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けんだりしんそんかんごんこん

けんだりしんそんかんごんこん、てんたくからいふうすいさんち…

いったいなんの呪文かご存知だろうか。
いや、呪文ではない。おそらくこれを唱えたところで魔除けにもならなければご利益もない。
これは易の八卦の読みと象意を続けて読んだものだ。ここに☰(乾)☷(坤)といった「陰陽三本の組み合わせ図」がセットになって、最低限これだけは覚えておけば易占はできるという「基本セット」である。

しかし実際には「下から上に」や「八卦×2乗=64の卦辞、64×6=384の爻辞」「老陽老陰が転じた之卦」等々があり、それらの膨大な象意を全部覚えるのは大変なので「とりあえず」八卦の基本セットだけを押さえておいて、あとは『易経』という四書五経にも含まれている古い中国の古典に書いてあるのでその当該箇所を読んで「判断の助け」とするのである。
『易経』はいろんなところから出ているけど、徳間書店のがいいかな、文庫やkindle版もあるし。

で、易占というと街頭で筮竹と算木を用いて占うイメージがある…というかイマドキそんなのを実際に目撃したことはないのだが、これは古いやり方が日本にだけ残ったもので、本場台湾あたりでは冒頭の写真みたいな八角サイコロや古銭三枚で占うのが主流となっている。
もちろん「本場」では易以外にも四柱推命、紫微斗数、手相人相、風水に姓名判断などなど、各々にさらに細かく様々な流派流儀があってまさに百花繚乱、占いの総合百貨状態である。

けっきょく何が言いたいかというと、これら中華系占いの根底には古い中国思想が存在しており、易にしても少なくとも周代にまでさかのぼり、それよりも古く殷代からいわゆる「亀卜」が行われていて、それが日本にも伝わって21世紀の今も宮中や神社で儀式として行われているのだということ。
そして亀卜を記録するために用いられていた甲骨文字が漢字のルーツとなったのだから、まあ少なく見積もってもざっと三千年ぐらいは華人だけでなく日本人もまたこの古い占いに基づく文字を使い続けていることになるのである。

先にも言ったとおり、易経は四書五経にも含まれている重要な古典で、それには「太極という一元から陰陽という二元に別れ、そこから変化して万物が発生した」という重要な東洋思想が根底にあり、この「変化」こそが「易」という言葉の本質的な意味であって、そこには「太極」ならぬ「変化して止むことのないこの世界」に生きるしかないわれわれ人間にせめてもの指針をもたらそうとした先人の叡智がこめられているのだ。

つまり、われわれ人間は「本来は」不二一元ではあるものの「現実には」二元がもたらす止むことのない変化の中を生きるしかないので、そっちの現実のほうを重視して生きていこう、幸せになろうとするのがインドならぬ中国の古来からの思想なのである。
「変化して止むことがない」というのが仏教の「きほんのき」であることもまた言うまでもないことだろう。

かくのごとくして、日本では古来より東洋の叡智を取り入れることによってその哲学や思想、宗教観を深めてきた。
「日本オリジナル」とか「日本発祥」とか、夜郎自大もほどほどに願いたい。

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