落合博満講演会(2019/9/21)

3連休初日。横浜市関内に出向いて落合博満の講演会を聴講することに。

昔から、落合が好きだった。

・打者そして監督として圧倒的な成績を残している点。
・ファンやマスコミに媚びることなく、時には失礼だと批判されても自身の姿を崩さない点。泰然自若としている様。
・他の野球解説者/評論家のように「ここは気合で…」「いい流れですよ!」とテキトーにぼかさず、真摯に技術解説してくれる点。

等々、落合には独特の魅力が詰まっている。そんな彼が何を話してくれるのか。

とにかく、落合はプロだ。「プロの打者だから三冠王を獲る」「プロの監督だから優勝を収める」「プロの解説者だから、素人は気づかない視点から洞察をする」と、与えられた役割で最高の成果をアウトプットし続ける落合ならば、「プロの語り手として聴衆を魅了する」ことも容易いのだろうか?それを確かめるため、今回初めて講演会を申し込んでみた。

少し早めに会場に着くと、すでに入場待ちの行列が。座席は指定席なので早く入場しようがメリットはないのだが、気が焦る。

いざ開場。受付奥には落合のサイン付著書販売コーナーが設置されていた。それに群がる聴講者たち。9割方は「現役時代から落合ファンだったのだろうな…」と思わせるほどの中年男性だった。おそらく既に購読済のファンに対して、「サイン付」という付加価値でリピート購入させるところに、落合のしたたかさを感じた。

講演は13:30ちょうどに開始。冒頭にニッポン放送の山田透アナウンサーが登場。よくニッポン放送ショーアップナイターを聴いているが、この人の実況は良くも悪くもクセが強い。よく話は脱線し、プレー実況の修飾語は多く、解説者をいじる様子は、まるで昭和のショーパブの支配人。古舘伊知郎からスマートさを引いた感じ。「長尺で話し始めたら嫌だな…」と警戒していたが、案外と山田節はおとなしめ&手短に終わり、主役の落合博満が登壇。照明のせいか後光が差している…!陳腐な言い方だが、確かにオーラを放っていた。

まず最初はラグビーワールドカップの話から。意外なことに、落合はラグビーファンらしい。なぜなら、出身高校がラグビー強豪校だったから。そこから選手スカウト→今年のドラフト→西武の山川選手→自身の現役時代に仕えた監督(主に稲尾さん)の話へと、取り留めもなく話題は転々とする。

落合の現役時代を知らない身(もちろん稲尾さんも見たことない)としては「もっと中日監督時代の話やいまのプロ野球界について語ってくれ…!」と内心思いつつ、いかんせん落合の話術が巧い。朴訥と淡々とした口調は終始変わらないものの話の間の取り方が適切なので、「次はどんなワードを繰り出してくるのだろうか」と乗り気で聴き入ってしまう。まさか落合から”話の間の大切さ”を学ぶとは。

前のめりな姿勢で聴き入っていると落合がふと「いま、3時15分かー」と漏らす。話し始めてから2時間近くも経っていたことを感じさせない吸引力。そこからは質疑応答コーナーへ。色々な質問を投げかけたいものの「俺は質問への回答が長いし脱線するよ。だから3問くらいしか答えられないだろうなー」と牽制が飛んできた。それに加え、これはあくまで私の邪推だが、「質問回答数を少なくするために、長く回答しているのではないか?」とも思う。なぜなら既に2020年5月まで講演会実施が予定されているらしいので、毎回の講演で質問にバンバン答えてしまうと今後のネタが無くなってしまう、と落合は先のことまで見越しているのではないか?ペナントレース1年間を通したチーム作りをしてきた落合ならではの計画性を(勝手に)推測してしまった。どこまでもクレバー。

結局、質問では「一流の定義とは何か」「なぜ監督1年目時代、先発投手交代時にマウンドへ足を運んだか」「いまの現役選手の中で名監督になりそうなのは誰か」について、大いに脱線しながらも回答。この脱線が楽しい。

講演後には抽選会を実施。サイン色紙・サインボール・サイン付バットがプレゼントであり、当選者は落合から贈呈&握手されるというおまけ付き。ここもファン心理をよく掴んでいる。

結局、講演会は3時間近く催されて16:30頃に終了。会場を出ると17時開始の巨人×横浜戦を観戦するファンたちで関内は溢れかえっていた。「まぁ巨人が優勝でしょう。今日は新人の戸郷が先発?いいんじゃない、情報がない分、横浜打線は困るでしょ」との予言通り、戸郷が好投し巨人優勝。今日の本題ではない野球解説もサラッとこなし的中させる落合。どこまでプロなんだこの人は。

というわけで、落合の凄さ・魅力を再確認できた講演会だった。次回は2020年初旬に開催(場所は不明)とのこと。首都圏エリアで実施するならば、もう一度参加してみたいものだ。そして檀上で落合と対面&握手したい。

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