新型インフルエンザ等特別措置法ではなく感染症法を改正すべき

新型コロナウイルス感染症COVID-19についての情報をお求めの方は、厚生労働省の情報ページか専門家の情報をフォローしてください。私は専門家を紹介する立場にはありませんが、例えば以下の方などが穏当かと思います。
・押谷 仁(東北大学
・高山義浩(huffpost記事一覧
・岸田直樹(@kiccy7777
筆者は医療や行政法の専門家ではありません。単なる素人の感想なので医療情報としての信頼は置かないでください。本文でも伝聞調で「ようだ」が多用されていますが、それだけ信頼性がないということです。基本的に自分が納得するためだけに書いたものであり、他者を納得させるために書いたものではありません。


新型コロナウイルスが蔓延するにつれ、「新型インフルエンザ等特別措置法」のような強力な手段を使うべし、という世論が高まり、同法を改正して対象に新型コロナを追加するという方向で与野党まとまっているという状況にある。

従前から指摘している通り、同法は日弁連が反対していたという強力な措置を行う法律であり、今回も特措法適用を要求していた側が法律内の「緊急事態」の文言があることを理解して後にひと悶着あったようである。

法務省や内閣法制局の主張

新型インフルエンザ等特別措置法の対象は、感染症法第6条第7項で定義される「新型インフルエンザ」「再興型インフルエンザ」のほか、「新感染症」も対象にすることが出来る。今回は新感染症に指定することで適用できないかという案が出ていた。これについては、法務省や内閣法制局は、元々病原体が不明である場合を想定しているのでSARS-CoV-2と特定されている今回は適用対象外であるとしている。

小林秀資:新感染症は未知の感染症であって病原体が不明であることを前提といたしております
SARSは……新感染症として対応を開始した初めての例となり、 病原が明らかにされた後に指定感染症とされた。――国立感染症研究所 The Topic of This Month Vol.24 No.10(No.284)

これに対しては法学者から解釈変更は可能であるとの意見が出ている。すなわち、解釈変更による新感染症への指定は可能であるという法解釈は成り立ちうるだろう、というものである。

特措法以外の措置の問題

しかしながら、新型インフルエンザ等感染症は特措法だけに特別規定があるのではない。感染症法や検疫法(第十六条)では、新感染症と新型インフルエンザ等感染症は異なる扱いを受けており、それぞれに新型インフルエンザ等感染症の専用の、自宅・ホテルなど医療機関以外での待機を前提とした規定がある。

新感染症への指定ではこれらの法で定められた新型インフルエンザ等感染症向けの措置を使うことが出来ない。新感染症は第一類相当(エボラ級)を想定しており厳格な隔離が前提となっていて、大量の自宅待機者を想定した新型インフルエンザ対策と色が違うのである。

感染症法では新型インフル特有の措置が第四十四条の二~五、新感染症特有の措置が第四十四条の六~第五十三条にある。

これと同様の措置は、自宅待機を想定した新型インフルエンザの場合には、感染症法第四十四条の三に規定がある。

感染症法 第四十四条の三
 都道府県知事は……居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の当該感染症[新型インフルエンザ等感染症]の感染の防止に必要な協力を求めることができる。
 ……第二項の規定により協力を求めるときは、必要に応じ、食事の提供、日用品の支給その他日常生活を営むために必要なサービスの提供又は物品の支給(……)に努めなければならない。

また、検疫法でも、新型インフルエンザを想定した第十六条第2項では感染未確認だがそのおそれのある人の念のための隔離(停留)をホテルで行うことが出来るが、一方で新感染症についてはエボラ級想定であり念のための隔離もすべて専門病院で行うべきとされている。検疫問題については現在は2/13政令で新型インフルエンザ相当の措置を行う読み替えで対処されている。

検疫法 第十六条
2 …停留は…(新型インフルエンザ等)…の病原体に感染したおそれのある者については、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関若しくは第二種感染症指定医療機関若しくはこれら以外の病院……に入院……、又は宿泊施設の管理者の同意を得て宿泊施設内に収容し、若しくは船舶の長の同意を得て船舶内に収容して行うことができる。

第三十四条の四
…(新感染症に関わる)…停留は、特定感染症指定医療機関に入院を委託して行う。……病院であつて当該検疫所長が適当と認めるものにその入院を委託して行うことができる。

あるべき法改正

新型インフルエンザ等特別措置法は特に強い措置を抜き書きしたものであり、新型コロナウイルス対策としては感染症法や検疫法に指定された強硬手段となる前の措置でも新型インフルエンザ等と同等に扱われるべきと考える。よって、新型インフルエンザ特別措置法を改正するよりは、感染症法第6条第7項で「新型インフルエンザ等感染症」の定義に新型コロナウイルスを追加するほうが妥当ではないかと思われる。

また、以前から書いている通り、新型インフルエンザと同様に扱うべき新感染症を取り扱うためフレームワークがないこと、感染症法・検疫法・新型インフルエンザ特別措置法は相互参照しつつも追加と継ぎ接ぎでかなり分かりにくく法の穴が生じていることから、長期的にはこれを整理する形での改正が必要と考える。


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