映像はないけれど、ストーリーは存在する

HIT THE WORLD CHART

正直なところ、実はこのアルバムの中においては、この楽曲がそこまで好きになれなかった自分がいた。こと、学生時代はなんだかうまくノレないし、だからと言って聴き入る感じでもなければ、うっとりするような感情が湧いてくるわけでもない。要は「わかりやすい」特徴が当時の自身には見えなかったのだ。ただ、この楽曲のガチ縦ノリな感じでもなければ、ジャジーに振り切るわけでもなく、でもじっと動かずに聴くわけではない、このジャンル分けが難しい楽曲は、年月とともにその楽曲の持つ秘めた凄さを知るようになっていく。

まずは、そこまでジャジーではないものの、赤黒っぽい照明がなんとも似合いそうなちょっとした色気があるところ。BPMがそうさせるのだと思うが、スピード感があるわけではない、アンニュイなペースで、体を動かすというよりは、自分なりのリズムを作っていくようなテンポ感が、色気を生み出す。GLAY楽曲の中でもはなかなか珍しいタイプの楽曲だ。でも、そのアンニュイさの中に、他のロック曲同様、ツインギターの妙やムーディーさを際立たせるベースや、リズム感覚の不思議さを作り出しているドラムなど、バンドだからこそ生み出せるグルーブが失われることはない。

珍しいのは、パッと映像が出てこないという点も挙げられる。あくまで自身だけの話になるが、もともと楽曲の魅力にさほど気づいていなかったためか、パッと聴いた時の映像がない。音楽は映像だと散々に言っておきながら、これは映像を持たない。でも、初めて聴いたときに仮に好きになったとて、映像を持たない事実は変わらないようにも思う。ただ、そこに映像がなくとも、楽曲の魅力がないわけではない。その分、耳と体が楽曲に新たな映像を与える余地が十分にあるから。なんだか、物語の世界に迷い込んだような感覚になっていく。特に1番Aメロは、歌の後ろで、軽妙なリズムを刻み、そこに艶っぽい空気感を貼り付けているベースの存在によって、ぐるぐるとした世界に、少しずつ吸い込まれていくような感覚に陥る。嫌なわけではないけれど、少しためらっているところを強めに手をひかれ、そのグルグルへと吸い込まれていく。そのぐるぐるから弾き出された世界では、TERUの「愛し合いましょう!」の呼びかけに、オーディンエスが「もっともっともっともっと」と不足を訴え、愛を乞う1種類だけの言葉が宙を舞う。そんな不思議な、時空が多少歪んでいる世界で、「愛し合いましょう」「もっともっともっともっと」の掛け合いはれなかなか新鮮で、そんなコール&レスポンスは理屈では証明できない「何か」がまたそこから生まれてくるのだ。

↑2016年のこの映像は「HIT THE WORLD CHART」 のある意味での完成系のように感じる。全ての要素が完璧。

#GLAY #HITTHEWORLDCHART #ジャンル分けが不可能というジャンル #時空が歪んだ世界でのコールアンドレスポンス

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