路地裏

「大丈夫ですか」
そう聞こえた、柔らかくはられた、細い音は、
駅前で聞いた音と同じだった。

身の元を示す水色、
匿名の黒色、
朧げにしか違いは分からなくても同じ楽器だった。

出荷前に板が割れた。ならなくなった。
「役割を果たし得ない」
そんなコンプレックスをいちいち逆撫でしていく音だ。
鉄の音は鳴らない。
なぜか、いつも、逆撫でしていく木板の振動だ。

ヘッドライトが追いかけてくる。
きっと、右にいってくれるだろう。
そう思っていたのに、わざわざ左についてきた。
ライトに追われながら駆け降りる。
ドンキの黄色い袋が重みに負ける。

万事が、万事、私の神経を逆撫でしていく。
明日はどうやってもやってくる。
首をくくりたくともラグドールが見張っている。
ふわふわのラグドールがしぼんでしまう。
そんな姿は見たくない。

胃に穴を開けながらストゼロドライを煽ろう。
意識を失ってしまえば、
しばらくは、きっと、どうでもよくなるから。

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