Sの思い出と讃美歌

私はキリスト教系の中高一貫校に通っていた。
母の偏った教育のせいで、入学当初から馴染めなかった。
部活には一応入ったけど、結局ドロップアウト。
見た目もぱっとしなくて、その頃からビジュアル系にハマり出した。
部活は体育系だったのに、ストレスで過食して太っていたので部活をやめたら痩せた。
そうしたら、クラスのSという私とはかけ離れた人気のあるまさに「美人」という言葉がぴったりな子が真剣に「あなたはとてもかわいいよ」といってくれた。
人生で他人に初めて「かわいい」と言って貰った瞬間だった。
嬉しくて、家に帰ってから泣いた。それくらい嬉しかった。
それからしばらくして、Sは亡くなった。
原因は未だに知らない。
Sの葬儀は洗礼を受けていたのでキリスト教の葬儀だった。
教会で棺に入っていたSは、結婚する時に着るはずだったウエディングドレスを着て、今にも起きそうな綺麗な顔をしていた。百合の花を添えたけれど、百合の花が増えるたび、本当に綺麗で、亡くなった実感が全く無かった。
だから、泣けなくて、Sの好きだった讃美歌を歌ってお別れをした。
あんなに美人で優しかったSの命があんなに短くて、なんでこんなわたしはまだ生きているのだろうと思う。
叶うなら、Sに私の命を差し出したかった。
神様は耐えられない試練を与えないという。
私の歌う讃美歌は、今は助けて下さいという意味しか込められない。
神様、もし間に合うなら、私の命を私の大切な人に分け与えて下さい。
私はもうこれ以上大切な人を失っていくのが辛いです。

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