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君となら 田中日菜#3

期待したいのに

-田中日菜-

 私は今、行きつけのバーに居る。隣の隣の席で女性がシクシク泣いている。その女性の友人らしき人物が隣で背中をさすっている。胸辺りまでん伸ばした髪の毛が艶やかでシャンプーのCMにでも出てきそうだ。アーモンドみたいな目をしていて凛とした雰囲気があった。私もあの女性に慰められたい。あんな女性だったら凛は振り向いてくれるのかな。私は至って普通の容姿である。美人でもなく不細工でもない。笑った顔は可愛いとは言われたことがある。よく笑う方だが自分では好きでない。無精髭がよく似合うマスターもその子を一緒に慰めている。内容に聞き耳を立てていると梨香子と呼ばれる女性は浮気されたらしかった。「愛〜〜〜何で私はこんな目に」慰めている女性は愛というらしい。離れな〜そんな男〜などと言って慰めている。聞いている限り最低な男だった。しかし、私は、離れられない気持ちにとても共感してしまう。今すぐ私もあの中に参入して話を聞いてあげたい位。ジントニックを飲みながら目の前にある生ハムを乱雑に口の中に放り込む。
 私は、沼にハマっている。俗に言う沼っている。相手は霜月凛という男だ。関係性はセフレとでもいうのだろうか。彼女にはとうてい昇格できそうにない。セフレから彼女に昇格できる人なんてこの世に存在するのだろうか。もし存在するならば、インタビューして質問攻めにしたい。出会ったのは、某マッチングアプリだ。あっという間に仲良くなり、そういう関係性に発展するのも早かった。彼に段々と惹かれていった。


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