見出し画像

消費生活相談員資格試験にチャレンジ(10)

2021年度 消費生活相談員資格試験(国民生活センター実施)の問題・正解に簡単な解説等を付した記事シリーズ第十弾、10問目です。今回は民法に関する出題です。
なお、本シリーズの記事のみをまとめてご覧になりたい場合は、記事に表示されているハッシュタグ「#消費生活相談員資格試験」をクリックしてください。


10.次の文章のうち、下線部が2ヵ所とも正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
※以下は、民法に関する問題である。

① 意思能力を欠く者がした法律行為は、無効である。既に相手方から給付を受けていた場合、行為の時に意思能力を有しなかった者は、(ア)その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。 制限行為能力者がした法律行為が取り消された場合、当該制限行為能力者は、(イ)その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う

正解:○

〔参照条文〕民法第121条の2


② 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について成年後見人を選任するには、(ア)家庭裁判所の審判 が必要である。成年被後見人が行った日常生活に関する法律行為については、(イ)取り消すことができる

正解:イ

〔コメント〕イ:取り消すことはできない。
〔参照条文〕民法
(成年被後見人の法律行為)
第九条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない


③ 定型約款を準備した者が、あらかじめ当該約款を契約内容とする旨を相手方に表示していた場合、定型取引を行うことの合意をした者は、(ア)個別の条項に合意がなくとも、個別の条項についても合意したとみなされる。 定型約款を準備した者は、(イ)個別に相手方と合意をすることなく定型約款を変更して契約内容を変更できる場合がある

正解:○

〔参照条文〕民法第548条の2、第548条の4


④ 消滅時効の対象になる権利は、(ア)債権と所有権 であり、時効の完成後、時効によって利益を受ける当事者が援用したときに、その効力が認められる。権利者から催告があったときは、その時から(イ)6ヵ月 を経過するまでの間は、時効は完成しない。

正解:ア

〔参照条文〕民法
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する
 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。


⑤ 代理権を与えられた者が、代理権の消滅後にその代理権の範囲内において契約した場合を、代理権消滅後の表見代理といい、契約の相手方が過失によって代理権の消滅を知らなかったときは、代理行為によって生じる法律上の効果は、(ア)本人に帰属しない。 代理人が代理権を自己又は第三者の利益を図る目的で行使した場合を、代理権の濫用といい、契約の相手方がその目的を知っていれば代理人の行為は(イ)無権代理行為とみなされる

正解:○

〔参照条文〕民法第112条


⑥ 売買契約において、引き渡された商品が契約の内容に適合せず、買主が履行の追完請求をすることができる場合には、買主は売主に対し、(ア)目的物の修補、代替物の引渡し、又は不足分の引渡し を請求することができる。買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告したにもかかわらず、売主がこれに応じないときは、買主は、代金減額請求をすることができる。代金減額請求を行った場合、買主は(イ)損害賠償請求をすることができない

正解:イ

〔コメント〕 イ:代金減額請求を行った場合でも損害賠償請求をすることはできる。

〔参照条文〕民法
(買主の追完請求権)
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
(買主の代金減額請求権)
第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
〔第2項以下省略〕
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第五百六十四条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない


⑦ 建物の建築を内容とする請負契約において、注文者は請負人に対して(ア)建物の引渡しと同時に 報酬を支払わなければならない。建物に重大な欠陥があり、そのために契約をした目的を達することができないとき、注文者は、(イ)契約を解除することができる

正解:○

〔参照条文〕民法第633条、第636条、第637条


⑧ 債権の譲渡があったことを、譲受人が債務者に対抗するためには、(ア)債権の譲渡人 が債務者に債権譲渡した旨の通知をするか、債務者自身が債権譲渡された旨を承諾する必要がある。また、債権者と債務者との間で貸金債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合、(イ)これに違反する債権譲渡は無効である

正解:イ

〔コメント〕イ: 譲渡制限の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、無効とはならない。
〔参照条文〕民法
(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない


⑨ 表意者が真意でないことを知ってする意思表示を心裡留保といい、これは原則として(ア)無効 となる。真意に基づかない意思表示を相手方と通じてすることを虚偽表示といい、これは(イ)無効 となる。

正解:ア

〔コメント〕ア:心裡留保の意思表示は原則有効。
〔参照条文〕民法
(心裡留保)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
(虚偽表示)
第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。


⑩ 契約は、申込みと承諾の2つの意思表示の合致によって成立するところ、隔地者間の契約では、(ア)承諾の通知を発した時 に成立するとされている。承諾者が申込みに変更を加えて承諾したときは、(イ)申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされる

正解:ア

〔コメント〕ア:到達した時から効力を生ずる。(到達主義)
〔参照条文〕民法
(意思表示の効力発生時期等)
第九十七条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
(申込みに変更を加えた承諾)
第五百二十八条 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。


⑪ 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。詐欺による意思表示の取消しは、取消前に利害関係を有するに至った善意無過失の第三者に(ア)対抗することができない。 強迫による意思表示の取消しは、取消前に利害関係を有するに至った善意無過失の第三者に(イ)対抗することができない

正解:イ

〔コメント〕イ:強迫による意思表示の取消は善意無過失の第三者に対抗できる。
  
〔参照条文〕民法
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない