見出し画像

副業促進!見落としがちな論点1分でまとめ

 副業促進は今後も続くものと考えられ、AIが普及するまで主として働くのは「人」である。つまり健康問題がついて回る。AIの強みとしては労基法の適用が及ばないこと等、枚挙にいとまがないが人間の場合はそうはいかない。そこで副業を促進する際に企業としてリスク管理しておくべきことを考察したい。


労働時間の把握

そもそも労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」となる。

・業務命令された業務に従事する時間

・手待ち時間(指示があった場合には即時に業務に従事することが求められ、労働から離れることが保証されていない状態での待機時間等)

・参加することが義務付けられている研修等

等が挙げられる。この時間を把握する為に、タイムカードの使用や例外として労働者の自己申告制があり得る。例外のケースの懸念事項としてそもそも労働者が労働時間の概念を分かっていない場合や過少申告をするケースもあり得る。


副業促進する場合の労働時間は?

「ゾンビ規定」とも揶揄されるが、労基法38条では、「労働時間は事業場を異にする場合においても労働時間に関する規定の運用については通算する。」としている。その場合、本業と副業を合わせて一日8時間を超えた場合どちらが割増賃金の支払いを負うかの議論となる。その場合は、原則としえて「後から契約」している事業所が支払い義務を負うこととなる。また、他の事例として、本業先は1日6時間労働で副業先で1日2時間のパート労働者の場合、本業先が副業先での労働時間を通算すると既に法定労働時間に達していることを知りながら残業させると本業先が割増賃金の負担を負うこととなる。(逆もしかり)


問題点

しかし、以下の場合はどうなるか?

①副業していることを労働者が本業先に報告していなかった場合

②実際には副業先で労働しなかった場合

③(例えば)学生時代に家庭教師のアルバイトをしており、そのまま新卒で企業へ入社したが入社後も続けていた場合(社会通念上は新卒入社の企業が本業と言わざるを得ないが、事実として後から契約している)

①に関しては、個人的な見解としては「故意に」残業代未払いとしているわけではない為に直ちに刑事罰を適用とまではされないと考える。

②に関しては法定労働時間を超えていなければ、割増で払う義務はない。

③に関しては、今後議論されていくこととなろうかと考える。


その他

休憩に関しては、前述の「ゾンビ規定」はあくまで「労働時間」に関する規定である為に本業で5時間労働、副業で3時間労働し、休憩を与えていなくとも(人道的議論はなしとして)違法ではない。

休日に関しては、複数説あるが、個人的見解としては、「通算しない」。前述の「ゾンビ規定」は繰り返しになるが、「労働時間」に関する規定であり、休日に関する規定ではない。ゆえに本業先と副業先で原則週に1日の休日が確保されていれば休日割増の支払い義務は負わない。しかし、週40時間超の法定時間外労働が生じる可能性はある。


さいごに

労災保険法では副業を見据えた法改正議論が進められているが(内容は今回は割愛)労基法では進められているとは言い難い状況である。また、労働時間が法定労働時間に達していなくとも、使用者として安全配慮義務は当然に科される為に、健康確保を前提とした労務管理(疲れの色が見えたら休ませる等)が副業促進の施策にリンクしたものと考える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?