2月24日(木)Part2

彼が店を出て数時間後、背中の痛みは劇的に酷くなった。
腰を抑えながらトイレに行く。
膀胱炎の症状”排尿痛”にまた苦しむ。
このトイレを出たら、病院に行こう!これはきっと、我慢できないことのような気がした。
決意してトイレから出ると、よく来てくれる激カワ女子高生Hちゃんが店にいた。
激カワなので、何事もなかったかのように仕事に戻った。
Hちゃんには気付かれまいと接客したが、もし普段の様子と違っていたと感じさせてしまっていたら悪いと思う。
Hちゃんは【治一郎】の大きな紙袋を抱えていた。
今年で大学生のHちゃんは、お世話になった塾へ菓子折りを持って挨拶に行くのだという。
私は塾の経験があまり無いため(というか勉強の経験すらあまり無い)、
感覚がよく分からないのだが
「二度と行くか!!」と思うものではないのか?
菓子折りは【治一郎】だという知識をどこで覚えたのか?
Hちゃんは、想像上の私の女子高生姿そのものだ。
Hちゃんは絶対に、拳をカメラに向け伏し目がちになったりしなかっただろう。
プリクラの落書きに【気合い】と描いたりしなかっただろう。
名前の始まりと終わりに”卍”を付けたりしなかっただろう。

彼女を見送った後、すぐに近くの内科へ駆け込んだ。
症状を先生に話すと、「右の背中は痛くないですか?」と、右背中をコツっと叩いた。
「右は痛くないですね。左側が痛いです。」
「左側ですね、これはどうですか?」左背中をコツっと叩いた。
先生はきっと右背中と同じ力量で叩いたが、確かな殺意を持ってぶん殴られたような激痛を感じた。
「ぁあっ!痛いです・・・」
「分かりました。では血液検査と、尿検査と、もしかしたら点滴になります。」
思ったより大事になってしまった。
病院にお世話になったことと言えば、酒の多量摂取かインフルエンザくらいな私。
薬物疑惑のときしか血液検査や尿検査なんてしないと思っていた。
言われるがまま検査をこなし、流れるまま点滴をすることになった。
背中は痛むが、少し憧れてた点滴を受けているこの状況に、なんだかときめいていた。
よくない考えが浮かぶ。
『滴の写真を撮って、ストーリーに上げたい・・・』
恐ろしい承認欲求に襲われた。
グッと堪えた。
これを上げたら私は女としておしまいだ。結婚できなくなるかもしれない。
やめよう。
この衝動を抑える感覚はこれからもしっかり大切にしていきたい感覚である。








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