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読んだ先から言葉を落としていく

本を多く読んでいると、時折、人から「読んだ内容、覚えているんですか?」と聞かれる。

そこは、読書を重ねてきた自分としては、堂々と答える。

「ぶっちゃけ、全然覚えてないです」

と。


正直、ほかの本を嗜む人と比べても、自分は、群を抜いて読んだ内容をポロポロと道端に落としている人間だと思う。

極端なことを言えば、ミステリー小説を再読することだってできる。伏線やトリックを知った上で楽しむため、ではない。改めて本を開き、改めて事件と出会い、改めて「お前が犯人だったんかい!」と驚愕することができる。

もちろん、久しく会っていない小学校の同級生を見かけるのと同じぐらいには、「どこかで見たことがあるような……」という既視感を覚えたりはする。でも、誰だったっけ、と思う間に物語は進み、真実は開かれ「そうだそうだ」と膝を打つ。


まぁ、エコだな、とも思う。

一度読んだものをまた楽しめるというのは、もったいないことも知れないけれど、再び味わう余地があるのだから。


本棚に本がある。

それは、僕に忘れることを許してくれる。

僕は、そのことにとても安心しているから、気がねなく食べかすのように言葉を落としながら、ページを進めることができているのかもしれない。

そこに言葉は確かにあるのだから、僕のなかを通り過ぎるだけでも、十分だ。本に触れている"いま"は、いつだって面白い。

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