフメカニックも代えてね。
しかも、来年はチームの顔ぶれが大幅に変わることになるわけでしょう。だから、今は早々に優勝ができるようになるなんてことは考えていないでしょ。
そして来年については、最終的にどんなチームになるかに依るでしょうね。」

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そのうえ、ベルナルデッレエンジニア、こうも言ってるんですね。
「技術的に重要なのは常に、シーズンが進むにつれてライダーとチーフメカニックとチームの息が合ってくるかどうかなんですよ。
進むにつれて息を合わせていかなければならないし、特に今年のようなシーズンでは重要なんです。
そう言う意味では、ここ2年間のロッシはチーム改革をしているわけだから、少し不利でしょうね。

では、皆様、もう一回…
ろっしふみ、がんばって!


ドゥカティ

・ドヴィツィオーゾ、棚ぼたではなく重要な表彰台

当初はグリッド8位スタートだったのが、クラッチロー選手の棄権により7位スタートとなったアンドレア・ドヴィツィオーゾ選手
そのうえ、絶好調マシンに乗っていたスズキのリンス選手も棄権だったし、王者マルケス選手が転倒リタイヤになったこともあり…
ドヴィツィオーゾ選手の3位獲得は、「棚ぼたなんじゃない」なんて声もあるんですが…

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いやいや…
ザマーニ記者「非常に重要な表彰台だった」と主張しております。

と言うのも、ヤマハのクアルタラローvsヴィニャーレス勝負と同じで…
今回の3位獲得により、ドヴィツィオーゾvsミラー選手の力関係がはっきりしてくるわけですから。
つまり、ドヴィ選手は(おそらく)来年のチームメイトに勝ったと言うことになるわけですね。

ちなみに、ドヴィ選手がミラー選手のことをどう思っているかと言えば…
こう思ってます。
「昨シーズンの終盤あたりから、ミラーをペトルッチの後任にしようと言う話が出ていました。
昨シーズン後半のリザルトから、ドゥカティがそう決めていたんです。今年のリザルトは、もう関係なかったんですよ。
ドゥカティの方でも決めなければならなかったわけで…まぁ、普通のことでしょうね。ただ、今年、ペトルッチにチャンスを与えなかったと言うのはネガティブでしたけどね。
ミラーは才能あるライダーで、それに疑いの余地はないでしょう。ここ数年、かなり伸びてきてますしね。
ただ、タイトル争いができるところまで伸びていけるかどうかは、今後、様子を見ていかなければならないでしょうね。

う~ん…
なんか、実力を認めながらも、最後にびしっと釘を刺したって感じですかね。

まぁ、とにかく、今回のドヴィ選手の評判はかなり良いんですよ。
6月末に鎖骨に微小骨折を負って手術をし…
FP3では苦戦して、ぎりぎりで予選2へダイレクト進出し、その予選2でも1周タイムを出すのに苦労したのに…
レース本番では異常な高温の中を耐え抜き、ドゥカティ勢トップでゴールしたわけだから…
「アスリートとしていかにきちんと仕上がっているかを証明した」と、高く評価されてるんです。

ベルナルデッレエンジニアなんてべた褒めでして…
ここまで言ってましたから。
「ドヴィは、どこのチームでも欲しがりそうなライダーですよね。
マルケスとは好対照で、レース運びを上手くコントロールし、まるで優秀なマラソン選手のようでしたよ。
凡ミスを最小限に抑えて、目標を達成したわけでしょ。
今年のように過密スケジュールの特殊なシーズンの序盤戦は、ドヴィのような戦術が正しいでしょうね。


・ミラー、腕上がりではないのか?

あっ、でも、ジャック・ミラー選手の評価も高かったんですよ。
予選での1周タイムの腕前は前から良かったけど、今回はレースでも具体的な結果を出せるところを証明していたって。
昨シーズン終盤ぐらいから、そう言う兆候を見せつつあったけど、今シーズンもそのままの勢いで進んでいるとも。

しかも、マルケス怒涛の追い上げで抜かれた選手は全員、そのまま抜かれっぱなしだったのに…
唯一、ミラー選手だけが、なんとか抜きかえせないかと頑張り、なかなか粘り強いところを見せていたって。

あと、ミラー選手がレース後、「ラスト12周ではもう手の感覚がなくなってしまって…」って言ってたじゃないですか。
(ブログ関連記事:ミラー『終盤は手の感覚がなくなってしまって…』2020スペインGP https://itatwagp.com/2020/07/21/motogp-7737/

これね、もしかして腕上がりじゃないかって声もあがってるんですが…
ミラー本人はこう説明してました。
「マシンの乗り心地は最高だったし、タイヤも前後共に好調で、まったく問題なかったんですよ。
ただ、グリップを上手く回すことができず、ヴィニャーレスに喰い付いて行けなかったのが残念でねぇ。
チームと一緒にピットボックスで話しながら、なんでそうなったのかを考えたんだけど…ハンドルバーの位置が関係してるのかもって思ってね。
あと、ここのトラックだと常に身体をマシンから突き出してないとならないでしょ。
コーナーを走ってる時はグリップの端を握って、マシンからぶら下がってるような状態なんですよ。で、グリップのその辺りにはブレーキレバーのプロテクターなんかの硬いプラスチックだか合金だかがあって、手の付け根辺りが押されて痛くなってくるんですよねぇ。

まぁ、こちらも今週末のヘレス戦で、もっと何か分かってくるでしょうね。

今回は、これで完了です。
今日から同じヘレスでアンダルシアGPが始まりますんで…
まずはブログの方で各記事をお楽しみ下さい。
その後、今回同様、アンダルシアGPまとめをお届けします!

おっと、そして…
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【参考資料】
『Gpone』 https://bit.ly/32LPmF9, https://bit.ly/3fSvxzP, https://bit.ly/3hlbHNU, https://bit.ly/2ZQg0L2, https://bit.ly/2OOfpDt, https://bit.ly/3jvowXR, https://bit.ly/3fZECHa, https://bit.ly/2CEN67Z,
『Moto.it』 https://bit.ly/39nSZSM, https://bit.ly/3juCpW9, https://bit.ly/2CvvSKn, https://bit.ly/2OPnYOg, https://bit.ly/2E5r3HS,
『Corse di moto』 https://bit.ly/2BnY6WN,
『SKY.it』 https://bit.ly/2CEgQlq,

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【発行元】
『 ITATWAGP | イタたわGP 』

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