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城山羊の会、『ワクチンの夜』終演。

城山羊の会『ワクチンの夜』が終演しました。
これから関係者やお客様から感染者が出ないことが重要ですが、全公演を終えました。 

ご来場頂いた皆様、関係者の皆様、気に掛けていただいた皆様、本当にありがとうございました。


三鷹市芸術文化センター。
素晴らしい劇場でした。
毎日、ホワイトボードに手書きのメッセージが書いてあり、それも日替わり。
館長の森元さんによるものだと思います。
ホスピタリティー溢れる劇場。
ホスピタリティーは、愛ですね。
劇場までの道のりも、劇場の空間も、何もかもが気持ち良かった。
また必ずここで演劇をしたいと思っています。
(届け、森元さんへ)

城山羊。しろやぎ、と読みます。


毎日おかしくっておかしくって、僕自身もおかしくなりそうな(?)稽古場、本番の日々でした。

ひらがなで書きますが、あたまがおかしい。


ああ、
特に、城山羊の会の金閣銀閣こと、岡部さんと岩谷さん。
爆発的に面白くて、何度も大笑いさせてもらいました。
放っておくと、お二人は勝手に小芝居とエチュードを始めます。
お二人が話しているだけで城山羊の会の世界が瞬時に醸成されていく。
やはり、このお芝居でも、お二人がいるシーンの強度はとんでもないものでした。
頼もしく、真面目で、煙草もよく吸われる、芝居の好きな素晴らしい先輩方でした。
座組みにいたら、本当に本当に心強いお二人だと思う。
目が、真剣を越えて、恐いです。
凄いです。 
またすぐにでも共演したい。

岩本えりさんは、ポツドールやチェルフィッチュ、ブス会、KUNIOなどに出演されてきた、歴戦の志士です。
場数が違うし、でも稽古場で悩まれている姿が逞しく美しかった。
公表されていると思うので書きますが、二児のお母さんです。
生活をちゃんとしながら演劇をされている方。
言葉をてらいなく放つことの出来る、とても素敵な人でした。
とても助けられました。
ありがとうございました。



春原愛良さんは、僕と共に一家のもとへ訪れる大学院生のエリカという役柄。
情緒豊かで、悲しいから泣く、悔しいから泣く、ということの出来る方でした。
城山羊の会に初参加という点では、僕とは同じ。
のほほんとした相棒だったので、
僕も極めてのほほんとした気持ちでした。
どうも、ありがとう。

アキちゃんこと朝比奈竜生さんは、アキちゃんを地でいく優しい方でした。
吹越満さんが観にいらして、「すごい奴が出てきた」と仰っていました。
演劇がお好きなので、楽屋では、よく演劇の話をしました。
僕が今気になっている戯曲について話すと、その作品の上演歴を調べて、その場で送ってくれたりしました。
『ワクチンの夜』は朝比奈さんがいなかったら生まれてこなかった演劇だと思います。
どうも、ありがとうございました。

ここまで毎日笑っておかしくて、ってこと、
中々ありません。
ニュースやテレビや映画などに、ほとんど触れずに過ごしていましたが、じゃあ僕が帰っていく日常ってどんなだっけ、と強く思わされる。
たまに、ウディ・アレンの映画を何故か部屋に流していただけだった。

どんなだっけ、日常。

演劇がある日常、本当に楽しかった。

そして城山羊の会は、
死ぬ気で演劇なんてやらなくていいんだ、ということも、僕に教えてくれたような気がします。

勿論、作品にもよるのだと思いますし、それは思考を止めたり楽にやるということではないのですが、僕は常に未来のない追い詰められたような気持ちでいつも作品に臨んでいたので、どこかで軽く肩の力を抜くことも、教えてもらいました。
それは、山内ケンジさんのお陰かもしれません。

疲れたら、稽古をやめるんだ。うん。
素晴らしい。



城山羊の会は、人間のおかしみとか真髄や根源的な感情を、なるべくリアリティー溢れる方法で描き、だんだんだんだんそれが麻痺してきて、観客を巻き込んでいく。
夢世界、劇世界に鮮やかに飛び込んでいきます。

みんな普通に喋ってるけど、おかしいよね。

友人の上川周作くんの感想が良かったな。
引用しちゃおう。

コロナで人に会えないからすっげー孤独感じたり寂しかったりしててってのでめちゃ共感できる舞台だったなぁ。
熱出ると本性というか動物っぽくみえてきて、ヒトって理性を保つために葛藤する生き物なんかもな〜っておもった。
最後のきゅーちゃんキスするシーンめちゃ良かった。すっげードキドキしたけどワクチン打った夜にワクチンプレーするのすごいね。
安心するために色んな欲求を満たしていかないと精神的におかしくなるよなって開き直れた。、笑笑

世界がおかしいのだから、
ここまでおかしくても、
それがまた可笑しい。
愛しい。

藤原季節くんも観に来てくれて、「圧倒的観客にさせられる」と言っていた。
なるほど、と思う。


僕も僕なりの解釈や感想はあるんだけど、それは置いておいて、凄く多義的に観れることが素晴らしいなあと心底思います。
老若男女(?)問わず、起きていることを楽しむことが出来る演劇。
人を泣かせるより、笑わせる方が難しい、というような文句を聞いたことがあります。
だから、難しいことをやり続けているんだろうな。


素敵な作品に携われて、本当に感謝しきりです。
観に来てくれた友人たち、先輩たち、後輩たち、関係者のみなさまも、本当にありがとうございました。

とても嬉しかった。
感想を律儀に送ってくれた皆も、ありがとう。
感想、凄く嬉しかった。

最近演劇をやっていたある方は、「自分がやっていたときに感想が届かないと、つまんなかったのかなあと不安になったから、ちゃんと伝えた」と言っていた。いいね。

でも、これは人それぞれのことだから、
どちらでもよいのです。
持ち帰って密やかに、という楽しみ方だってあるのです。
義務ではないのです。


城山羊の会。
またぜひ出演したいなあと思う。
僕はまたすぐに、次の作品に入ります。
演劇も映画もドラマも、ひたすらやっていきたいです。


ワクチンの夜は二度と再演されない作品だと思いますが、誰かの記憶に薄く残っていれば、思い出し笑いでもできれば、それで良いと思います。
いや、残らなくても、その時楽しければ、笑えたら、笑えなくても違和感のようなものが刻まれれば、それでいいんだと思います。


終わりが始まりだと思えるといいよね…、と岡部さんが千秋楽の前にストレッチをしながら言っていました。


僕も、そう思います。




中山求一郎

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