弓具の魅力 其の弐

 新入生の皆さん、こんにちは!東京大学運動会弓術部です。
 今回は、弓を引く際に使用する弓具を紹介します。少々細かな話もしているので、適宜読み飛ばしてください。

 弓の両端にかけて張る糸です。弓道では「つる」と読みますが、アーチェリーでは「げん」と読むようです。上下に弦輪(日の輪と月の輪)が付いていて、弓の末弭(うらはず)と本弭(もとはず)に引っかけて張ります。弦は使用していると次第に伸びてくるので、上の弦輪を作り直して調整します。

 弓道の弦には複数の素材があり、それによって価格や耐久性、矢の飛び方などが変わってきます。弦は素材で大別すると、合成弦と麻弦に分かれます。合成弦は主にケブラー、ザイロンなどの化学繊維で作られていて、丈夫で長持ちして価格も比較的安いです。グラスファイバーといった合成素材の弓と相性が良いです。学生が使うのは価格,耐久性から言って、合成弦が多いでしょう。麻弦はその名の通り天然素材の麻から作られています。筆者は使ったことがないのですが、麻の弦は伸びにくい一方、非常に柔らかくて耐久性が低く、すぐに切れるようです。ただしこれは良い面もあり、弦切れが早いほうが弓本体への負担が少なくなるので弓を長持ちさせるのには適しています。ですが、麻弦は高級品であるために、高段者が同じく高価な竹弓に使用する場合が殆どです。また、冴えのある綺麗な弦音(つるね:矢を放つ瞬間に鳴る音)がでるという特徴もあります。

 また、弦は素材だけでなく、メーカーや製品によって、弦の太さ(重さ)や硬さ、耐久性、弦音、弦の返りなどが変わります。弦の違いが的中に影響することもしばしばです。弓との相性、離れの感触、矢の飛びや弦音などを吟味して、自分に合った弦を探すことも弓道の醍醐味の一端といってよいと思います。

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 近的の的は木製の細長い板を丸めてとめ、輪状にした的枠の一方に的紙を貼り付けたものです。

 近的競技では一般に直径36cmの的を用います。36cmは伝統的な的の寸法である一尺二寸に相当し、「尺二(的)」という呼称も一般的です。順位決定戦(射詰競射などと呼ぶ)を行う場合は直径24cm的(八寸に相当し、八寸(的)と呼ばれる)が使用されることもあります。

 一般的な的絵(的の模様)には「霞的」と「星的」があります。一般・中高生では通常霞的が使用され、大学弓道は星的の使用が定められています。
霞的は、中心から順に中白(半径3.6cmの円)、1の黒(幅3.6cm)、2の白(幅3.0cm)、2の黒(幅1.5cm)、3の白(幅3.0cm)、外黒(幅3.3cm)の輪状に塗られており、本来は正式の的ですが、現在では大学弓道を除いて一般的に使われています。中心の白円は正鵠とも言い、物事の要点を捉える事を表す「正鵠を得る(射る)」とは的の中心に当たることです。

 霞的の三本の黒い輪には由来があります。古来の日本の宮中で行われていた弓射では、中国の射礼にならって大的と呼ばれる的が使われていました。古代の中国では、射礼は六芸の一つと言われ、身分により大射、賓射、郷射の三段階に的が分かれていたそうです。使われていた的は正方形だったようで、大射の際に使うのは「鵠」と呼ばれる一辺が四尺(約120cm)の的、賓射の際に使うのは「正」と呼ばれる一辺が二尺(約60cm)の的でした。実際に矢を射る際には、まず「候」と呼ばれる一辺が十寸(約300cm)の的を立て、その中に大射の際には「鵠」の的を、賓射の際にはさらにその前に「正」の的を掛けて使っていました。つまり、三段階に的が分かれていたのです。日本の文武天皇が大射を行った際、中国の射礼にならい、的を外院、中院、内院の三段階に分け、大的に三本の輪を描き、これが現在の霞的の三本輪の由来であると言われています (諸説あり)。ちなみに中国では正方形の的が日本では丸くなった訳は、太陽信仰の影響だという説があります。

