t子: 『隙間』、『隙間』っていわはるんよね。
  でな、探すんやけど見つからんのよ。
  ずっとそんな感じで…

y子: へー、それでtは、どうするん?

t子: うん、いつもなんとかして見えない隙間塞ごう        
  とするんやけどな…心許ないねん。

y子: そやろな。
  でも、本当は塞ぎたくないんちゃうの、
  その隙間。だってそれ塞ぐって事は、出場所も  
  塞ぐってことちゃうん。

t子 : そうかなぁ。

思春期の初め頃、幾夜か同じ夢をみつづけたことがある。遠足か屋外学習のコースの一部に、浅い川に潜って岩と岩の狭い間をくぐって、向こう側に行かなくてはならない場所がある。そして、それが思いのほか長く苦しくて…
そんな夢が幾夜か続いた。
夢の中のそのいつ終わるかわからない一瞬は、ただ苦しく不安だった。

y子 :産道記憶ちゃうか。

思い出しながら、またウトウト眠りの縁で寝返りをうつと、カチッとドアが気兼ねして開き、夫が朝のウォーキングにドアの隙間から滑り出していく。

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