クラシック倶楽部

 NHK-BSPで毎朝5時から放映されている「クラシック倶楽部」をきちんと見始めて3カ月くらいになる。
 そもそもクラシック音楽に対する教養はない。ヨーロッパの文化全般が大好きで、映画や美術は割と詳しいほうではないかと自負しているが、クラシック音楽になるとなぜか食指が伸びなかった。普通に有名な曲を聴けばいいなと思うことは思うが、心を揺さぶられる、もっと聴きたい、もっと知りたい、というような経験を持ったことがなかった。
 それが、あるきっかけで毎朝この番組を見るようになった。次第に、録画しておけばよかったと思うようになり、毎日録画するようになった。それを夕食の時に見る。
 いまだにクラシックがわかってきたとは思えない。なぜなら曲が覚えられないからだ。何という作曲家の、何という作品か。どうしても覚えられない。けれど、私なりにわかってきたこともある。あくまで素人の好みという観点からだが、少しまとめてみたい。

 まず、これは全般的な傾向なのだが、決して偏見のつもりはないが、日本人の演奏家で心惹かれる人がとても少ない。たいていいいなと思うのは海外の人のことが多い。どうしてかはわからないが、海外の人のほうが、なぜか自由に演奏しているように感じる。日本人はやはり真面目なのか、おそらく技術はあるのだろうが、何かぐっとくることが少ない。こうした番組で放映されるような一流のホールでリサイタルを開くような演者は、テクニックには間違いはないはずだ。たいてい皆どこかのコンクールで賞を取っていて、海外で研鑽を積んで、海外のオーケストラと共演したりしている。だから、つまり海外でも認められているということなんだろう。
 でも、なぜか、日本人の演奏家は面白みがなく感じてしまうことが多い。全員ではない、けれど、そういう傾向が確かにある。弦楽器、ピアノ、楽器に限らず、だ。声楽は意外とそうでもないかもしれないが。
  クラシック界の事情は全く知らないが、やはり出自、育った環境なんだろうか。でも海外で生まれた日本人の方もいるからそうとも言い切れない気もするが。このあたり、詳しい方に聞いてみたい気もする。

 次に、上でも書いた通り、このような番組に出る面々はテクニックは確かなはずだ。では私の心を揺さぶるかどうか、その違いはどこに出るのか。
 これはあくまで個人的な感覚だが、一番小さい音、ピアニシモというのか、そういう音の出し方、情感、そういうところに一番差が出る気がする。そうした音の繊細さ、あるいは軽さというか、そうした音から大きな音に移るときのうねり具合というか。そういうものが卓越している人と、雑といったら失礼だけどちょっと雑に感じる人がいる気がする。そのあたりが凄いと感じる人は、羽みたいとか、波みたいとか、そんな風に感じさせてくれる。なんとなく神様が降りてきた感じがすることがある。これがクラシックの醍醐味か??と自分なりに思ったりし始めている。

 また、TVなり動画なりの効用は、当たり前だが映像があることだ。やはり私のような初心者には、映像があるほうがいい。音だけだと何が起きているか、演者がどんな風情かがわからない。やはり目で見て、演者がどんな動きをしているかがわかったほうが、音楽が心に入ってくる。おそらく生で見たらもっといいのだろうが、映像でも音だけよりはずっといい。
 前々からうっすら思っていたが、やはりクラシック音楽はBGMになるような音楽ではないのだと思う。座って、演者と向き合って、全身で受け止めるような音楽なのだと思う。そうして初めて、聴くものの身体に入ってくる、そういう音楽なのだと思うようになった。

 「クラシック倶楽部」は基本的にオーケストラは対象ではないようなので、オーケストラに関しては未知である。オーケストラにはまた違った楽しみがあるのだろうが、しばらくはこの個人技的なクラシックの世界を自分なりに楽しみたい。

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