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先生になる前に読んでおきたい「教育古典」

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”古典はいらない”という声が聞こえる現代。古典から学ぶべきものはない、と果たして言い切れるでしょうか。「教育古典」のなかには、いまの教育にも生きる視点がたくさんあります。でも原著…
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#苫野一徳

連載1_プラトン『国家』 先生になる前に読んでおきたい「教育古典」名言で迫る教育の本質

教育とは、〔略〕視力を外から植えつける技術ではなくて、視力ははじめからもっているけれども、ただその向きが正しくなくて、見なければならぬ方向を見ていないから、その点を直すように工夫する技術なのだ。  今から二千数百年も前の、古代ギリシアの哲学者、プラトン。これは、「洞窟の比喩」と呼ばれる有名なたとえ話を語る際に、プラトンが言った言葉です。  それはこんな話です。  洞窟の中に、その奥の壁面だけが見えるようにして縛られている人たちがいたとしましょう。彼らに見えるのは、後ろか

連載2_ルソー『エミール』 先生になる前に読んでおきたい「教育古典」名言で迫る教育の本質

わたしたちの欲望と能力とのあいだの不均衡のうちにこそ、わたしたちの不幸がある。  言わずと知れた、教育古典における名著中の名著です。子どもには自然な成長というものがある。だから教育は、余計なことをしすぎず、その自然な成長に寄り添う「消極教育」であるべきだ。そんな主張をした教育書として知られています。  いま読んでも新しい、どこを切っても名言だらけの本書。引用した箇所以外にも、たとえば、「あれをするな、これをするな、あれをしろ、これをしろ、とばかり言われて育った子どもたちは