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叫び、同窓会にて尽きる

成人式を迎えるほんの数日前に高校の同窓会が開かれた。高校を卒業してからほとんどの同級生に会っていなかったので約2年ぶりの再会である。
高校時代はクラスで目立つタイプではないし、かといって誰とも喋らないというわけではなかった。どっちつかずのノーマルタイプ。悪いことはしないが成績は悪い、可もなく不可もない担任の記憶には残らない学生であったと思う。
そんな私にも少なからず友達はいたので、久しぶりに再会を楽しみにしていた。唯一やつらがこのような会にきちんと訪れるかが心配ではあったが。

会場に着くとおおよそ参加者は集まっているような状態だった。コロナ以前の成人式であったこともあり、大して狭くない会場に詰め込まれた同級生たち。僕の心配もよそに顔馴染みの友人たちもちらほらといた。
そして奴らが私に気づくなりものすごい勢いでイジり始めた。

そう、何を隠そう私は学生時代の大半以上をイジられてきたのだ。記憶が正しければ2度目の転校をした小学校3年くらいからだと思う。イジってきたものに返して、またイジってきたものに強くツッコミ、そんなことを繰り返して気づけば今。
部活では補欠の補欠、背の順はクラスで前から1、2番目、顔は整っていないという私からすれば収まる位置に収まっただけなのかもしれない。

久しぶりに会う奴らは異様にテンションが上がっていた。それもそのはず、久しぶりに頑丈で壊れないおもちゃを見つけたのだから。普段はおもちゃで遊ぶ側の人間だったが大学ではそうではなかったのかもしれない。
奴らはものすごい勢いで肩をブン回しながら私をイジってきた。それはもう肩が外れてしまうのでは無いかと心配になるくらい。しかもそれが5,6人が一斉にである。
一斉に出ようとして狭い出口でつっかえている。それでもなお肩を回しながら手を伸ばしている。そんな情景が浮かんだ。こいつらはそんなに飢えていたのか。そんなに今の生活が退屈なのか。高校ではおもちゃで遊ぶ側の人間だったが大学ではそうではないのだろうか。

私は丁寧にひとつひとつ返していった。一度に複数のイジりを返すなどそう滅多に無い。一度に10人の話を聞いた聖徳太子、同窓会にて複数の男に言い寄られる学年のマドンナ、そして私。なかなか面白い並びである。
「こんな機会そうそう無いし、こんなに張り切ってイジってきているのだからこっちも気合い入れて答えなくちゃね」
私も気合を入れて返していく。大学生になっても絶賛いじられ中の返しをなめるんじゃないよ。より一層語気を強めてツッコミを入れていく。


声が枯れましたよ。ええ、ええ私の声です。同窓会で声が枯れるやつなんてそうそういないんじゃないですか?しかも役員でもなんでも無い奴が。しかも会場に着いて10分ほどですよ。どんだけ気合い入れてんだよって話です。退屈な大学生活を送っているんじゃ無いかって誰が言ってるんだって話ですよね。お恥ずかしい限りです。それよりどんだけいじるんだよって話ですよ。おもちゃすぐ壊れちゃったよ、もう少し丁寧に使えよ。

そんなロケットスタートの同窓会であったが楽しい時間であった。飲み物を飲んで少し喉が回復したらまた喋り出すし、ビンゴ大会中もそっちのけでバイキングを楽しんだり、終わりに柄になくラーメンを皆で食べにいったり。おまけにこんな話もできたしね。

知人が言っていたけど私をイジるのはパフォーマンスの意味合いもあるらしい。特に後輩とか第三者がいるとみんなが喜ぶからイジるとのこと。もしかしたらこれは私の長所なのかもしれない。今度提出する履歴書の特技の欄にこのページのURLでも書いておこうかな。特技の欄にそんなことする奴もいないことだろうし。




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