【訃報】若生智男さん(毎日・大毎、阪神、広島)

毎日、大毎、阪神、広島で投手として活躍された若生智男さんが6月3日、船橋市の病院で亡くなられた。87歳であった。

船橋から程近い、幕張では、若生智男さんの古巣である、ロッテと阪神が交流戦を戦っており、その3連戦が終わった日の訃報であった。

若生智男さんの現役時代を知っている人も少なくなっているだろう。
1956年に毎日オリオンズに入団し、1976年に広島カープで現役を引退しているが、1964年から1974年まで在籍した阪神タイガースのイメージが強いのではないだろうか。

「東北の三若生」の一角、大毎でリーグ優勝に貢献

若生智男は宮城県仙台市出身で、名門・東北高校の野球部に進んだが、なんと、同級生に「若生」姓の投手が3人も集まったのだ。
若生智男の他に、若生忠男、若生照元である。

「東北の三若生」と言われ、のちに、3人ともプロに進むが、東北高校は甲子園には進めなかったのである。

若生智男は毎日オリオンズ、忠男は西鉄ライオンズ、照元は中央大学を経て、大洋ホエールズに入団する。

若生智男は1960年、先発ローテーション入りを果たし、防御率2.15で13勝を挙げ、大毎の10年ぶりのリーグ優勝に貢献、大洋ホエールズとの日本シリーズでも先発登板を果たした。
そこから3年間で37勝を挙げ、1962年からはエースナンバーの「18」を着けるようになったたものの、故障で調子を落とした。

阪神に移籍、救援・先発で安定した防御率

1963年オフ、大毎と阪神の間で、山内和弘と小山正明の「世紀のトレード」と並び、若生智男はマイク・ソロムコとの交換で阪神に移籍した。

阪神に移籍してからはリリーフがメインでありながらが先発もこなしたが、
1964年に4年ぶりの完封勝利を挙げるなど、リーグ優勝に貢献し、「御堂筋シリーズ」と呼ばれた南海ホークスとの日本シリーズでも2試合に登板した。
1966年、リーグ4位の防御率1.93、10勝4敗と大活躍、翌1967年もリリーフが主ながら防御率2.14とリーグ2位につけ、抜群の安定感を誇った。

1969年には開幕から好調でオールスターゲームにも選出され、この年から3年連続で二けた勝利を挙げた。コーチ兼任するなど信頼も厚かった。

広島に移籍、3度目のリーグ優勝と日本シリーズ出場

1974年オフに、安仁屋宗八との交換で広島カープに移籍すると、1975年に広島は初のリーグ優勝を果たし、阪急ブレーブスとの日本シリーズでもリリーフで2試合に登板した。

若生智男は大毎、阪神、広島の3チームでリーグ優勝を果たし、日本シリーズに出場したが、これはNPBで唯一無二である。
しかし、残念ながら、いずれも日本一には届かなかった。

通算628試合登板は、NPB歴代32位

若生智男は通算628試合に登板、121勝120敗、防御率2.71という成績を残し、1976年オフに現役を引退した。

通算628試合登板はNPB歴代32位、阪神で挙げた勝利数72は、チーム歴代20位である。

引退後は、広島の投手コーチを皮切りに、古巣のロッテ、阪神にも投手コーチとして招聘され、縁のないダイエー、横浜でもコーチ・フロントして手腕を振るった。

晩年、千葉県船橋市に居を構え、千葉日本大学第一高校の野球部も指導した。


古巣・ロッテと阪神の交流戦を見届け、逝く


若生智男さんは2005年、セ・パ交流戦が始まった年に、千葉マリンスタジアムで行われたロッテ対阪神戦の試合前に、始球式でマウンドに立った。

その年、日本シリーズではロッテと阪神が激突した。

若生智男さんが出場した1960年の日本シリーズは大毎が大洋にストレート負けしたが、2005年はロッテが阪神にストレート勝ちした。

若生智男さんは、今年のロッテと阪神の交流戦を見届けるかのように、この世を去った。
この日は阪神先発の才木浩人とロッテ先発のC.C.メルセデスによる素晴らしい投手戦で、才木が1-0で完封勝利を収めた。

ロッテはこの日、2005年以来の12連勝を逃した。
若生さんが在籍した大毎オリオンズも1960年にプロ野球史上最長の18連勝をマークし、若生さんも連勝中に4試合に先発し、先発・リリーフで3勝を荒稼ぎしたが、奇しくも大毎が連勝で「18」でストップした試合に先発したのも若生さんであった。

佐々木朗希へのアドバイス


若生智男さんは生前、「後輩」の佐々木朗希にもこんなアドバイスを送っていた。

2021年、佐々木朗希がプロ2年目、まだファームで育成中の頃である。


「1軍と2軍の違いはあるが、活躍する鍵は配球も含めて自分のペースで投げられるかどうかだね。1軍だからといって、力まずにスイスイとストライクが取れるか。ボールの威力はほかの投手よりもあるのだから、力まずに投げることが大事」

今のロッテは能力の高い投手が多いという若生氏。
「困ったことがあったら、遠慮なく聞いたほうがいい」。先輩の姿を見て、対処してほしいと願った。


若生智男さん、安らかにお眠りください。





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