わたしのレシピを求めて

日本中が2人の結婚を驚きを持って耳にした夜に、台湾カステラを焼いた。ショックを受けたから甘いものを食べて紛らわそうとした、わけではない。

レシピを調べるとどれも種類は異なれど何がしかの油と薄力粉を混ぜるところから始まる。カステラという名ではあるが油を相応に使う点では組成はシフォンケーキに近い。食感も確かに近い。

お菓子作りは実験そのものだ。ひとつ加えると見た目と性状は瞬く間に変化して、何が含まれているか一見してもわからなくなる。

焼きたての時点ではおおむね考えていたものができたが、みるみる縮んでいった。その体積は熱せられた空気が主だったし、メレンゲがもたらすふわふわは、自重に耐えられなかった。検索すればいくつもしぼむ理由がヒットした。

言ってみれば、測って混ぜて焼くだけの、ただそれだけの行為なのに、多くの変数があって、式に当てはめて計算してみるとさまざまな結果がでてくる。試行錯誤の果てに美味しさがある。誰かのレシピは誰かの試行錯誤のひとつの解ではあるけれども、レシピにはオーブンの種類は書いてないし、作った日の温度も湿度も書いてない。ましてや舌は同じではない。

日々の生活も同じなのだ。誰かの示すやり方でそれをなぞって満足してよいのだろうか。望んでいる、似たような方向は辿れるかもしれない。でも結果は同じではない。2人が幸せな門出を迎えたように、わたしはわたしのレシピを書き換え続けて、わたしの解を求めよう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?