アルバムに入らなかった曲たち

NO ESCAPE

日本マーケットにおけるCD売上が全盛期の時に学生だった自分にとって、アルバムを買うというのはなかなか勇気のいることで、誰かに貸してもらったり、レンタルショップで借りたりして、アーティストが放つアルバムの世界観に浸っていた。
ただ、アルバムは初めて聴く曲や、アーティストのイメージからは離れた曲も多いため、シングル曲を聴くためのツールとして、お得だから他の曲も聴けるアルバルを聴こうという不純な動機で聴き始めた。

ただ、少し音楽に触れ出していくと、アルバムというものが、色々な意味でアーティストにとっては大切なものであることを理解していく。
シングル曲はある意味で、アルバムを聴いてもらうための伏線のようなもので、シングルがここまでフィーチャーされる日本が珍しいくらい、世界の基準はアルバムらしい。

前置きが長くなったが、だからこそ、アルバムのテーマから漏れた曲たちは、次の出番に向けてストックされるのだが、そのまま陽の目を見ないままになることもなきにしもあらずだろう。
今回の楽曲は、15周年記念にリリースされたベストアルバム収録された新曲。
ベストアルバムに収録された新曲?ベストって既にリリースされている楽曲から、それこそベストなものを集め、ファン以外の多くの人に聴いてもらうものではなかろうか。
一般的にはその立ち位置なのだが、GLAYのベストアルバムは少し違う。

そもそも97年にリリースされたベストアルバムの火付け役的存在の『REVIEW〜BEST OF GLAY〜』だって、シングル曲としてリリースされた楽曲は半分程度。インディーズアルバムの曲までも収録されていたり、いわゆる世間一般のベストアルバムのくくりに収まりにくいのがGLAYのベストアルバムの特徴。

そんな風変わりなベストアルバムは、15周年アニバーサリーのタイミングでもリリースされており、そのベストアルバムのDISC3(そう、まさかの3枚組)に収録されているうちの1曲がこの「NO ESCAPE」。この3枚目のディスクに収録されている数曲がベスト盤に収録されている新曲なのだ。

GLAYの楽曲は、リリースされる予定のない曲もバンバンとレコーディングするために、時期的にリリースが「今じゃない」と判断された楽曲たちは暫く「寝かされる」。そして、タイミングによってひっぱりだされる。
ただ、次のアルバムにも、その次にも、更に次にも入れることができずに何年も寝かされ続けたりする楽曲も少なからずある。

そういう曲たちを集めて1枚(という表現は、場合によっては語弊がありそうだが…)のアルバムにしたのが、『THE GREAT VACATION』のDISC3。
上記コンセプトアルバムのVol.2のDISC3も同じ立ち位置のもの。
確かに今までのGLAYにはあまりないタイプの「 NO ESCAPE」。なかなかアルバムのテーマ性に合致しなさそうな雰囲気は感じる。GLAYのもつロックさとか、ポップさとか、美しさとは一線を画す妖しさのようなものが根底にある。
ライブでもしばらくTERUが盛り上げに試行錯誤をしていたように記憶している。

この楽曲のベースラインは独特で好き。楽曲の中で動くベースがゾワゾワとした不思議な世界観を作り、新たなGLAYの一面を見せてくれる。

アルバムには収録されなかった曲も、ベスト盤に収録するというまさかの方法で世に放つGLAYの発想力、好きです。


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