【読書覚書】台所太平記

夜寝るときのお供、youtubeの朗読サイトで知った本。
面白い話だなとうつらうつらしながら聞いていて翌日、
谷崎潤一郎の作品!?と驚き、早速図書館へ。
結論からいうと、谷崎潤一郎が嫌い、苦手な方にこそぜひ
読んでいただきたい。


2021年改版なので現代仮名遣い、読みやすいです。

晩年に週刊誌に掲載された、谷崎家歴代の女中さんの列伝。
山口晃さんのイラストが絶妙。
(被り物の理由は、いかついイメージを和らげるため、だとか)

細かいエピソードはやはり実際に読んで味わっていただきたい。

現代とは違って、女中さん(お手伝いさん)とは、
ひとつ屋根の下で生活するし、
和室だと現代の生活とは比較にならないほど、プライバシーも
なかっただろう。マイルドな記述だけど今と価値観も違う箇所
についての記述もある。(動物・同性愛など)

実際のところは推し量るすべもないが、読む限りは
主人側と女中さんとの関係は良好だったように思う。


この本を読み終わったあと、ふとどんな人だったのだろう?と思って
ググったらyoutubeでご本人の肉声が見つかった
ノイズが除去されていて、テクノロジー万歳!!
っていうかそのデータを持っていたのはどんな方なのだろう?
編集者かなにかとの座談会らしく、予想に反し温和な方という印象。

文字の上でのお手伝いさんと谷崎とのやりとりも
肉声を聞いたあとはより具体的に想像ができる。

私が一番良いなあと思った箇所は、谷崎側が女中さんたちに
時折しめす特別な行動である。

例えば、時間ができたときに、女中さんを呼んで文字のてならいをしたり、
お出かけする時に一緒に連れて行って時々美味しいものをごちそう
したりというエピソード。
谷崎の奥様も、婚礼を前に性に対する知識が乏しい女中さんには
そっと呼び寄せ春画を見せ『こういうことはね…』と教えるなど
は、相手が必要な場面で困らないよう、恥をかかないようにという心遣い
にほかならないだろう。

他人との距離感を保つことや、空気を読みすぎることに慣れすぎた
私にはとても新鮮であった。

個人的には『富士日記』と双璧な面白さを味わった。
読んで良かった!





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