教育実習は毎日定時退勤でも最後泣けます

 またよく分からないタイトルですみません。もうすぐ9月、教育実習シーズンのスタートです。きっと今年も実習生の人たちはクソでかい不安を抱えながら実習初日が来ることに怯えていることでしょう。そんな皆さんの不安を少しでも和らげる目的も兼ねて、1年前の自分自身の教育実習の経験を踏まえていくつかお話してみようと思います。


定時で帰る

 私は去年実習前に目標を一つ立てました。それは「定時退勤」です。

 自分の実習校(高校)は17時30分から18時30分までの時間が基本的な退勤時間となっていたので、その間に帰ることができたら目標達成としました。結果は、同僚たちと遅くまで残って雑談をしていた最終日以外は全てクリア。なぜそれほどまでに定時退勤を徹底したのか。いくつか理由があります。

理由①

 1つ目の理由は「早く帰りたいから」です。当たり前すぎワロタ。早く帰って、早く飯を食って、早く風呂に入って、そして早く寝たいからです。実は実習中にもう一つ目標を設けていたのですが、それは「最低6時間睡眠」。睡眠は全ての基本です。睡眠時間が足りない状態の教員が「子どもの命を守る」という最大の責務を果たすことができるでしょうか。自分にとって、子どもにとって、指導教員にとって、全てにとって十分な睡眠はプラスになる、というか絶対必要です。

 話を戻します。6時間以上の睡眠を確保しようとしたら、21時とかに家に着いてたらもう間に合わないわけです。そのため、早く帰ることにすべてを捧げたということです。ちなみに「最低6時間睡眠」の目標も全日程で達成されました。おめでとうございます、ありがとうございます。

理由②

 2つ目の理由は「自分の教員適正を調べるため」です。"定時"というのは"定められた時刻"という意味、つまりこの時間に帰るのが「当たり前」なわけです。なので、定時に帰れないようなお仕事には何らかの問題があるわけです。学校の体制、指導教員のやり方、自分のやり方など、どこかに問題を抱えているということです。

 そのため、定時退勤ができるかどうかは自分が効率よく教員業務ができるか、また、学校や上司(指導教員)に問題があってもそれを自分で解決できるかということを判断する試金石みたいなもの、と私は考えています。厳しい言葉ですが、私は教員を長く続けようと思ったら業務量の限られてる教育実習ごときで残業してる場合ではないと思っているので、こういった考えを持っているわけです。

理由③

 3つ目の理由、実はこれが一番大きいんですが、それは「教育界の未来のため」です。急に話のスケールがデカくなって困惑されていることと思いますが、普通に続けます。

 実習を通じて実習生が定時で帰る訓練をして、そしてその実習生が教員になって、全力で定時で帰る努力をする。その数が増えれば増えるほど、将来の学校現場の業務時間は結果として減っていくと思いませんか。そしてこれこそが、"働き方改革"というものではないでしょうか。

 働き方改革はなにも政府だけが進めるものではありません。現場が業務時間を減らす努力をすることこそがなによりも"働き方改革"です。業界全体が疲弊してる教員という世界、これを大きく変えていく。教員になりたいという人間が増えるような、持続可能な業界にしていく。そして、教育界に明るい未来をもたらす。そんな壮大なプロジェクトに現場から携わる人間になりたかったので、私は実習中に定時で帰るようにしました。皆さんもやってみませんか?

定時で帰る努力

 では、具体的に私は定時で帰るためにどんな努力をしたのか。

 「何事も早めに動く」「無理なことは無理だと言う」「指導案や授業資料は未完成でも指導教員に見せる」「困ったことはすぐに相談する」「他人に任せられことは任せる」「家でできることは家でやる」など。

 一つ一つ挙げていけばきりがないのでここらへんにしますが、どれもわりと当たり前のことですよね。でも、これらを意識して徹底することこそが、飛躍的に作業効率や上司(指導教員)や同僚の信頼を上げます。

