「ある画家の数奇な運命」

 とてもよい作品だった。アートに関心がある人間であればなおさら、伝説の芸術家の半生に迫るフィクションということで興味がわく。第二次大戦をはさんで東ドイツと西ドイツ、その世情を知る上でも興味深いし、現代の問題でもある優性思想などにも問題提起をする作品だった。役者さんもいいし、映像も素晴らしいし。
 と、基本文句ないのだけど、でも気になることがあった。
 主人公二人のラブシーンだ。
 裸の二人が抱き合うシーンの多さ。
 別にラブシーンやヌードがけしからんというのではもちろん全くない。
 むしろ階段のヌードなどはあっていい場面だと思う。
 でも。
 この物語はどちらかというと純愛のストーリーである。
 二人の繋がりの強さを示すのにあそこまで裸が必要かなあ、と普通に思った。もちろん女優さんのヌードはとても美しい。でも、だからこそ。
 これを観たい男性が、多いから、この場面は生まれたのではないかなあと単純に思ってしまった。
 ヌードというのはとても強度が高い。
 その場面に色々なものが引っ張られる。
 だからこそ、出し方は難しいと思う。
 その場面が全体で浮かないようにしないといけないと思う。
 そのバランスがうまく取れていると、ヌードは映画の素晴らしいスパイスになるが、やりすぎるとげんなりする。
 例えば50年代の作品であれば、ここまでのヌードはないはずだ。
 今の方が色々できてよいこともあるけれど、逆もあると思う。
 映画のテーマや主人公の佇まいと、そうしたシーンの多さが、私には少し不釣り合いに思えた。
 そういう見方もあるというくらいの話ではあるが、私の中ではそういうことがマイナスになることもあるのだった。

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