和泉宏隆氏の曲をひたすらおすすめする

 「TAKARAJIMA」「OMENS OF LOVE」でおなじみのピアニスト、和泉宏隆氏。フュージョンバンドT-SQUAREに在籍していたことで知られ、数々のインストゥルメンタルの名曲をこの世に送り出してきました。

 残念ながら2021年に帰らぬ人となってしまいましたが、今もその作品はT-SQUAREをはじめとする多くのアーティストによって日本全国で演奏されています。今回はそんな和泉さんの作品の中から、世間にはあんまり知られていないけど個人的におすすめしたい作品を紹介してみようと思います。


TRIUMPH

 まず最初にお届けするのはこの曲。1995年発表のT-SQUAREのアルバム「Welcome to the Rose Garden」に収録されている曲で、爽やかさ全開のスクエアらしい8ビートが特徴の楽曲です。

 キーボードとギターが奏でる爽快感溢れるイントロのあとにメロディを奏でるのは、ウィンドシンセサイザー「EWI」。電子楽器でありながら温かさ溢れるEWIのサウンドを、疾走感ある8ビートのリズムにのせて軽やかに奏でていきます。

 個人的にコード進行から滲み出る優しさがたまらなく好きで、何年間もずっと聴き続けている曲です。よく晴れた日の朝とかにちょうどいい感じですね。

BREEZE AND YOU

 続いてお送りするのは、1986年発表のT-SQUARE(当時はTHE SQUARE)のアルバム「TRUTH」に収録されている楽曲。ちなみに同じアルバムには、表題曲でF1のテーマとして有名なGt.の安藤さん作曲の「TRUTH」や、和泉さんの代表作の一つであるスローバラード「TWILIGHT IN UPPER WEST」も収録されています。

 先ほど紹介した「TRIUMPH」とは打って変わって、今度は16ビートの大人の雰囲気漂うジャズテイストの曲です。衝撃的なイントロが終わると、徐々に楽器を増やしながら奏でられるバッキング、そしてピアノによるAメロが始まります。この細かいリズムなのに絶妙な重さのあるAメロが、本当にピアニスト和泉宏隆の真骨頂って感じで大好きです。

 その後Bメロでアルトサックスが一瞬だけ入ってくるも、再びAメロに回帰するとまた離脱。まあなんとも贅沢な使い方ですね。大丈夫、ちゃんとこのあとにソロが控えています。(動画ではA.Saxの伊東さんが完全に入るタイミングを失念していますが…)

HEIDI

 こちらはT-SQUAREのデビュー40周年記念アルバムとして2018年に発表された「It's a Wonderful Life!」に収録されている曲で、和泉さんが生前スクエアに提供した最後の作品です。

 8分の6拍子の軽やかなリズムとともに、アコースティックギターやフルートの優しい音色が響きます。音数が多いのに軽やかさを感じさせるコンポーザー和泉宏隆の特徴を如実に表している作品と言えると思います。

 また中盤にあるアコースティックピアノのソロにもご注目。速いテンポでも立体感のあるドラマチックなソロは流石としか言いようがないですね。

Tornado

 今度はバンドが変わり、ギターの鳥山雄司氏とドラムの神保彰氏と3人で活動していた「Pyramid」の2006年発表のアルバム「TELEPATH」に収録されている曲です。

 ちなみに鳥山さんは、TBSのドキュメンタリー番組「世界遺産」のテーマ曲などを手掛ける作曲家・プロデューサーとしても知られているアーティスト。そして神保さんは日本のフュージョン界の大御所「CASIOPEA」の黄金時代のメンバーで世界的にも有名なドラマー。なんと豪華な3人組なんでしょう。日本版「Fourplay」は言いすぎかもしれませんが、個人的には同じレベルだと思います。

 曲はアラビアンなSEと何故か声入りのドラムのフィルインを経由して幕を開けるという異様なスタイル。それでも始まった音楽には和泉さんらしさが溢れています。要所要所に難解なユニゾンを挟みながら、ゆったりとしたリズムでどこか異国情緒を感じさせる美しいメロディを聞かせるのは、スクエアとはまた違った落ち着いた雰囲気があります。

Wide & Full

 次にご紹介するのは、ピアノとベースのデュオ「HIROMITSU」の2016年発表のアルバム「Wide & Full」の1曲目に収録されている表題曲です。ちなみに一緒に演奏しているベース奏者は、T-SQUAREで約12年間同僚だった須藤満氏です。

 ピアノの奏でる壮大なイントロに導かれてフレットレスベースのメロディが始まり曲は幕を開けます。全体を通して速いテンポで曲が進んでいきますが、次々に移り変わる曲の雰囲気がより一層曲の疾走感を演出しています。須藤さんとの抜群のアンサンブルが魅力的ですね。

Colors on the Street

 最後にお届けするのはピアノソロ曲。2002年に発表された和泉さんのピアノソロアルバム「6 to 10 morning」に収録されています。ちなみに動画は和泉さんが2006年に韓国の音楽番組に出演したときのものです。

 キラキラと輝くようなアドリブではじまると、8分の6拍子でゆったりと曲は進んでいきます。全体を通して切ないコード進行と綺麗なメロディラインが特徴の曲で、爽やかだけどどこか胸が締め付けられる和泉節を存分に楽しめます。

 丁寧なタッチと適度な重さが感じられるピアノプレイは本当に一級品。個人的に和泉さんのソロ曲の中で最も好きな作品です。


他にももっとたくさん紹介したい作品はあるんですが、とりあえずはこの辺にしたいと思います。ぜひ和泉さんの作品に触れて、美しい旋律とピアノの音色を聴いてみてくださいね。

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