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京都MoMAK ピピロッティ・リスト回顧展はブリーフから母胎体験へ。

風光明媚な京都の東山にある「京都国立近代美術館(MoMAK)」で「ピピロッティ・リスト展」を覗いてきた。

今回の回顧展は2020年に予定されていたが、コロナ感染症拡大により中止、今期はなんとか開催に至ったものの、緊急事態宣言とその延長が重なり、一時、MoMAKがクローズされる中、開かれている。

京都地下鉄東西線の東山駅から徒歩5分程度、平安神宮の大鳥居をくぐった左手にMoMAKがある。
チケット窓口には既に10名程度が並んでいた。
どうやら私と同じように開館を待ち望んだ人がいるらしい。
見上げるとロープで吊るされたブリーフが数枚・・・ほぉ、これは期待できそうな序章だわ。

入り口を入ると1階には、今回の回顧展のフライヤーにもあった「べろべろんちょ」顔のデジタルアートが宣伝媒体のように放映されており、二階にも同じくデジタルアートの展示。
3階からは本展示のようで、チケットもぎりスタッフが常駐していた。

それにしても、大人が本気で遊ぶ様は・・・凄まじいな。

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三階へ上がると靴を脱ぐように指示を受ける。
なんだろう、ワクワクするじゃないか。
持参したビニール袋に靴を入れ、暗幕をくぐると、そこには黒い世界が広がっていた。

真っ暗な部屋の壁や天井にデジタルアート群が映し出される。水音がサウンド効果として流れている。視覚と聴覚の影響を受けて不思議な感覚に陥る。

「自分が母親のお腹の中にいた頃は、こんな気分だったのかな」

くるくる変わる映像に、なんだかとても安らぐ。

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展示物の多くはピピロッティ・リストが名を馳せる事となったデジタルアートと音楽が融合した作品だった。
目の前の大きなスクリーンで描かれるシュールで脈絡の無い物語と優しい音色の音に身体全体が包まれているような気分になる。

中には「強い性的表現を含む作品があります。そうしたものに不快感を感じる方は閲覧をご遠慮ください」という注意書きがある作品もある。

何かと思えば、出産シーンとアーティストの男友達らしきが全裸でブラブラと揺らしながら、ビデオカメラに向かって走ってくる、という内容だった。
注意書きがあるくらいだから、これに不快感を感じる人もいるんだろうな。

ベッドが何台も並んでいて、それに寝転びながら天井を見上げると・・・まるで、水面下から水面を、そして、水面を通して世界を見ているような感覚になる作品もあった。

なんだろう。一つ一つの画像は過激な(?)モノもあるのだけれど、全体を通して眺めると、この世界に守られているような気がして安心する。

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デジタルアートを「見る」よりむしろ、「体感」する構成だった。
それほど多くは無い作品を眺めながら、結局のところ、3時間半ほど会場に居座ってしまった。

その日の心境もあったのかもしれなが、繰り広げられる世界を見ていると、自分のどこかが静かに揺さぶられていて、あぁ、私はこの世界の片隅で確かに生きているんだな、と思わされた。

そして、なぜか、疎遠になってしまったかもしれない「あの人」に連絡をしたくなった。


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