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永遠でないからこそ尊いーシェムリアップの遺跡を訪ねて @caelum_555

ラブソル旅部、ゆきえです。

今月行ったばかりのカンボジアですが、すでに次はいつ行こうかと思案中だったりします。

カンボジアは、クメール料理はもちろんのこと、フランス植民地時代があった影響でパンが美味しく、ラブソルメンバーが大好きなマッサージも豊富。移動はGrabという配車アプリを使えば、ぼったくりにあう心配もなく、気軽にトゥクトゥクに乗れてしまいます。

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クオリティは高いのに物価は安く、そして何よりもカンボジアの人々の優しさが最高。過ごせば過ごすほど好きになる国、それがカンボジアなんです。


カンボジアを語る上で、アンコール・ワット等の遺跡群は外せません。全部の遺跡をみるには一体どれくらいの日数が必要なのだろうと思ってしまうくらい多いです。

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今回は、シェムリアップに到着後、ラブソルメンバーが仕事する中、私は一人アンコール国立博物館へ向かいました。今年の5月にプノンペンに訪れた際も、プノンペンにある国立博物館へ行きましたが、この時は暑かったこともあり、中庭でのんびり休憩をしつつ、解説にボリュームのある音声ガイドを聞きながら気ままに観ていました。

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それとは対照的に、アンコール国立博物館は、私たちがイメージする博物館っぽくテーマによって部屋が分かれており、理解しやすい展示でした。遺跡見学の合間に足を運ぶとより理解が深まっていいと思います。


実際カンボジアに行ったことがなかった頃にカンボジアに持っていたイメージは、アンコール・ワットやアンコール・トムといった遺跡、次にポルポト、そして学校建設などのボランティアといった「点」ばかり。それもあってか積極的に何度も訪れたい国では正直なかったのですが、歴史を紐解くとわかるのですが、インドと中国の中継貿易でも栄えた、土地も肥沃で農業に向いた豊かな地域だったのです。それゆえに、東南アジアで最大級の領土のこともありました。


前回の沖縄旅で建国神話について触れましたが、クメール文明にもやはり建国神話はあります。建国神話には太陽族と月族の二種類あり、太陽族がカンボジアの土着民族で、月族がインドなど海から影響を受けた民族とも言われています。


アンコール朝以前のカンボジア地域での国名として、世界史をかじったことがある方なら、扶南や真臘という名を耳にしたことがあるのではないでしょうか。扶南はメコン川デルタ地帯にあった国。中国は三国志時代の頃で、呉の孫権が扶南に使節を送ったりもしています。ローマ帝国の貨幣なども見つかっているので、西方との貿易も盛んだったことが伺えます。最近の研究では、扶南はクメール人の建国ではないかもしれないという説もあるそうです。宗教も土着の精霊信仰にヒンズー教と上座部仏教をミックスさせていたとのこと。扶南の最盛期は4世紀頃で、6世紀末には衰退し、代わるように真臘が誕生します。

真臘はクメール人の国で、インドのサンスクリット語を起源とする古クメール語が刻まれた現存する最古の碑文は、7世紀初めのものだそうです。シェムリアップの国立博物館にも石碑やサンスクリット語とクメール語の比較などが展示されていたコーナーがありました。真臘は政治的な中央集権が行われていなかったこともあり、8世紀の初めに二つに分裂してしまいます。この混乱を収めたのがジャヤヴァルマン2世で、アンコール朝の初めの都が作られました。

アンコール朝はチャム族から侵入され一時はチャンパ王国の支配下に置かれたりと、時には弱体化することもありながらも、強力な国王の出現により国力を回復しつつ長期間続きました。アンコール・トムを新都城として建造したジャヤヴァルマン7世は、仏教徒でありながらも長年アンコール朝で重んじられたヒンズー教の尊重し、それらを取り入れつつ寺院を建立しました。ただ、大きい寺院建造や度重なる遠征で、ジャヤヴァルマン7世の死によって急速に国力が弱まりました。それもあってか、それ以降は目立った建造物がありませんが、アンコール朝は活気を保ちつつ続きました。シャムのアユタヤからの攻撃により630年続いたアンコールでの王都は放棄されたのでした。長く続いたことで知られる江戸時代が265年なので、アンコール朝はその倍以上の期間続いたことになります。

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アンコール・ワットやアンコール・トムなどの遺跡群を見ると、高度な技術力があったことは疑いようもありません。かつての姿を想像するしかない現実に、いつまでも続くかのような繁栄も、決して永遠ではないのだと知らされます。

当たり前のようにずっと続くように感じている「今」も決してそんなことはなく、いつかは過去の文明がそうであったように歴史の中に埋もれていくことは避けられないと思います。いつかは歴史に埋もれてしまうからこそ、「今」という時の尊さを感じずにはいられません。

旅っていいですよね。普段の生活の中では見落としがちなことを気づかせてくれます。だから、旅はやめられないです。

気がつけば、今年もあと僅か。そろそろ、来年の計画も立てなきゃ。


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LA BOUSSOLE 旅部
ゆきえ  Twitter

撮影:柴山由香、ゆきえ

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