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私はどう老いるか

年明け早々、磁気不良で使えなくなった銀行のキャッシュカードを復活させるために銀行に行った。ついでにほったらかしていた住所変更もする。

想像していたよりは混んでなかったが、それでも20分くらい待って案内されたブースには自分の子供でもおかしくないくらいの若いお姉さんが待っていた。
お姉さんはマスクをしており、さらにアクリル板の衝立があり、さらに向かい合わせではなく、斜めの位置関係での会話となる。
これが想像以上にコミュニケーションが取りづらい。
アクリル板+マスクで声が聞き取りづらく、顔が見えないから「相手が発話する」ということが事前予測できなくて会話のはじめに注意が向けられないのである。

一番初めに何か言われたのだが、ちょっとなんだかわからなくて黙っていたら、お姉さんは少し声を張って「個人事業の方の事業の口座ですね!?」と言ってくれたので「はい」と答えた。

「はい」と答えた自分の声が「やや憮然としている」といった口調なのに少し驚く。ん?なんだ?この反応は?

その後も「印章がかぶらないように押してくれ」と言われた訂正印をちょっとかぶって押してしまったり、さらにそれを黙って返したり、お姉さんが困った様子で「印章がかぶると受け付けられないから、今度はこちらで押してもいいか」と言っていっぱい訂正印を押したりするのを、ぼーっと眺めながら、「なんだろう、この感覚は?」と考えていた。

銀行の若いお姉さんは、かつて自分が若かった時のようなキレがあり、2歩先くらいの発言をする。
そして私はそれにあきらかに付いていけずにトンチンカンな答えをしたり、しばらく返答ができなかったり、言われたことが出来なかったりしているのだが、それを私は別に「やだ!恥ずかしい!」とも思わず、「そんな言い方じゃ分からないでしょ!」とも思わず、ただぼーっと「あらあ・・・付いていけないわあ・・」と思っている。しかしノロノロと返す「はい」という短い返事には間違いなく「憮然」という言葉がぴったりの、少し相手を非難するような調子が混じっているのである。

それは、私が「年寄り」と呼んでいた人たちの態度であった。
何か他人事のような態度、スピード感のない会話、わかっているのかわかっていないのかさえ判明しない答え。ダンマリ。そのくせうっすらと漂う不快感。

アイヤー!!
ついに私もここへ来たよ!!
まさか私がこの世界に来るとは思ってなかったよ〜〜!!スピード感が取り柄だったのに!!

私も老いたんだなあと思う。
まあ仕方ないなあと、また他人事のようにノロノロと思う。

しかし老いたことは仕方ないとしても、この「不快感」はいただけない。
これは自分にも他人にもよろしくない。

それでこの「不快感」はどこから来るものなのか?と考えれば、「自分がうまく受け答えできてない苛立ち」であろうと簡単に予想がつく。
だったらそれを受け入れて「うまく受け答えできない自分を愛する」という方向で苛立ちを解消すれば、不快感はなくなるのだろうか?と考え、脳内でシュミレーションしてみた。

そしたら、私が若いころ「憎んでいた」と言っても過言ではないような「あっけらかんとしたおばちゃん」が爆誕した。
「あらあ!ごめんなさいね、できないわあ」と言ってケロッとしているおばちゃん。ごめんなさいっていうなら少しは済まなそうな顔をしやがれ!!と思っていたおばちゃんである。

あれえ!?困ったな!
もしかしてこの世界には「あっけらかんとしたおばちゃん」か「不愉快が滲み出てしまっているおばちゃん」の二択しかないのかな?!

いやいや、きっと他の「おばちゃん像」があるに違いない。
私はあきらめない。


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