ベルモンド傑作選1「恐怖に襲われた街」

 宣伝文句に「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」だけがベルモンドじゃない!と書いてあるが、確かにそう。そしてそれはフランス映画全般にも言えることだと思う。ヌーヴェルバーグやその後のベッソン等の世代など、フランス映画といえばおしゃれ?難解?アート?みたいなイメージがあるが、実際フランスで動員を集めるのはコメディーだったりする。
 個人的にはフランス産コメディーをきちんと系統立てて観たいのだが(向こうでは大スターのルイ・ド・フュネスとか日本ではマイナーだし)、そういう機会もなかなかないだろうなあ。
 というわけで、ベルモンドもアクションとコメディーで(作家作品において以上に)本国では大スターである、という認知が広がるのはよいことだと思う。
 前置きが長いが、そんなわけで「恐怖に襲われた街」。1975年。この時代の作品はいいなあ。アクションでこんなに膝がガクガク、本当に怖い思いをしたのは久しぶりかもしれない。凝り過ぎないカメラ、練り過ぎない脚本、シンプルさが今の時代に見ると作品の強度になっている。高所恐怖症の人は見たら本当に怖いと思う。今の作品はカメラが動きすぎて、かえってリアリティがないと個人的には思う(カメラが動けてしまう、からかも)。この作品は(もちろん荒唐無稽さはあるにしても)高所のアクションに関しては、本当に怖い。
 ベルモンドの魅力は何をやっても陽なことだと思う。単純な明るさではないけど、そのなんとも言えない陽の強さ、色気。やんちゃ坊主の可愛らしさと、大人の男の色気。男に好かれる男でありながら、女にもモテる。やっぱりルパン三世かもしれない。そういう意味ではクリント・イーストウッドよりも「ふーじこちゃん」のイメージに近いのでは。
 …と思って山田康雄さんのWikipediaを見たら、ご本人もベルモンドの吹替えがお好きだったとのこと。ふむ、やはりそうか。
 品の良さともいえるかもしれない。男くさい役を演じても、マッチョにならない。紳士。
 数年前にセザール賞のセレモニーに出てきて、出てきただけで場面が華やいだ。それは往年のスターだからというのではなく、やはり持って生まれた華なんだと思った。

 …とここまで書いて下書きに保存していた。
 なんとなくもったいないので公開してみることにする。
 

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