国内の新型ウイルス感染者に外国籍が多いというのはほぼデマ

新型コロナウイルス感染症COVID-19についての情報をお求めの方は、厚生労働省の情報ページか専門家の情報をフォローしてください。私は専門家を紹介する立場にはありませんが、例えば以下の方などが穏当かと思います。
・押谷 仁(東北大学
・高山義浩(huffpost記事一覧
・今村顕史(@imamura_kansen
・岸田直樹(@kiccy7777
・坂本史衣(@SakamotoFumie
筆者は医療や行政法の専門家ではありません。単なる素人の感想なので医療情報としての信頼は置かないでください。基本的に自分が納得するためだけに書いたものであり、他者を納得させるために書いたものではありません。

ここのところ「国内の感染者は外国籍が多い」という情報がネットを飛び交っている。BCGの治験が始まった後に特に注目が集まっているらしい。その根拠は厚労省の感染者集計に記載されている日本国籍者の数なのだが、これに関してはあまり信憑性のある数値ではない、ということは指摘しておきたい。厚労省自身も「(これ以外に国籍確認中の者がいる。)」という注記を入れるようになっている。以下、これがなぜ生じるかについて推測を交え説明する。

国の集計の弱さ

感染症法を見て頂ければわかるが、感染症への対処を行う主体は都道府県であって国ではない。医師が患者の発生を報告する先も都道府県である(第十二条)。患者の発生を発表しているのも記者会見しているのも都道府県である。

法律で求められる以外の追加のデータを集計・報告ポリシーはおそらく都道府県ごとに異なっている。特に検査数統計ではそれが顕著で、検査数が検体数なのか患者数なのかという基準がかなり長い間統一されておらず、基準統一作業に伴う数の増減がたびたび発生している。

国籍については、副大臣のコメントによると匿名化検査後の名寄せに自治体ごとの事務手続きの速さに違いがあるようである。そのことを顕著に示すのが3/29のデータで、この日は東京都の病院と千葉県の介護施設で同時に集団感染が発覚したが、「日本国籍とはかぎらない」が約9割に達している。病院と介護施設の利用者が外国人に偏っているというのは通常考えにくいだろう。東京都と千葉県の名寄せが間に合っていないために、厚労省はそれらを「日本国籍」だと確定できないので算入していないのが実態である。したがって、厚労省発表の国籍のデータは見る価値がほとんどない(後日変わったりもする)。

国籍はプライバシーに関する情報でもあり、例えば「新潟在住のパラグアイ人」「東京在住のセイシェル人」などはほとんど個人特定に近いので、これを匿名化するのは理解できるところである。指定感染症が外国からの持ち込みがなければ発生しないものが多いことから将来のためにも速度は早めてほしいが、現状そうなっていないのを理解できるところではある。

感染症の統計が怪しいのは、今まで誰も求めてなかったから

なんで統計がこんなにいい加減なのだ、と不満に思う方もいらっしゃるだろうが、それはおそらく今まで誰も求めていなかったからだろう。

保健所は普段から結核など他の感染症の検査もしているが(しかもPCR検査であり、前掲結核調査対象はPCR検査枠を消費している)、今まで皆さんのうち結核感染者の国籍や検査数(検査陰性数)を一度でも気にかけた人が何人いらっしゃるだろうか?誰も求めていなかったから未整備のままなのであろう。

感染症の統計が怪しいのは実は諸外国も同様である。ドイツは当初感染者のわりに死者が少なく外国からは評価される国ではあるが(単に感染者若いからだという意見はある)、検査に関しては日本同様検査をある程度絞ることが公言されており、州ごとの保健所から上がってくる情報の遅れがまちまちで単に見た目上数日遅れのデータが上がってきているという批判もあり、ドイツ国内でも不満を持たれている。

Immer wieder gibt es Kritik an der Datenlage in Deutschland. Doch das föderale System der Bundesrepublik bringt es mit sich, dass in den Bundesländern unterschiedliche Behörden die Daten erfassen, bündeln und zu unterschiedlichen Zeiten veröffentlichen. So sind die ersten in der Regel die örtlichen Gesundheitsämter. Sie übermitteln ihre Daten an die Landesgesundheitsämter. Je nachdem, wer hier wann mit den Zahlen an die Öffentlichkeit geht, können die Daten von außen betrachtet schon dann nicht mehr übereinstimmen. Wieler erklärte: „Aktuell sind die Gesundheitsämter schnell. Einige übermitteln am gleichen Tag und auch am Wochenende, aber eben nicht alle.“
ドイツのデータ集計には批判が繰り返されている。しかし、ドイツ連邦の集計制度では、各州の保健当局が異なる時期にデータを収集、集計、公表することになっている。原データの収集は通常は地域の保健所が担当し、データを州の保健当局に送信する。ただその日付については、外から見たときにはすでに対応しなくなっている可能性がある。[ロベルト・コッホ研究所所長の]ヴィーラーは「現在、保健当局は素早い。検査即日データを送るところもあれば、週末に送るところもあり、それ以外もある。」と述べた。
――RKI rechtfertigt sich – und hält sich bei einer Frage konsequent zurück. 2020.3.25 Welt

ドイツでは、今回のパンデミックまで保健所からの報告が紙の郵送で行われていたところが多いようで、今回のパンデミックの最中に探り探りデジタルに切り替えているようである。

上記記事では、ドイツでも10倍程度の暗数があるというのはロベルト・コッホ研究所も当然の推測としており、これは日本の事情と似ている。スペイン風邪以来の本格的パンデミックであり、欧米も感染症対策は歯抜けになっており今このパンデミックの中で手探りのようだ。

SARS禍を経験した中国・香港・台湾・ベトナム・シンガポールや、MERS禍を経験した韓国ではこの点はだいぶ進んでいるようである。ただ中国はいまだに出てくる数字が怪しく、今回流行実態をとらえた検査体制を整えられているのは台湾、香港、シンガポールくらいではないかと思われる。




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