11/29(火)

今日で、約2年ちょっとお世話になったカフェを退職した。
最後は常連のお客様や友だちがこぞってお店に遊びに来てくれた。
近所のバーのマスターが、たくさん寄せ集められた白いかすみ草の真ん中に、赤色のチューリップが一輪だけ刺さったブーケをプレゼントしてくれた。
まるで日本の国旗のようだった。
夕方になるにつれどんどん人は集まり、小学1年生の男の子とその父親が来店した。
親子は日曜日になるとよく来てくれていた。
男の子はしりとりや連想ゲームが好きで、「花実ちゃん、連想ゲームしよう!」と、よくキラキラの目でゲームに誘ってくれた。
もう、日曜日にしりとりや連想ゲームで遊ぶ時間も無くなるのかと思うと寂しくなった。
日本国旗ブーケをプレゼントしてくれたマスターは、すでにビール2杯と麦焼酎をロックで4、5杯飲んでいた。
「花実!もう1杯!この1杯で最後!本当に最後にする。最後の最後の子猫ちゃん〜♪」
子どもと接するにはふさわしくない状態のオヤジと化していた。

「花実ちゃん、お絵かきバトルしよう!」

男の子は、しりとりでもなく連想ゲームでもなく、今日はお絵かきバトルを提案。
日本国旗オヤジ含めて、カウンターに座る大人たち全員でお絵かきバトルをすることになった。
男の子が絵のお題を出して、大人たちがお絵かきをする。
男の子は全員の絵を審査して、優勝を決めるというルール。
お題は”亀”だった。
カウンターに座る大人たちは口を揃えて「難しい!」と言ったり、自分の描いた”亀”に思わず吹き出したりしながらお絵かきを楽しんでいた。
全員が描きおわり、男の子が順番に審査。
大人たちの描くおかしな亀を見てゲラゲラと笑いながら大人たちの絵を審査していく男の子。
「ねぇ、これ、誰が描いたの?」
男の子は1枚の絵をこちらに向けた。
そこには、額に怒りマークを浮かばせながら両手を前ならえのように突き出し、潔く性器をぶら下げ2本足で立つ、亀の甲羅を背負った男が描かれていた。
それを見た男の子の父親が真っ先に口を開いた。
「なんか、足の先の部分もソレに見えるな!」
子どもにこんなもの見せないでくださいよ!とか言うのかと思ったけど、新たな視点で父親も絵を評価していた。
描いたのは言うまでもない、今、最後の麦焼酎ロックを飲み終えるころの日本国旗ジジイだった。

「男ってのはなァ!!イくときは怒ってんだよ!!!怒りながらイくもんだ!!!
それで・・・最後に、謝るんだ。ごめんねって。」

そんな男は絶対に嫌だなと思ったと同時に、あの史上最悪な亀のような男の絵は自画像なのだと分かった。
男の子はポカンとしていた。

お絵かきバトルの結果は、なんと私が優勝した。
手抜きだと言われてしまうかと思ったが、一目で”亀”だと分かるところが良かったらしい。
どうやら真面目に”亀”を描いたのは私だけだった可能性がある。

お店はそれからもどんどん盛り上がっていき、気付くと閉店時間を2時間も過ぎていた。
楽しい時間はあっという間で、カフェで働いた約2年間という時間もあっという間だった。
このカフェで色々な出会いがあったし、色々な事件があった。
お客さんや友人が楽しそうに笑っている光景が好きだった。
世間話をしにフラッとカフェに寄ってくれることが嬉しかった。

この日記を読んでくださっている方の中で
カフェに遊びに来てくれた方もいるかと思います。
足を運んでいただき、ありがとうございました。
また、遊びに行ってみたいと送ってくださっていた方々も
お気持ちが嬉しいです、ありがとうございます。

”カフェ店員日記”ではなくなりますが、これからもNoteは書き続けてゆきたいと思います。
これからは”元カフェ店員日記”としてよろしくお願いいたします。(日記タイトルは試行錯誤していきたい)
相変わらず更新はかなりの不定期になるかと思いますが、専業主婦となった私のこれからの人生も、どうかあたたかく嘲笑いながら見守ってくださいましたら幸いです。


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