まだまだ進化の途中だとは。

Into the Wild

初めて耳にしたのはライブの時だっただろうか。
GLAYの新曲は、なんの前触れもなく、突然ライブの中でベールを脱ぐことがよくある。TERUのMCもなく、初めて耳にするイントロが突然会場に響き渡り、客席がザワッとする。
そして、たいていこういう曲たちは、のちにライブの中核や伝説になる。

「Into the Wild」は代表格といえよう。寒々しい空のずっと向こうの方から響いてくる口笛のようなイントロ。かさかさに乾いた風に乗って、遠くの方から聞こえるその音は、混じり気のない単音であるにも関わらず、厚みがある。

口笛かと思えば、どこかの国の楽器のようにも聞こえる。凛とした響きの中に、懐かしさもあるように感じる。

その音につられて聴覚を刺激するが、TERUの声。
低音なのに、ファルセットのようで、ふわっとした軽さの中に、芯のある重み。(彼のあの声を的確に表現できる語彙力が欲しいと心底思う)
当時のTERUの声の最高峰がここに詰まっているようにさえ感じる。

そして、客電が落ちた会場の中に、TERUだけが赤く浮かび上がるような演出。
楽曲をステージ全体で表現するのには、これ以上の方法はないというくらいに、楽曲の世界観が出ている。

一定のリズムを保ちながら、口笛のような音が楽曲の道を作っていく後ろにかすかに聞こえるJIROのベース。彼のベースは、決して派手でない時でも、そこに存在感があり、確固たる楽曲の礎となる。

このからだろうか、TERUの歌声が新たなステージというか、その次の進化系に突入していくのは。

ただ、突然ライブでこの楽曲が披露されたツアーが終わった頃にコロナが猛威を振るい、TERUの進化系を生で聴ける機会がしばらく間、奪われた。
ただ、そのコロナを一つのきっかけと捉えた彼は、ファンの前に、ステージに立てない日々の中で、さらなる進化を遂げる。
2010年頃から、声の調子が良くなり、危なっかしさを感じることが少なくなってきていたが、ここ数年はその比ではない。
体の芯にビリビリくるような印象的な声。たった一瞬、人が放った声に、それだけの威力があるということをライブに行くたびに気づかされる。
その声の進化を1曲丸ごと感じられるのが、この楽曲。

進化が止まらない。ここまで進化しても、きっとまだ進化する。
だから追いかけることをやめられない。

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