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230513 旧赤星鉄馬邸

230513_吉祥寺

旧赤星鉄馬邸/アントニン・レーモンド/

期間限定で公開されていたため、訪問。

南側に大きな庭を持つ、中廊下型の邸宅。
南側の居室や居間は庭から光を大きく取り入れ、北の水回りや倉庫、書斎は中庭を配する事で採光を確保する。

内外壁は大壁でつくられ、床、天井、開口には見切りが入る。
巾木見付は50ミリ、額縁と廻縁は25ミリ程度。
床材も基本的にフローリング、クッションタイル、カーペット敷のいずれか。
開口はアルミサッシで、供給が安定した後の、在来構法の一般住宅や団地の住戸のような「標準的な」印象をまとう。

しかし、その「標準性」が様々なところで解かれている。
庭に対して大きく開口を取るため、壁から独立した円柱。
サッシ、格子戸、網戸、カーテンが重なり、外部との関係を調整可能な開口まわり。
民家の小上がりの廊下と諸室の床レベルの設定。
廻縁と共通していた枠が他室では枠無しに変化する造作家具。

そのような日本の住宅の「標準性」が、躯体形状と造作家具の両側から解かれている。
さらに大きな庭によって、民家的な形式が付与されている。

当時の日本の一般住宅を精緻に捉え、教会という西洋的な用途との複合に合わせて現れ方をチューニングし、日本の民家の形式と外部との関係性を与えている。

日本の家の在り方を紐解いて、理知的に組み直していくような操作。
後からじわじわとその不思議さが反芻される心地良い建築。
とても良かった。

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