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たちまちメガ金麦

プロローグ


 "楽器"という名の金属の塊を何時間も持ち続けたあと、不思議とメガジョッキは軽く感じる。本当は白い泡なんていらなくて、全部金色の液体でなみなみ注いで持ってきてほしいけど、そこは日本人の侘び寂び。
 一口目から麦を感じたくて、思いっきり喉に流し込む。今日一日を生きてきて、一番"生"を実感する瞬間かもしれない。


 思えば、法律上お酒を飲めるようになってからの4年間、とんでもなく濃い日々を過ごしてきた気がする。たくさんの人に出会い、言葉を交わし、ときにぶつかりながら、それなりに上手く頑張ってやってきたつもりだ。

 嬉しすぎるハプニング、悲しすぎるアクシデント、悔しすぎるインシデント。ことあるごとにジョッキを傾けながら反省会をしてきた。


 数週間前、ついに社会の大海に飛び出し、何度も荒波に呑まれ、土左衛門になりそうになりがらも、もがき続け息をつないできた。きっとこれからもそういう生活が続くんだろうけど、不思議と絶望や後悔の念はない。


 木のぬくもり感じる貴族の屋敷に通い続けた4年間で手にしたもの、それはこれからの世知辛い世の中を生き抜いていくための「金色の恵み」だったのかもしれない。


 金麦から生まれた一縷の希望。最高に旨くて、最高に苦くて、最高に爽快な、ボリューム満点の4年間は、私に何をもたらしたのか。ごま油のかかったキャベツでも食べながら、一緒に振り返っていこう。もちろんお代わりは何回だって自由だ。

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