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もうすぐ『ドードーが落下する』ことについての覚え書き

稽古序盤、なぜか『ハリー・ポッターと呪いの子』の座組みの中に自分がいる夢をよく見た。はて。

あのチームは、竪山隼太さんや門田宗大くんという情熱のある顔見知りの役者さんが中心にいるからか親近感なのか何なのかは分からないが、とにかく仲はとても良さそうだけどプロフェッショナルで、迸る熱量と、作品愛を強く感じさせてくれて、それって良いなあ羨ましいなあと憧れていた自分が潜在的にいたんだと思う。

橋本菜摘さんという、舞台ハリポタの出演者のお一人のブログが素晴らしくて、つい全部読んでしまった。

自分の出る作品に、てらいなく、誇りを持つことって素敵だと思うんだ。

それが仲よしこよしの自己満足を取り払われたものだとなおいいけど、愛情や友情が作品の精度や純度に結び付くことって、きっとあると思う。

サッカー本田圭佑さんは、孤立して距離を取っていたことについて「仲良くするために代表に行ってた訳じゃないんで」と言っていて、それも真理だと思った。
でも、あのチームは、W杯で優勝することは出来なかった。

かつて平原テツさんに、求ちゃんはめちゃくちゃナルシストだと思うよ滲み出てるよ、と言われて、あちゃちゃーと思いつつ、まあいっかー、とも思いつつ、とにかくこの『ドードーが落下する』は、何か僕の人生にとっても、観に行くあなたにとっても、特別な作品になるんじゃないかなと、ひとり思っているのです。

交わらないあなたとは、このまま関係が出来ないかもしれないけれど、それもまたひとつの関係だと思っています。仕方のないことです。それも豊かです。

共演する出演者の皆さんが、心強すぎるのと、加藤さんの今回の作品は、どうなっちゃうか分からないところに向かってるのが、もう最高なんだよな。

傑作『もはやしずか』を観た人にも観に来ていただけるといいですね。
かつて『貴方なら生き残れるわ』を観た人にも観に来ていただけるといいですね。
タイトルどういう意味なんだろう、と思う方にも観に来ていただけたら嬉しいですね。

僕は、疎外感をもって他者の座組みを眺めることが多いので、振る舞いには常に気を付けたいところ。
どこにいても、部外者の気分だから。

いや、そんなこと言いつつ、手前味噌だけど素晴らしく良いチームだと思う。

僕は、みんなと一緒に立っている・稽古をしているという気持がする。

『貴方なら生き残れるわ』の皆は、元気だろうか。
いま何してるんだろう?
秋元龍太朗も出るんだけど、一味違うから観てほしいよ。

僕の出る作品を今後二度と観なくていいからこれだけは観に来てください、みたいな極端なことは言えない。

でも、自分の最新の演技・最新で取り組んでいることに興味を持ってもらえるということは、やはり嬉しいですね。

演劇を観に行く動機とパワー、大変だよなあ。チケット代も高すぎますね。仕方ないんだろうけど。

た組は、高校生は、1000円で観れるんだよなあ。


藤井風のライブが無料で配信されていたら、そりゃあ普通にそれを観るだろうし、アーセナルの試合が無料放送されているなら僕だってそれを観るし(アーセナルファンではないんです例えとして)、テレビはつけたらやっているし、専門チャンネルは多すぎるし、SNSやゲームは手軽だし、拘束時間や行き帰りの時間とか考えないといけないし、たとえばお目当ての芸能人を観れるという理由が欠けた場合に、演劇の持つ付加価値って何でしょうね?この問い自体が、そもそもおかしいんですけどね?




何が起こるか何を見せられるのかが分からないものを浴びるのも醍醐味だと思うんですけどね。
見たことのないものを見たいですよね。

僕は予定を決めて計画的に行動することが苦手なので、当日券で舞台をよく観に行ったりするんだけど、最近は当日券も取りにくくなった。

前日の指定された時間までに電話で予約して取る"当日券"って当日券かね?

SNSによく登場する人、頻繁に投稿する人の動向、やっぱり、つい見ちゃう。

だから、宣伝はどんどんしていこうー、と思いつつも、でもどこかで、誰にでも、老若男女・万人に来てもらいたい訳ではないんだよなー、と、ひねくれた気持ちも生まれちゃって、行ったり来たり。

加藤さんの劇は、ある種、セラピーだ。

アルパチーノの本に、シェイクスピアはセラピーだと書いてあった。

「何か新しいことをやるときには、すこし踏み出すんだ。そのこと自体がセラピーだ。」

だから加藤さんの戯曲は、セラピーだ。

KAATは都市の中にない。
中華街の近くにある。横浜の先にある。
でも、都市からやって来る人が多い。たぶん。

近所の人も観に来てくれたらいいのに。

都市から来た人たちは、この都市の物語を、どう解釈するんだろう。
東横線なり、みなとみらい線の帰り道で、何を思うんだろう。

あなたが劇場に来る道のりと、同じ道のりで、僕たちは稽古場と劇場に来ています。

言葉は、軽いな。

言葉は、刃。刃物。
名探偵コナンや。
(わかる人にだけ、わかればいい)

みんな人生って、きつくね?厳しくね?俺だけ?

