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孤狼の血 LEVEL2

映画『孤狼の血 LEVEL2』について。
 



ハッシュタグは、
#夏はコロウ
らしいです。


7月20日のプレミア上映で初号試写ぶりに観た。
今度、新しい映画を作る若者と共に。
ワクワクしてくれていた。
映画を観る前には、ワクワクしていたい。
「さて、どんなものを見せてくれるんじゃい」という鑑賞態度では、実りは少ない。

(監督や演出家や作家は別にしよう。
監督や演出家や作家は、他の人の作品に感動ばかりしていたら、新しいものなんて作れないんじゃないか。)


上林(うえばやし)組の皆さんに
「今日、今からプレミア上映観に行きます!」
とメッセージを送ると、
鈴木亮平さんからスピーディーに返事が届く。

撮影期間中、期間後も、どこまでもどこまでも人間力のある、人格者の方だった。
上林組を、座組みを、文字通りまとめあげてくれていた。
ずっとお芝居の話をしていたし、くだらない話しも沢山してくれた。

イラスト、嬉しい。長場雄さん。




このストイックな役者さんが今、ちゃんとした位置を確立されていて、正当に重宝されているという現状を考えると、日本という国の評価軸も捨てたものではないのかもしれない、と思う。

僕が撮影した、鈴木亮平さん。自慢です。





村上虹郎くんが雑誌のインタビューでも話していたので書くと、今回の広島・呉での撮影は関係者とスタッフのみの憩いの場所として、「居酒屋 孤狼の血」というのが設けられ、そこで各部入り乱れての交流があった。
プロデューサーさんのご厚意だ。
ずっと同じ撮影現場とホテルを移動し続ける人たち限定での、交流があった。




鈴木亮平さんも、心身共に大変な撮影の中、何度もこの場を訪れ、場を賑わし、除け者を誰一人作らず、日夜、真摯に話してくれた。
上林組の交流はここで深まったんだと思う。

上林組、小栗基裕さん。

 




絆、という言葉はあまり好きではないし、ファミリーなんて言葉はなかなか信頼しにくくて簡単に口には出せないし、こういう「仲良かったんですよ僕たちは!」「撮影現場が楽しかったんです~」みたいなものは内輪ネタとしてしか見れないひねくれた自分がいるので、
何と形容していいかは分からない。

いや、事実と印象だけ書けばいいのか。


うん。



毎熊克哉さんのお酒の呑み方が格好良かった。
そして、ここまで素晴らしい役者さんだとは。
もともと尊敬していたけれど、かなりの衝撃だった。
映画愛もさることながら、その演技の緻密さたるや。

毎熊さんから教えられたことはあまりにも多くて、これは内緒に、僕の胸の中に秘めておきたいと思う。

また必ず良い形で共演したい。



小栗基裕さんに、濃くお酒を作ってしまった。
けしてわざとではない。

オーディションから抜擢された小栗さんは、初演技・初映画にも関わらず、本当に真っ向勝負の素晴らしい気合いで、それをものともせず、取り組んでいた。
ラストシーン、本当に最高だった。
白石さんも大絶賛していた。

その愚直さに、感動した。


市川洋さん(当時は市川洋平さん)と、よく一緒に行動して、沢山タバコを吸った。
白石組常連の市川さんは、この作品のためだけにパンチパーマにしていた。
とてもよく似合っていた。
白石さんと話している市川さんは、とびきりキュートだ。
無邪気で、ふたりとも、キュートだ。



田中翔貴くんという広島在住の役者は、人と話すときに目が血走るので、こわかった。
目がガンギマリしとる、と皆からいじられていた。
僕を求さん求さんと呼んでくる、心の優しい青年だった。



毎日、色んな方が来た。色んな話があった。 
めちゃくちゃ面白い話も沢山聞けた。
ものすごく平等で、気持ちが良かった。
照明部は、撮影が遅く続いても、
よく集まって呑んでいた。

上林組は、広島での滞在期間がとても長かったため、ここに足繁く通った。




既成概念、凝り固まった価値観、ルール、形式、罪悪、薄汚さ、世襲、規律、規範、モラル、正義、家族、常識、喜怒哀楽、何もかも、ぶっ壊し、突き進むことを自ら選んだ映画。



