見出し画像

個人的、名作映画。

ふと見たくなる映画はありますか?

私には何本かある。
そのうちの1本について、今回は書こうと思う。

2023年に公開された「ひみつのなっちゃん。」。

簡単なあらすじは、ドラグクィーン達のロードムービー群像劇。
急逝した「なっちゃん」(カンニング竹山)。その知らせを聞いたバージン(滝藤賢一)・モリリン(渡部秀)・ズブ子(前野朋哉)は、ひょんなことをきっかけに「なっちゃん」の実家で執り行われる葬儀に参列すべく向かう。
(※出演者は敬称略)

作品が始まればドラグクィーン特有の明るさと、ドタバタ感で楽しい旅の始まりである。
事の始まりは悲しいはずなのに。


最大のポイントはバージン役の滝藤さん!

もう所作の美しさといったら。
ダンスのシーンが冒頭に出てくるが、もう「美しい」の一言!
「もっと見たい!」と思わせる余韻に浸りながら、序盤は進む。
これがちょうど良いバランスで、グッと胸を掴まれる。
発言にしても、柔らかく優しく。
こんな「女性」に憧れてしまう。


脇を固めるモリリン役の渡部秀さん・ズブ子役の前野朋哉さんもバランスが絶妙。

モリリンは現代っ子って感じで、どこか冷めた目を持っている。
ズブ子は、ウザい系でトラブルメーカー。しかもテレビ出演まで果たしている売れっ子。
そして、この2人のダンスシーンはたっぷりあって、とても可愛らしい。
相当練習したんだろうな…(泣)
滝藤さんの所作は別格の美しさを感じるが、モリリンは可愛い系女子といった感じ。
脚が内股になっていたり、驚いた時にサッと手が口元に来たり。
これまた自然で役者さんの素晴らしさを見せて頂ける。

演技だけでも魅力的なのに、セリフもグッと心を掴まれる箇所が後半に。

それはモリリンがカミングアウトした後の苦しさを打ち明けるシーン。

モリちゃん、大丈夫。人間、誰でも不安定な時はあるから

バージン(滝藤賢一)

でも不思議よね~自分って一番近いのに一番見えないんだもの

バージン(滝藤賢一)


ホッコリした言い方と相まって、胸にジーンをくる。

できるだけ人前では欠点を隠して生きようとしている私にとって、前者の言葉は励ましに聞こえた。
後者は共感でしかない。
こうやって見える・聞こえる形で示してもらえると、ホッとする。
「自分が自分をよく解ってる」なんて、あれは違うのだと。
「一人で抱え込まずに、困ったり迷った時は他人を頼りなさい」と背中を撫でられているような気持になる。
自分で自分に頼りすぎて、結局は自分で首絞めてるわよ、とでも言われているよう。
深読みかもしれないけれど。

そんな心温まる「ひみつのなっちゃん。」
「しーっ!淑女は!黙って!見てみなさい!」
と彼女らが言うかもしれないので、気になったら是非。
ただし最後のネタバレは、もちろん「ひみつ」で。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?