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銭湯

今夜は諸事情により、銭湯で入浴。

 出かけた銭湯は、新南陽駅近くの「梅の湯」さん。鉄板にいく筋か切れ目をいれたような、ロッカーの鍵。ロッカーの上に並んだ、常連さんの湯おけやシャンプー、石鹸。湯船の横にある洗い場には、手で下へレバーを下げるとお湯と水がそれぞれ出る蛇口。意外と深い湯船。

 けれど、湯船の横には体がビリビリしびれる電気風呂とリラックス効果のありそうな泡風呂。

 昔と今が同居したような銭湯で、思い出すのは40年以上前の記憶。

 母の温かい手を握って、夜の街角を寒さに震えながら歩いた銭湯への道。神田川じゃないが、歩くたびに、石鹸が洗面器の中でカタカタ震えてた。

 姉の娘を預かっていた時は、私がおんぶ紐でその子(姪)を背負って、銭湯へ行った。

 父は余り銭湯には来なかったが、時々一緒に来た時、3人で家族風呂に入ったことも、微かにおぼえてる。父にしてみれば、ささやかな贅沢を私に味わわせてくれたつもりだったのかもしれない。もちろん、3人での入浴は私にとっては特別感のあるひとときだった。

 懐かしい風景には、結局いつも母がいた。

 母の温もりと愛情たっぷりの微笑みが、いつもあった。

 満月の下の銭湯の看板が、懐かしそうに、こっちを見ていた。

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