星的は、白地の中心に半径6cmの黒丸を描いたもので、黒丸を特に星と呼び、「図星」の語源といわれます。略儀の的であり、大学弓道の競技ではこれを用います。日本では破魔矢や破魔弓が縁起物として知られていますが、元々は濱矢、濱弓と呼ばれ、ハマとは的を意味しました。濱弓は元々、冬至の頃に一番弱くなる太陽を、弓矢で射ることで復活させる呪術に用いられており、用いられる的は太陽を表すものだったのです。そのため星的は、太陽を基に作られたと言われています(諸説あり)。

 また、的の大きさにも由来があり、36cm的は、全体で人間の胴幅を、二の黒までが頭の大きさを、中白が心臓の大きさを表しており、24cm的は、人間の顔の大きさであるといわれています。

弓道には儀式的な由来も多くあるので、調べてみると案外興味深いです。

 図柄によって、見たときの大きさの体感が変わることもあるようです。個人的には、星的は縁が白なので、同じサイズでも霞的より大きく見えるような気がします。尚、よくある誤解として、通常の競技では的中の判定は「あたり」か「はずれ」のみであり、的のどこにあたろうと差はありません

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弓道着

 上衣、袴、帯、足袋と、弓道を始める際に購入する弓道具です。 見ての通りなのであまりお話しすることもないですが、なんといってもその格好良さが売りです。特に袴は和の渋さが感じられて良いと思います。凛とした姿が道場の雰囲気と相まって、気持ちも引き締まります。加えて、適正な姿勢を保ったり、重心を落ち着かせたりする機能面でも助けになります。

 一般的には、上衣は白、袴は黒、足袋は白となっています。 弓道で使われている帯は、角帯と呼ばれる日本古来のものです。学生が着る機会はあまりないとは思いますが、着物について、男性は基本的に黒紋付きに縞袴が礼装とされています。女性の方は、黒紋付きに黒袴・紺袴が礼装とされており、審査や、講習会等の極めて公の場にでる場合は、礼装にて参加することが一般的です。

 本学では、袴の後ろと上衣の右袖に「東大」の刺繍を入れることになっています。

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[おまけ] 書籍

 弓具と呼ぶのは少し違いますが、書籍も弓道の上達に欠かせないものだと思います。もっともメジャーな専門書は『弓道教本』でしょう。全日本弓道連盟発行の、弓道の教科書です。全4巻で、第1巻は、弓道全体の基本について、第2,3巻は、諸先生方がそれぞれに射法八節について、第4巻は、第1巻から第3巻までの内容を一部抜粋し、より深い解説が書かれています。射法八節や弓道の「真・善・美」の最高目標など、弓道の神髄がまとめられたバイブルと言えます。ただ、図も少々あるものの、難解な表現が多く、特に初心者にはとっつきにくいかとは思います。一般の書籍も複数あり、これらは図や写真も多くて飲み込みやすいので、初めはこちらを参考にするのも良いでしょう。弓道は特殊な動きも多く、見様見真似で上達することは至難の業です。書籍から体の使い方のような理論を学ぶことは必須といえます。面白いと思うかどうかは個人差があると思いますが、興味のある方は是非手に取ってみてください。

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おわりに

 弓道で中てるためには、自分自身の技術というのももちろんですが、道具との相性、また、道具同士の相性といった、弓具の面でも工夫も必要です。その点でも弓具について知り、考えることは大事ですし、弓道の魅力の一つでもあります。自分のこだわりについて、友人と議論するのも楽しいです。それに、弓道は日本古来のもののため、身近な日本語との関連など意外な発見があるのも面白いと思います。弓道は競技として魅力があるだけでなく、使用する道具にも魅力を備えています。多くの方とこの素晴らしさを、部活を通じて共に感じられたら嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました。他の記事も是非ご覧ください。次回の更新もお楽しみに!



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