深く読む舌切りスズメ





小さなつづらと大きなつづら。
小さなつづらが正解で大きなつづらはハズレ。


小さなつづらには大判小判がザックザク。
大きなつづらにはたくさんの恐ろしい生き物やお化けが入っていましたとさ。




何度も読んでもらっている話なのに、いいお爺さんがたまたま今日は出来心で大きいつづらを選んでしまったらどうしようってドキドキして、「小さい方だよ!」って願っていた。




こんな話を聞いた。

いい人が選ぶつづらは大きいのも小さいのもどっちも正解なんだよ。

大きいつづらにも小さいつづらにも大判小判がザックザク。

損をしたと思うような人なら最初から小さい方を選ばない。

悪い人が選ぶつづらはどっちもハズレ。


そりゃそうだ。


いい人が積み上げた先の選択肢と、悪い人が積み上げた先の選択肢の結果が同じな訳ないじゃない。

私がスズメなら選んだところを見届けて、そっと中身を入れるだろう。



だけど、「宝が入ってるんだ!」って信じて、重いつづらを一生懸命背負って帰っていく姿を想像すると、悪人だろうと、ちょっと同情する。

ひどい目にあわせた相手が自分をもてなすと無防備に乗り込んでいく所も何だかかわいそう。
本当に悪知恵の働く人ならそんな危険な事はしない。


自分の利に正直な人?
人の立場に立てない人?
未熟な人?
それは無垢な人?

悪人って、何だろうって考えてしまう。

意地悪なお婆さんと優しいお爺さん。

2人の若い頃を想像する。
お爺さんはお婆さんの子供のような無垢で無邪気な所を愛していたんじゃないだろうか。

お婆さんは、昔の自分を見るような目でお爺さんに愛されるスズメに憎さを覚えたのではないだろうか。

引き留めるスズメに、「お婆さんが待ってるから」と帰るお爺さん。
ひどい目に遭ったお婆さんに「欲を出すものではないよ」と言うお爺さん。

何だろう。

お爺さんのお婆さんへの愛が伝わってくるのは私だけだろうか。



一番怖いのはお婆さんを笑顔で迎えたスズメじゃないか?




私のつづらはどうかな。

「家に着くまで開けてはいけませんよ」

多分家に着いても怖くて開けられない。























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