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ボクの根底にあるもの


以前、質問箱という匿名で質問ができるサイトにて、ボクにとある質問が飛んできました。これが中々深い内容で、答えていくうちにボクの考えを今一度まとめ直すキッカケにもなりました。

以下、その質問の内容とそれに対するボクの回答をそのまんま載せます(質問者の方の許可は頂いております)。


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Q.


A.


質問の「最善」というのが何に対してなのかわからなかったため、一応「水族館の最善」とそこから派生し水族館の枠を超えた自分の考えをお答えします。

質問の回答、長くなります!(特に前置きや前提のお話が)あと、あくまで「僕一個人の意見」と捉えていただけるとありがたいです。Twitterやスペース等では断片的にしか述べていないので、ここでしっかり僕の考えをお答えいたします。

まず僕の考えの大前提として、水族館で飼育展示しているのは「野生動物」と考えます。

野生生物は、愛玩動物(ペット)とは違います。質問にあった「猫」はいわゆる「ペット」であり「人が作った生き物」です。本来野生にはいません。それが捨てられて、野良猫として外来種のように環境を破壊したりするのが問題なのです(野良猫被害は奄美大島や海鳥ウミガラス等で調べていただければ出ます)。また飼い猫でも外で自由に歩けるようにしていると、逃げ出して同じように環境に害を及ぼす、または車に轢かれて悲惨な最期を迎えてしまうなどがあります。このような背景を鑑みて、猫含むペットはきちんと「室内飼育」をし、人間の完全な「管理下」で飼育する必要があると考えます。

さて、それに対して「野生生物」は、本来人の手が全く加わっていない生き物たちです。人との関わりが強い野生生物もいますが、基本的には適切な距離をとるべき生き物たちです。それを元の生息地から無理矢理連れてきて、水族館で展示しているのです。生き物たちからすれば、迷惑以外の何ものでもありませんし、また多くの生き物は未だに「消費物」として扱われていたり(タッチプールとか)、過度な擬人化をされて「野生生物」として展示していないものもあります。そのため、動物愛護の方々が水族館を嫌う理由は決して全てが間違いではないなとも思います。

そのような中でも水族館が存在する意義とは何なのか。展示をしていく意味があるのか。それを考え続けなければならないのだと僕は考えます。

だからこそ、その生き物たちの生態や、そこから派生した更に先の情報まで、しっかり伝わるものにしなければならないのです。伝わらない展示は、無いのと同じです。近年流行りの映え展示も、逆に力を入れすぎて文字が多すぎる解説パネルも、どちらも情報が伝わっている展示とは言えません(お客さんの多くは長々した解説パネルは読まない)。

そして、なるべく展示物に多くの情報を取り入れるために必要なのが「フィールドに出て、本物を見る」ことと「それをどうやって展示に落とし込むか、伝わるようなものにするかを考えること」です。

水族館や動物園では、飼育環境に慣れすぎたり、過度に擬人化することによって、本来の野生の姿とは全く異なる姿形や行動をしてしまう生き物たちが後を絶えません。それでは「野生生物」ではなく「ペット」になってしまいます。野生生物を閉じ込めているのに、伝わる情報がペット的な「かわいい」……くらいしかないのでは、先程述べた水族館が存在する意義にはなりません。それだけでいいならペットや観賞魚でも見てればいいのです。

野生生物としての情報をより多く伝えるため、彼らの「野生下での姿」や「周りの環境」等をしっかり知っておく必要があります。そのためにはフィールドワークが必要不可欠です。また、何度も何度も通うことで見えてくるものもあります。そして、そのようなフィールドでの経験、感動、「この生態を見せたい!」と思ったそのままを、展示に活かして伝えていきたいというのが、僕のやりたい本当の意味での「展示」です。

長くなりましたが、質問に1から答えていくとすると、

・みのりの最善
→野生生物たちの情報がより多く伝わるような展示を作り、それをキッカケに展示を見た人が生き物やその環境に能動的に興味を持つ、さらに言うとそこから派生して環境保全や生物多様性保全等に少しでも協力してくれると嬉しいなと思います。

・フィールドに出ることは水族館という形式ではダメなのか
→水族館にくる「お客さん」であれば、全然水族館で伝わる情報でいいと思います。上記したように、あわよくば本物のフィールドを知ってほしいとは思います(そこまでお客さんを持っていけるかは、僕ら業界人の仕事です)。現役水族館飼育員、またはそれを目指している人であれば、フィールドワークは必須と考えます。どれだけ水族館で展示を見たりお勉強をしたとしても、実際の場所に行き、調査しないと分からないことの方が多くあります。そこの気温は?水温は?水質は?周りの植物の種類は?密度は?地面は砂か?礫か?泥か?動物の種類は?水中の風景は?水中の色は?光の差し込み具合、角度は?時間帯や季節による環境変化は?さらにそれをどう展示にするか?さらにさらにどうすればそれがお客さんに伝わるか?………水族館の展示を見ただけでは分からないと思います。

・猫は家で飼えと言っているのに、水生動物を「閉じ込めている」と表現するのはどういうことなのか?
→「猫」は上記の理由により、「ペット」であり、環境のためにも安全飼育のためにも室内飼育をすべきと考えます。水生動物は「野生生物」であるため、本来なら人がペットのように飼育するような生き物ではない(だから閉じ込めていると表現した)と考えます。しかし、だからといって「閉じ込めてはいけない」とも思いません。大切なのは、閉じ込めてでも水族館で展示を行う理由や意味をしっかり構築していくこと、です。「"野生生物"を閉じ込めて展示する意味、なくね?ペットでよくね?いやなんなら、生き物いらなくね?」と言われてしまってはオシマイです。そうならないために、最初の質問の最善の話や、展示作成に必要なフィールドワークの話に繋がっていくのです。

めちゃくちゃ長くなりましたすみません汗 まだまだ僕自身若造で未熟なので、矛盾点や粗があるかもしれません。その際は遠慮なくまた質問、意見していただけるとありがたく思います。



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