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木之本に、春の神輿が渡るとき。

近くで先導する笛の音が響いたかと思うと、いよいよ我が家の目の前までやってきた。民家から沿道へと出て来る女性や子供たち。勇壮な法被姿の男衆たちが、誇り高く神輿を掲げる。ゆるりと進む神輿は、場所によって超絶荒ぶる。あぶなげに片側へ思い切り神輿を傾けるしぐさは、ピンチではなく、わざとそうするのだとか。

ひとつの神輿を、各町内が一緒に交代しながら担ぐ。伏見稲荷から伝えられたという、装飾も美しく雅な神輿は、重さは2トンもあるという。各町によって、男たちの法被と着物の柄が違っていて、どの町も品よく粋な装い。途中、わらじのひもが切れることがあるので、予備のわらじを沢山ぶら下げていた。

午前11時スタートした神輿は、要所要所で休みながら、各町の接待を受け、木之本の街をぐるりと巡行する。午後16時をまわって、やっと山のふもとの意富夫良神社(おおふらじんじゃ)へ御還りに。ラストシーンは、男衆も名残惜しそうに、参道を進む。

毎年、男手をたやさぬよう、地元へ帰郷して、この神輿を担ぐひともいるという。沿道に出て、和やかに神輿について行く子供たち。この街に引き継がれてきた誇りを目の当たりにしたひととき。


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