そう思っている人にも観に来てほしいですね。


加藤さんの舞台の登場人物は、ものすごく平易な言葉で、ものすごくよく喋る。
言葉を積み重ねていく。
コミュニケーションを重ねている筈なのに、何かが決定的にズレていたり、誤解があったりしてしまう。
それを、積み重ねる。

言葉の向こう。
言葉、言葉、言葉の向こう。 
思考と想像より、遥か遠いもの。

遠くて深い。
人を矮小化して、世界を歪める作品があまりに多い気がする。 

広大な無意識、能動の海へ。
言いがたい未知性、不確定。
敵にも力にもなる、関係性の危うさ。


内へ内へ。外へ外へ。
アンバランス。分離。離脱。一人。

青春時代の歌ばかり聞いていた稽古序盤。

後半は、何にも聞けなくなってきて、大好きな本も読めなくなってしまって、最近、好きなものを思い出そうと久しぶりに聞いた曲が、やはり良かった。

ヤクルト1000がこれだけ売れて、サウナがこれだけブームになって、みんな癒しを求めてストレス過多で彷徨っている。物価も上昇中。

みんな何が欲しいんだろう。

青春は、密。
甲子園の優勝監督が言っていた。
密接。密着か。密度。密集。濃密。

この劇、一応は、青春失踪劇と、
加藤さんは冠している。

青春って、なんなんだろう。友情って?

そして個人的なトピックとして、

芝居を始めて最初の頃に出逢った藤原季節の30歳になる前の最後の舞台での共演。

彼と過ごしてきた時間も、あまりに濃くて、あまりに色んなことがありすぎた。

密だった。密なう。

でも、このお芝居には、それはあんまり関係ないような気もするし、大きく関係があるような気もする。

僕は基本的に、自分の個人的な繭に閉じ籠るのに夢中な人間なので、季節くんの、昔から変わらない他者への寛容性と受容する力は、改めて尊敬してしまう。

そして、今回それが更にブラッシュアップされているなあと思った。

僕はいつまで子供なんだろう、と思った。

しかし、あれだねえ、僕たちはあまりに色々なことを正直に話しすぎたし、あまりに色々なことをし過ぎたし、あまりに遊び過ぎたね。

山脇くんと秋乃ゆにさんと安川さんとは、これから歴史を作っていきたいね。

テツさん岳さん今井さんは何か既に見えない絆があるね。

また演劇やりたいなあ。
まだ始まってないけど。

青春って、なんだっけ。

楽しかったけど、滅茶苦茶つらかったな。

解らないものとかこととか人とか、そういうものに対する嫌悪感や偏見を越えた先に、何かがある気がする。
あの時には、そんなこと分からなかった。

あの時、『ドードーが落下する』に出逢いたかったなあ。

『裏切りの街』で共演した、とろサーモン村田さんから「求ちゃん、舞台見に行っていい?」と誰よりも早く連絡が届く。

どの友達よりもどの知り合いよりも早く連絡が届くまさかの驚き。本当に人格者。
もちろん、もうチケット取ってくれてる知人もいるとおもうけど、その連絡が嬉しいです。

他者に誠実な興味と関心を示して、出し惜しみしない。きっと、色んなところでこうしてるんだろうな、村田さん。嬉しい。M-1チャンピオン。
(あ、色んな事情があるだろうし、予定が変わっても仕方ありません!)


現代を描いている、現代に在る、現代の言葉で紡がれる、劇。

"私に言わせれば、「すべての演劇は現代劇であるべき」なのです。古典だからといって、博物館に陳列するような古めかしいだけの作品にはしたくありませんし、過去に使われた手法や、(原作の時代設定に忠実に従うような)本来そうあるべき、といった手法も好きではありません。すべての要素について、現在の世界に置き換えると何を意味するかを考えて創るのが、私のスタイルです。"

これは、加藤さんではなく、イヴォ・ヴァン・ホーヴェの言葉。


まだ終演後の景色の想像がつかない。

良い意味で。

何もかも、本当は恥ずかしくて、自分が間違っているような気がする。

なのに、なんでやってるんだろう、なんで出させてもらえてるんだろう、というのは、未だに答えが出ない。

演劇をやることも演技をやることも特権的なことではなくて、今日のニュースを知りながら、天気を気にしつつ、光熱費税金を払い、電車に乗り、歩き、家事をする。

朝起きて、今日が始まることに絶望したりもする。
毎日、泣きそうだよ。それを忘れずに。

自分がたいそうなことをやっている気持ちもない。


今ある真実は、この劇に関われて良かったなあと思っていること。
また皆と一緒に創作出来たらいいなあと思っていること。
良いことばっかりじゃないし、お芝居難しいけど、毎日とても楽しい、ということ。



観てほしいですね。
チケットもうかなり少ないらしいですね。

加藤さんは、よく人のことを知っていて、とても正しいと思う。反語だ。もしかすると、よく人のことが分からず、自分が必ずしも正しいと思っていないのかもしれない。だから劇人物が魅力的で多面的。
複雑なものを、複雑なまま提示するから、豊かだ。
この人、凄いわ。

もうすぐ、幕が上がる。
いったい、どうなるんだろう。

観た皆さんは、いったい何を思うんだろう。

あいにくの雨模様かもしれませんが、お越しくださる皆さま、どうぞお気をつけて。
風邪引かないでくださいね。
秋ですね。

北海道公演は完売とのこと。

お楽しみに。
僕も、楽しみ。


ゆにさん&岳さんの写真、持ってるんだけど載せていいかどうか判断つかずで、載せず。
どこかで激写したいです。

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