ローリングストーン。転がる石。
僕らは所詮は、その辺の石っころだ。
それ以上でも以下でもない。
よく分かっている。
本当にしょうもない存在。

それでも這いつくばって、何とかやっていくしかなかったし、今だってそうだし、根なし草だし、何もないし、ずっと誰に対しても何に対してもチャレンジャーだ。


それはきっと、生涯変わらない。

サトウヒロキ。



役者陣、諸先輩のみなさまも、気合迸り過ぎて、みんな映画の中で、基本的に目が血走っとる。


ここまで濃密にコミュニケーションをとって、みんながその作品の為だけに命を燃やしている作品に参加してしまうと、常にまたこのような作品を求めてしまう。


いやいや、僕も前へ進みたいと思っている。


呉市出身で、今回方言指導で入られており、出演者でもある沖原一生(おきはらいっせい)さん。仁義の人。愛される人。





「なんかおかしくない?」
「なんか気持ち悪くない?」と
思うことばかりだ。
それは世相もそうだし、政治もそうだし、人々の振る舞いや、過激な発言や、人を袋叩きにする風潮もそうだし、あらゆることだ。とにかく分断が加速してお互いを疑い合ってぎすぎすしている。
ひどく苦しい。



鈴木亮平さん演じる上林(うえばやし)の行動は
極悪非道といって然るべきかもしれないけど、
じゃあ、
極正義真道なんて、あるんだろうか。


これは犯罪の肯定否定というマクロな話じゃない。
反転して考える。
亮平さんも舞台挨拶で話していた、
「写真のポジとネガが反転するみたいに、正義と悪が入れ替わって、自分だけが唯一真面目に生きていると思う」人物。
自分からしたら周りが悪人、という人。



卑怯な奴ばっかりじゃないか。
姑息な奴ばっかりじゃないか。
自分のことだけ考える、
私利私欲の奴ばっかりじゃないか。
一生懸命生きている人を、あざ笑う連中ばっかりじゃないか。
裏切る奴ばっかりじゃないか。
汚い奴ばっかりじゃないか。
仁義も、へったくれもないじゃないか。



正直者が馬鹿を見る世の中だ。
自分はどうなんだ。






コロフェスでの、
試写会以来二度目の鑑賞。

観ながら、走馬灯のように色んな瞬間を思い出した。
胸にしまっておきたい言葉が幾つも浮かんで、白石さんの声も聞こえてきた。







白石和彌監督も、やはり除け者を作らない。


この映画の現場にいて、改めて、
ああ、僕は、映画が好きだなあと思った。
好きなんだよなあと思った。


こんな、除け者を作らない場所なんて、
ないから。
そして個人が、孤独に、あくまで自分の意志で、
その場に立っている。

仲良しこよし、ニッコニコ、ということではない。
ひとり、ひとり、ひとりの総体。
甘えた人間なんてどこにもいない。



スタッフと共演者と、支えてくれる方々への感謝。
シンプルなことにも気付く。



ひとつのことに向かって、大の大人が大汗をかきながら、お互いの生活も傷も過去も未来も時間も生まれも悲しみも怒りも喜びも何もかも全部持ち寄って、挨拶を交わし合って、その作品のためだけに過ごす時間。


今も渦中の真っ只中だが、
「コロナ」という言葉が生まれた直後のあの頃、
僕は健全な精神状態じゃなかったんだと、
この撮影現場を通して、気付いた。




村上虹郎くん、素晴らしかったな。チンタ。
目の前でお芝居を見て、
前から好きだったけど、改めて特別な才能だと思った。

上へ上へ這い上がろうとする野心と情熱と、透明なエネルギーをひしひしと感じた。
洗練された演技。
間違いなく、ワンシーンワンシーン、懸けていたし、怒りも感じたし、チャーミングだったし、みんなを味方につけていた。


あるシーン、
雨がざあざあと降る、
衝撃のシーンで、
虹郎くん、吠えてた。
文字通り、吠えてた。


そして、その背中が、まさに孤狼の血というタイトルに相応しく、一匹の狼のようだった。
 

いや、滅茶苦茶寒かったからっていうのも勿論あるんだろうけど、誰も寄せ付けないで、気を吐いていた。


僕は、粘り強く、それを遠くから、
自分の角度から見守っていた。

呉、ポポロシアター。




ぐだぐだ書いてしまったが、この作品は、けしてセンチメンタルに浸って観るような映画ではない。


思い出話も一杯だが、そんなことはさておいて、この映画は、滅茶苦茶面白い、酒や煙草よりも気持ち良い、快活なエンタテインメント映画だ。
悲しみには浸らないんだ。
ぶっ飛ばすんだ。


主演の松坂桃李さんも滾っている。


そう、そして、僕も、こんな風に書きながら、
あんまり感傷には浸ってない。


僕は、あの場にいたんだ、
ただそれだけだと思っている。


だから今日も、次のことを考える。
今、目の前にあることを考える。

また皆さんとご一緒出来るように。
もっと、より良い形で。
また白石和彌監督の作品に、
出れるように。


また再会出来るように。


本当に、皆さん。
心より、ありがとうございました。
一人でも多くの方に届きますように。

上林組。




2021.8.20




中山求一郎

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