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CRYAMYカワノの脱退について思うこと

 あの冬から、私の人生は大きく変わったのでした。カワノという1人の男に出会ったからです。銀色のナイフを携えて、私の心に深く、深く突き刺しました。長ったらしく愛を語る、狂気とも思えるソレが、私をいつも支えていたのでした。

「お疲れ様でした」今はそれだけ言えたらいいなと思います。6年という長いようで短いこの時間を今まで与えてくれていたこと、それが嬉しくてたまらないのです。もちろん、できるなら続けていて欲しかったとも思います。それでも、私はひとりの、ただのファンとして、最後まで見届けたいと願うだけです。

 このバンドに出会ったことで、私は多くの人と出会うことになりました。その中でも、今のバンドメンバーと出会えたのは、CRYAMYのおかげです。ありがとうございました。

 CRYAMYを聴くたびに、その才能に嫉妬し、自分自身の浅はかな感情を憎しむこともありました。彼が私にナイフを突き刺したせいです。決して抜けることのないナイフをです。

 脱退のことは比較的穏やかな気持ちで受け入れることができました。彼が匂わせまくったせいです。本当に優しい人なんだと思います。こんな世界の端くれの私が生きてイイんだって思わせるくらい私を肯定し続けてくれていたからです。

 私が人生に絶望し、当時住んでいた学生寮で大声で泣きじゃくり、同室の友人に宥められていた時も、CRYAMYが流れていました。忌まわしきウイルスのせいで、全ての時が止まってしまったあの時も、CRYAMYがそばにいました。いつだって彼の歌は私を見ていてくれました。それだけでした。

 こんなに神格化するようなことばかり書くと本当に神か何かに思えてしまいそうですが、彼はただそこにいてギターを握っていたにすぎない、端くれの私に歌を聴かせてくれたにすぎないのです。それでもその歌が心から好きでした。

 CRYAMYを聴き始めた同時期に、私も歌を作るようになりました。そのどれもがCRYAMYのパクりとしか思えない酷いものでした。YouTubeにあげたオリジナル曲の弾き語りには「絶対creamyすき」という呆れるコメントが届きました。確かにCRYAMYは好きですが、creamyは好きではないからです。もうそのアカウントにはログインできなくなってしまったので、インターネットの海から消えることは決してありません。YouTubeが無くならない限り。ははは。

 6年も経つと、誰でも変わるものです。私も変わっちまいました。あの時から書き続けた誰に聴かせるでもない歌が100曲を超え始めた頃から、歌を歌うのが苦しくなったのです。疲れてしまったのです。カワノという1人の人間に憧れて歌い続けることに、疲れてしまったのです。私は何をすれば良いのかわからなくなってしまったのです。ちょうどその頃に、CRYAMYはスティーブとアルバムを制作することを発表しました。私は何かがプツンと切れたかのように、曲を作るのをやめました。ルックバックの藤野が京本の絵を見た時のように。

 しばらくして、アルバムが発表されました。彼の歌もまた変わっていました。刺さっていたナイフをもっと深くまで抉るようなそんな歌に変わっていました。その中でも、「人々よ」という曲は頭ひとつ抜けて私を刺してきました。カワノさんの声が、私の脳を掻き回すように反芻しました。良い曲でした。

 ああ、どうしてこうなってしまったのだろうと涙を流す時、私は黒歴史に近い私自身の歌をもう一度蘇らせるようにしています。そしてその曲が、いかにCRYAMYに影響されているかを鼻で笑ってやるんです。結局のところ、私はただカワノさんの作る曲が好きなだけなんです。脱退とか知らねーです。Twitterで見かけるイザコザなんてマジでどうでもいいんです。誰がどう生きようが、どこで死のうが、本当にどうでもいいんです。ただ、生きているんだったら、人間であれと、そう思うのです。真っ当でなくても、綺麗じゃなくても、笑えなくても、もがき続ける人間であれと、そう思うのです。

 私の人生は色んなことがありすぎました。つらすぎました。でも彼に出会ったから、誇りを持って言えるんです。

俺こそ悪足掻きし続けた人間だ!!!!

カワノさん、ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。脱退を発表したとき、私は詩を書きました。ほんとに惨めな詩を書きました。これを世に出すというのは、私のすべてを曝け出すということです。以上「CRYAMYカワノの脱退について思うこと」でした。


歳月/蓮見京介

私に煙を吐いてきた
内側から腐った桃の
腐敗臭を澱みなく
微睡むこともせず
確かに届けてくれた
冬の黒い夜のこと
喉仏に突きつけたソレは
寝静まる街
少しだけ傷つけた

2人で笑おう
そんなことないよ
わかってたはずでしょ
歳月は

この街の片隅で鳴っていたのさ
冷たい言葉で言えないのは
あなたらしいから
いつかまた会えたらなんて
望みはしないけど
今は100円の缶コーヒーと
黄色っぽい花束と2人で眠るよ
さよなら
ありがとうって
許していないよ



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