あなたが選ぶ曲なら

時の雫

好きな人が選んだから、自分も好きになるなんて、そんな単純ではないと自分では思っている。
でも、好きな人が選ぶものに対して、理解はしたい。

「時の雫」自体が好きとかそうでないとかという感情はさほどなかった。ライブでは結構よく聴く方ならば、他の楽曲でもいいのになと感じた経験は否定しない。
だからと言って、「なんでこの曲?」と思うほど、ネガティブな感情もない。そんな存在。

ただ、20数曲しかないセットリストに、それだけ登場するということは、きっと何か意味があるはずなのだ。
セットリストのベースを決めているのはJIRO。もちろん彼1人の独断ではないが、本人がやりたいという曲を頭ごなしにやらないなんていうメンバーばいないだろうから、彼が何かしらの基準で選んでいるのだろう。

そうとなれば、なぜそれほどライブにおける登場回数が多いのか。
楽曲が好きであると言うのは当たり前のことだ。ただ、シングル曲ではあるものの、目立った存在でもないし、ライブを盛り上げる存在でもないような…。

しかし、昨年7月のFCライブでその意味が理解できたような気がする。
いや、違う。本人がなぜそう思ったのかがわかったのではなく、その楽曲を選びたいと感じる理由の方だ。

あの日のTERUの声は、言うまでもなく同時では最もよかった(「最も良かった」はここ最近特に、ライブの度に更新中)。
彼のボーカリストとしてのポテンシャルの高さを見せつけられたような気がした。今までの時の雫では感じなかったその感覚。

時の雫のもつ楽曲としてのポテンシャルを、リリースから20年近く経った今でもまだ引き出せるとは…TERUの声のもつ様々な表情が、とにかく何度も見ることができる。
力強くて安心感のある声も、優しくて繊細な声も、艶のあるセクシーな声も。
1曲の中で見せる声の表情のなんとも広いことか。

それを支えるベースがまた歌っている。TERUの歌を彼の背中を見ながら支えるベーシストだからこそ得られる手応えのようなものが、時の雫にはあるのではないか。
昨年のFCライブでのベースは、いつにも増してTERUの多彩な声を喜んでいるかのようにも感じられた。

今後、ライブで聴けた時には、50歳をすぎても尚進化の止まらないTERUの声色の多さを存分に噛み締めたい。


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