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東京スポーツレクレーション専門学校で講師

2024年度からクラブで東京スポーツレクレーション専門学校(通称:TSR)で2年生対象にスポーツクラブ経営という講座を受け持っています。
私はそのうち「経営学」というテーマで7回ほど講義をさせてもらっています。

テーマをどうしたか

スポーツチームの経営学って一体何を教えたらいいのでしょうか?普通に考えるとスポーツクラブの、財務・人事や組織・事業(営業、広報)・地域活動・収益構造などでしょう。もちろんそれらを網羅するのは当たり前なのですが、そもそもこの7回で20歳の若者をどうしたいのか?悩みました。自分が20歳の時に何を考えていたのか?正直自分の将来なんて微塵も考えたなかった。授業に出て、ギターを弾いて、酒を飲んで。いっぱいいっぱいで生きていた気がします。
しかし専門学校の2年生は就職という人生の選択を目の前に控えています。彼ら彼女らの希望はほぼスポーツクラブかスポーツに関係する仕事に就きたいということ。とはいえ、これまで1年間スポーツについて学んだだけ。しかも自分の担当はたった7回。
一方で自分はスポーツの仕事をしているけれど、30年以上は企業で仕事をし、コンサルタントにもなった。数多くの就職面接も行った(最終面接も)。
と考えた時にふと思ったのは、就職面接で戦えるだけの経営の知識があればいいのでは?でした。
学問的に体系だった「経営」を教えてもこの期間で身につくとは思えない。であるなら「自分にとってスポーツクラブとは?自分が経営するならどんな視点を持ったらいいのか?」という「考える」ことで自分のものとし、さらに質問に対して自分の答えを導き出せるようにしてあげるのが良いのではないか、と思いました。
ということでスポーツクラブの経営を学びながら副題として「面接や作文で勝てる」をテーマにしました。正しいことかどうかは分かりませんが。まぁやってみましょう。

授業のスタイル

通り一遍の講義はやめました。
授業は1回あたり90分が2セット。合計3時間です。1回につき1−2テーマを考えています。そして授業の半分はディスカッションと発表にしました。
30名ほどの学生がいますが、インターンなどで欠席もあり、大体20名前後が出席していますた。最初に5つほどのチームに分けました。一部の学生が企業への就職を目指しているので、その人たちで別チームにしてあります。
そして30分ほど私が講義をして、「では20分ブレイクアウトして議論して、自分たちがどうしたいかを発表してください」という感じです。
講義中も突然指します。「どう?」と言って。そして「考えて、考えて」を繰り返します。そう、考えることが社会人の基本だから。
考えて、話して、まとめて、発表をする、が出来たら「使える人」になります。

初日に提示したこと

学んだことは大体すぐ忘れてしまいます。でも自分で考えたら忘れない。

初日のテーマは「目的」

社会人なら「目的」と「目標」は違うとすぐ理解できますが、学生の皆さんはまだよくわかっていませんでした。
だから「どこどこに就職したい」という目標だけでは勝てない、自分が何をしたいのか「目的」をはっきりさせてその上で目標に向かえば最高です。

なんで就職するのか?

ということでチームアクティビティーとして、自分が就職したい先について話、一体何がしたくてそれを選んだのか?と語ってもらいました。

発表ではチームから一人推薦してもらいました。内容はここでは割愛しますが、JリーグのXXに就職したい、という漠然としたものが、そこで何をしてクラブを支えたいか、という説明になっていました。
就職面接で一番に聞かれるやつですね。
ちなみに私は「なんで?」を3回ぐらい連発しています。例えば「XXに就職して広報を担当したい」「なんで?」「クラブの良さを地域の人に知ってもらいたい」「なんで?」「うーん、このクラブが素晴らしいクラブであることを知ってもらえると、試合に観戦に来てもらえるから」「なんで来てもらえるといいの?」「クラブも利益が出るし、お客さんも素晴らしい体験をして帰ってもらえるから」「それだよ!!」といった具合になりました。スポーツクラブの経営の本質にちょっと近づいた気がしませんか?

この手法はコンサルタント仲間の細谷巧さんに教えてもらいました。
著者は「「Why型思考」が仕事を変える 鋭いアウトプットを出せる人の「頭の使い方」 (PHPビジネス新書)」ですが、シスコ時代に営業部門の責任者をやっている時に細谷さんを講師に招いてセールスパーソンやセールスエンジニアたちに「顧客を知るとは」というテーマで講義してもらったのです。その中にwhyを繰り返すと本質に辿り着く、というものがありました。
ちなみに細谷さんには逆に講座をお持ちだった横浜国立大学で講義をさせてもらう機会がありました。2017年のことでしたが「IT/AIでスポーツはどう変わるか」について外国人学生になんと英語で講義をさせてもらうという貴重な体験をさせていただきました。

グループワーク

この時もグループワークをしてもらい、私が「AIで監督できるようになるかも」とか「VRでとんでもない臨場感の試合観戦できるかも」とヒントを出したら出るわ出るわ面白いアイディア。繰り返しますが2017年は7年前です。

話を戻します。すでに5回目(90分x10回)を終わらせていますが、いつも時間が足りません。90分x2の授業内容を確定させ、それを資料にまとめる作業に大体2日ほどかけています。火曜日の午前が授業なので日曜日と月曜日は大体それにかかっています。
面白いのは自分がそのプロセスで学ぶことがたくさんあることです。自分がスポーツクラブの日々の運営に向き合いすぎて「経営」の視点に欠けていることを痛感する日々です。

全体で年間30回ほどの授業があり、その多くはクラブの運営(主に試合)に関わり、そこからフィードバック、あるいは何らかの役割を担当してクラブの活動に参加するという内容が20回ほど。あとは経営と事業を学びます。
彼らが真摯に向き合う姿に自分も姿勢を正して経営をしないと、と思っています。がんばれ20歳。


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