日本では新型ウイルスはどのくらい広がっているの?本当のことが知りたい、という方向けの概算の方法

新型コロナウイルス感染症COVID-19についての情報をお求めの方は、厚生労働省の情報ページか専門家の情報をフォローしてください。私は専門家を紹介する立場にはありませんが、例えば以下の方などが穏当かと思います。
・押谷 仁(東北大学
・高山義浩(huffpost記事一覧
・岸田直樹(@kiccy7777
筆者は医療や行政法の専門家ではありません。単なる素人の感想なので医療情報としての信頼は置かないでください。本文でも伝聞調で「ようだ」が多用されていますが、それだけ信頼性がないということです。基本的に自分が納得するためだけに書いたものであり、他者を納得させるために書いたものではありません。

今回のウイルス騒動では、日本は検査を積極的には行わないという方針を取っている。この姿勢を取るのには様々な合理的理由があり、基本的には感染を封じ込め患者さん一人一人を守るためのものである(特に強調しておくが、現在のところ検査しても見逃してしまう率が高く、検査で全数把握・全数隔離で封じ込めするのは困難であるのでその理由での検査拡大は期待するべきでない)。

しかし、「今日本で新型ウイルスがどのくらい流行しているのか」ということが分かりにくいということが不安になる方もおられよう。そういった不安に対応するには、直接検査以外の方法による推定をすることもできる。専門家は数理モデルを活用している。例えば専門家会議の西浦氏は、北海道域内で発見された感染者の情報や、北海道を旅行したあとで他の地域や海外で感染が判明した人の数をリファレンスとして、3/2時点で道内の確認感染者77人に対して潜在的感性者数を940人と推定している(ただし、この940人は検査しても引っかからない無症者が相当割合含まれる過程であることには注意すべきである)。

ただ、このような数理モデルがどこでも常に計算・公開されているわけではない。この項では一般市民でもできる概算レベルの推定について簡単に列挙する。ただし、概算に過ぎないので、概ね1桁(±2オクターブ)程度の誤差があるという前提で考えていただきたい。

死者数・重症者数を基準とする

今回のウイルス騒動では、全数検査を維持しようという国も多く、そういった国での感染者数と、積極的検査を行わない日本の感染者数は、特に軽症者を把握するか否かがことなるので直接比較しにくい。しかし、こと重症者や死者に関しては、指定感染症であることから届け出なければ違法であるし、院内感染の恐れがある(複数の病院を兼務する看護師がいるので隠蔽も困難)ので、日本でも必要に応じて検査をしており、検査基準の差異は小さくなると考えられる。そのため、死者数や重症者数については、全感染者数に比べ国ごとの差異は小さいと考えられる。

またそこから、死者数に致死率の逆数を乗じることで潜在的感染者を推定することもできる。致死率も現在のところ安定した数値がないが、2%から0.2%程度まであなたの好きな数字を入れるとよいだろう。この前提で日本の状況を見ると、推定の潜在感染者数は下位推定で1000人程度、高位推定で10000人程度と考えられる。

回復期間を基準とする

重症者しか検査しない方針である場合、入院期間が長くなる。このため入院期間、簡易的には一定期間の新規感染者と回復者の比率を見ると検査がどの程度行われているかが分かる(終息期に入った中国を除く)。

シンガポールでは2/3が回復しているほか、ダイヤモンドプリンセスは半分程度、日本全体では1割超が回復している。半分回復は良い数字で、1割超はやや良いといった数字である。

肺炎の発生数をモニタする

新型コロナウイルスの蔓延は、専門の検査をしなければわからないというわけではない。新型コロナウイルスは重症の肺炎を発症するので恐れられているのであり、蔓延すれば肺炎患者が増えるはずである。実際、イタリアでは「患者1号」の発見前後に肺炎患者が異常に増えていたという。つまり、肺炎の発生率をモニタすればよい。ただし肺炎の原因は多数あり、特に誤嚥性肺炎が多く他の病原菌による肺炎も同程度あるため、単に肺炎数だけ見ていると感度が悪くる。もう少し絞り込んで「他の既知の原因ではない病原不明の肺炎」を疑い例としてモニタできればよいだろう。例えば現在、湖北省では病原体の検査が追い付かないため症状だけによる診断が行われているそうである。

なお、肺炎検査数のチェックは重症者数をモニタしていることになるため、全感染者を把握するためのチェックにはならない。これは「死者数や重症者数でさえ日本の発表が信じられない」という人のための検算の方法である。

出国者や旅行者を基準とする

専門家会議の西浦氏の数理モデルでは、「北海道を旅行したあとで他の地域や海外で感染が判明した人の数」をパラメタに組み込んでいた。これと同じように、「ある集団からどのくらい外に伝播したか」というのはよいリファレンスになり、かつ外部の人の検査になるため「国内の検査体制への不満」といったものを気にする必要がなくなる。

これを日本全体に当てはめてみよう。平年、日本から出国する日本人は1日5万人程度、日本へのインバウンド観光客は1日8万人程度になり、今年は2月最終週でその半分程度に落ち込んでいるようだ。海外では散発的に出国日本人、日本旅行から帰国した外国人の感染が報告されているが、例えば1万人に1人とすると単純に割り算すれば日本からの出国者からは(半分に落ち込んだ今でも)1日5名程度感染者が発見されなければならない勘定だが、現状は高々1日1名程度(この1週間では台湾1名タイ一家3名日本人1名)である。この場合、「外国のしっかりした検査体制」を日本で試行したときに陽性となるのは多くて2000名程度(クルーズ船除く)と推察される。

同様の概算は外国でも行うことが出来る。例えばイタリアは日本の2倍程度の観光客が訪れるが、この1週間でイタリアに関係した感染者をwikipediaの項目で確認すると、欧州、中南米、北アフリカを中心に20か国超の初感染確認者がイタリアからの帰国者であり、数えると80~100名程度の感染があったことが確認できる。

これを書いている今現在、イタリアを旅行して新型コロナウイルスに感染する割合は、日本を旅行して感染する割合の4倍程度と推定される。日本の死者数が12名(うちDP号6名)、イタリアの死者数が52名となっており、旅行感染者と死者数での両面で「3月頭の時点でイタリアの感染者は日本の4倍」という推定が成り立つ結果となっている。本来この方法も流行期間が違うと単純には比較できないが、イタリアは現在の広がり具合から日本と同じような時期に感染が広がっていたと考えられ、比較は成り立つと考える。ただし、ヨーロッパとアメリカで広まりつつあるので、この方法が参考になるのは今後は台湾かシンガポールへの出国者のみになるだろう。

米軍基地を参照点とする

出国者を参照点にするのと同様の効果があるものとして、米軍基地と大使館を挙げることが出来る。特に米軍基地は、日本の法律・行政に従わない独自の医療・検疫が行われており、また特定集団を対象とした定点観測であるため、疫学的モニタリングのリファレンス点として望ましい特性を持つ。

事実として、韓国では新型ウイルスが流行している大邱近郊の米軍基地で感染者が出ている。日本でも米軍基地で新型ウイルスへの感染が確認されたら、本格的に流行している証と見てよいだろう。

また、大使館も独自の検査体制を持っているわけではないが、日本の行政の圧力に従う必要はないので正直な発表が行われるだろう。既知の感染者に積極的に接触する必要のないケースで大使館員が市中感染した場合、東京での蔓延が一定レベルまで増加したと推定できる。




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