10月のプールに飛び込んだ

前書として、私がこの曲を聴いた時の第一印象は

新生欅坂46だ。である。

爽やかなメロディー、重厚感のあるストリングスのサウンド

それでいて暗くなりすぎずに欅坂特有のメッセージ性も

持ち合わせていると思う。

好きな楽曲TOP10を選ぶならランクインしてくる。

だが黒い羊までの欅坂と比較するのに

多少辛辣な書き方をしてしまっているので

気を悪くしそうな方はここで引き返してもらいたい。



この曲を一言で表すとすると何が相応しいのだろう。

「自由」だろうか。それとも「青春」?

私はそのどちらにもあまりピンと来ていない。

これまでの欅坂の表題曲や一部のカップリング曲には

一言で表すことの出来る言葉、言うならばテーマのようなものがあったように感じる。

サイレントマジョリティーだったら「革命」、二人セゾンなら「追憶」

黒い羊の「救い」、いずれにしてもテーマになるような「僕」の像がイメージ出来る。

それらと比べてこの曲はどうだろうか。

テーマが曖昧になっている原因の一つとして考えられるのが

「僕」の置かれている状況の描写が無いことだ。


例えば「世界には愛しかない」

この曲は純粋な愛を持つ「僕」の物語である。

この僕が持つ愛は少し特殊であり、単なる恋愛要素的な愛だけではない。

難しい表現になってしまうが、キリスト教でのagapeに近いものを感じる。

このagapeというのは、神による無限であり無償の愛という意味であり

敵対する者をも許し、愛するというニュアンスを含んでいる。

だからこそ夕立も受け入れ、走り出すのであろう。

そして「世界には愛しかない」と言い切ってしまうあたりにも

無限で無償の愛であるagapeの要素を感じる。


話は逸れてしまったがこの曲における「僕」の描写についてだ。

なぜ授業に出たくないのか、教室の生徒たちや教師との関係は?

細かい部分ではあるがここの構造を明確にしていないから

「僕」の像がブレてしまったのではなかろうか。

ストーリー性があるようでない。難しいところである。

またMVに関しても似たようなことが言える。

映画館でほんの少ししか映らなかったが

この学校での世界観を表現するのに

あのロケ地とセットは相応しかったのだろうか。

前作の黒い羊のMVと世界観があまりにハマりすぎていたがために

平手は余計に違和感を感じたのではなかろうか。


ここまでいろいろと書き連ねてきたが

あれらはただの比較である。

もちろん平手は欅坂に居てほしかったという気持ちはある。

だが彼女がいたことで拗れた問題があったことも事実だ。

一月の二十三日を以て彼女らがグループを去った時に

すぐに選抜メンバーを見直し、この曲を素直に世の中に届けることが

出来たならばどれ程良かったことか。

悔やんでもしょうがないとはいえ、一生の心残りになると思う。


最初の話題に戻ろう。

私が強いてこの曲のテーマを言葉に表すとするならば

それは「若さ」である。

初めの楽曲から成熟した意見を持った「僕」を表現してきた

欅坂46にとって馴染みのない表現だったのかもしれない。

だがこの曲がこれまでの欅坂と次のグループを繋ぐ

懸け橋になると信じている。


これまでの活動に感謝しつつ残りの一か月を、

そして十月十四日からはこれからの彼女たちの活躍を

祈りながら過ごしていきたい。


長文乱文失礼致しました。   Hiz

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