 「分かってるわ」と思ったそこのあなた。分かってるならやってください。本当にやってください。自分のため、周りのため、未来の教育界のために。ぜひお願いします。

 一つだけ具体的なアドバイスをしたいと思います。実習中は指導案を書きますが、授業づくりは指導案に頼りすぎないことをおすすめします。パワーポイント、板書計画、授業プリントなど、授業中に生徒に見せるor渡すものをベースに授業をつくり、それを最終的に指導案にまとめるというやり方だと、とてもスムーズにいくと私は感じました。

 また、指導教員に「指導案にはこう書いてあるけどこれはどういう意図?」みたいなことを聞かれたときに、何も答えられなかったりタジタジしてしまうとかなりしんどいです。そのため、指導案はあくまで指導案として、授業のイメージは自分の中でしっかりと持っておくことが大切だと思います。

 なんか急に先輩風吹かせてすみません。以上、具体的なアドバイスでした。

定時退勤でも最後泣けます

 ここで、実習終了後に同期から聞いた話を一つ紹介します。「実習中は本当にしんどかったけど、最後に生徒から寄せ書きみたいなのもらったとき、毎日毎日遅くまで残って頑張った甲斐があったなって思った」というお話です。

 ここで私の感想を述べさせていただきます。えーっと、そのあなたの抱いた感動と"遅くまで残ってた"という事実はあんまり関係ないと思うんですが。
 なんというか、毎日の残業を自分の中で美談にしようとしてませんか、と思った私は性格が悪いのかもしれません。が、はっきり言います。毎日定時退勤でも寄せ書きはもらえますし、それで感動できます。事実、自分は最後の最後に寄せ書きもらいましたし、それで大号泣しました。

 ただでさえ残業をかなり否定的に見ている人間が定時退勤の日々でもそんな素敵な経験ができてしまったわけですから、先ほど紹介した同期の話には全く賛同できないわけです。

 「じゃあ寄せ書き毎年もらってたら、たとえ信じられない量の残業をしててもズタボロになって死ぬまで何十年も働き続けるんだね?」ここまでのことは言ってませんが、オブラートに包んで同期に似たような内容のことを言いました。彼には一体どう伝わったでしょうか。もしかしたらちょっと嫌われたかもしれませんね。まあ、しゃーない。

 真面目な話、寄せ書きはあくまで生徒の"好意"です。これに頼りきっているようなマインドマネジメントは非常に危険だと思います。給与に対する正当な仕事量や勤務時間を得られていないことは、教員側の責任感の問題にも発展します。各方面に悪影響を与える「やりがい搾取」のスパイラルを止めるべく、ぜひ「感動」や「やりがい」と、労働にあたっての「責任」や「対価」はちゃんと区別して考えてほしいなと思います。

 「やりがいがあっても続けられない仕事があります。そしてそれと同じように、やりがいがなくても続けられる仕事、続けなければならない仕事もあります。」この言葉は、私が教員を数年で辞めた方から以前聞いた話です。

教育実習で手に入れたもの

 私は教育実習の最終日にホームルーム担当だったクラスの生徒に、以下のようなことを伝えました。

 「今回の教育実習では、大学生になる前に初めて"教員になりたい"と思ったときの気持ちを思い出すことができました。皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。」

 私が教員を志して教育大学に入った理由、それは学校って素敵だな、卒業してもまたここに何らかの形で戻って来たいと思ったからです。同じ年代の人間が集まって集団の中で過ごしながら子どもから大人になっていく、そんな特殊な空間の魅力に取り憑かれてしまったからです。

 大学で教員になる準備を進める中で、どうしてもこうした"きっかけ"は忘れがちになってしまいます。でも、教育実習というのは学校という空間が、生徒や現役の教員がそれを思い出させてくれます。皆さんが大学に入る前、教員養成課程に進もうと思ったときの気持ちを味わえるはずです。そうして、本当に自分がなりたい教師像を固めることができる。これが、私が考える教育実習で得られるもののうち一番大切なものだと思います。

 教育実習、辛いかもしれません。しんどいかもしれません。でも絶対に逃げないでください。それを甘んじて受け入れないでください。最後まで戦ってください。生徒と、自分と、教育と向き合ってください。そうすれば、"あなたの未来"と"教育の未来"をきっと切り拓くことができるはずです。

 教育実習生の皆さん、心より健闘を祈ります。 

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