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 その日、私は珍しく大画面のテレビを見ていた。


 たまたま小学校の帰りに友達の家にそのまま遊びに行ったときのこと。その子の家はかなり裕福で、毛並みの揃ったスタイルのいい猫、木目のきれいなダイニングテーブル、そしてリビングに鎮座する信じられないくらい大きな液晶テレビ。


 訪れたのは2回目だけど、相変わらず内装の豪華さに圧倒されながら点けたテレビ画面に、私は一瞬で目を離せなくなった。

 ありえない文字量を表示する字幕スーパー。そして、茶色い塊に呑み込まれていく仙台空港。


 映画…ではない。10年くらいしか生きてないのに、直感的に"ヤバさ"を悟った。しばらく無心で映像を見届けたあと、私は「日本人はしばらくこの"何か"を背負って生きていくんだな」と、10歳の若さにして悟った。 


 被災地から1000km以上離れた広島という地にいた私が体験した3.11はこんなもの。でも、あのテレビ画面で見た光景は一生忘れることはないだろう。そして、今確実にこの体験が私の中の大きな何かをつくっている。

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