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消費生活相談員資格試験にチャレンジ2024(5)

2023年度消費生活相談員資格試験(独立行政法人国民生活センター実施)の問題・正解に簡単な解説等を付した記事シリーズ第五弾、今回は第9問と第10問、民法に関する問題です。


9. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※以下は、民法に関する問題である。

① 売買契約で高額な違約金を設定したことが、暴利行為として公序良俗に反する場合、当該売買契約は取り消すことができる。

正解:×

〔参照条文〕民法
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。


② 承諾期間を定めずに申込みをした場合、原則として、自由に申込みを撤回することができる。

正解:×

〔参照条文〕民法
(承諾の期間の定めのない申込み)
第五百二十五条 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
2~3 (省略)


③ 無権代理行為について本人の追認が得られた場合、別段の意思表示がない限り、追認した時から有効な代理行為として効力が生じる。

正解:×

〔参照条文〕民法
(無権代理行為の追認)
第百十六条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


④ 占有者が、所有の意思をもって、平穏・公然と他人の物を占有し、かつ、占有開始時に善意無過失であれば、占有開始時より10 年が経過すると、取得時効が成立する。

正解:○

〔参照条文〕民法
(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。


⑤ 民法では、法定利率について変動制を採用し、3年ごとに見直しを行うこととされているところ、現在の利率は3%と定められている。

正解:○

〔参照条文〕民法
(法定利率)
第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年三パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4~5 (省略)

〔参照URL〕【法務省】令和5年4月1日以降の法定利率について


⑥ 中古自動車の引渡しのような特定物の引渡しの場所は、契約当事者間で特別の合意がない場合には、債権者の住所となる。

正解:×

〔参照条文〕民法
(弁済の場所及び時間)
第四百八十四条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
2 (省略)


⑦ 個人事業主である製造業者が、事業資金を銀行から借り入れる際に、知人である個人に保証人を依頼した場合、保証契約が効力を生じるためには、その契約の締結に先立ち、法定の期間内に作成された公正証書によって、保証人になろうとする者が保証の意思を表示しなければならない。

正解:○

〔参照条文〕民法
(公正証書の作成と保証の効力)
第四百六十五条の六 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2~3 (省略)


⑧ 定型約款準備者が定型約款を記載した書面を既に相手方に交付していた場合であっても、相手方から請求があったときは、改めて定型約款の内容を示さなければならない。

正解:×

〔参照条文〕民法
(定型約款の内容の表示)
第五百四十八条の三 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない
2 (省略)


⑨ 賃貸マンションで水漏れがあり、急迫の事情があったため、賃借人が修繕を行った場合において、賃貸人と賃借人の間で特段の合意がないときは、賃借人は、自らが負担した修繕費用について賃貸借終了時でなければ賃貸人に請求することができない。

正解:×

〔参照条文〕民法
(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる
2 (省略)


⑩ 請負人が引き渡した仕事の目的物の品質が契約内容に適合しない場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、請負人が不適合を知り又は重大な過失によって知らなかったときを除き、注文者は請負人に対して担保責任を追及することができない。

正解:○

〔参照条文〕民法
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第六百三十七条 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
2 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。


10.次の文章のうち、下線部が2ヵ所とも正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
※以下は、民法に関する問題である。

① 法定後見制度を利用するために事理弁識能力を欠く常況にある本人から請求があった場合には、家庭裁判所は㋐後見開始の審判をすることができる。任意後見制度は、本人自らが任意後見人となる者と任意後見契約を締結するもので、この契約は㋑あらかじめ公正証書によって行う必要がある

正解:○

〔参照条文〕民法
(後見開始の審判)
第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

任意後見契約に関する法律
(任意後見契約の方式)
第三条 任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。


② 未成年者が法律行為をする場合には、法定代理人の同意が必要である。未成年者が父母の親権に服する場合、原則として、法定代理人である㋐父母双方の同意が必要である。法定代理人の同意は、未成年者が自ら法律行為を取り消す場合、㋑必要である

正解:㋑

〔参照条文〕民法
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(親権者)
第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

〔参照URL〕【東京都】未成年者契約の取消し


③ 契約の当事者は、㋐法令の制限内において、契約内容を自由に決定することができる。また、㋑法令に特別の定めがある場合を除き、契約成立に書面の作成は不要である

正解:○

〔参照条文〕民法
(契約の締結及び内容の自由)
第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
〔コメント〕いわゆる「契約自由の原則」は、自明のこととして従前は民法上に明文の規定は無かったが、平成29年の民法改正によって明文化された。


④ 代金支払いと同時に商品を引き渡すこととする売買契約において、売主が約定に従って商品を引き渡さないので、買主が代金の支払いを行わなかった場合、買主の代金支払債務は履行遅滞と㋐ならない。商品の引渡しと代金の支払いが済んだ後に契約が解除された場合、売主と買主はそれぞれ原状回復義務を負担するが、㋑売主から代金の返還があるまで買主は商品の返還を拒むことができる

正解:○

〔参照条文〕民法
(同時履行の抗弁)
第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。


⑤ 商品の売買契約を民法上の詐欺を理由に取り消した当事者が、商品の受領時に取消しができることを知らなかった場合、契約時に意思無能力又は行為無能力であれば、㋐現に利益を受けている限度で返還義務を負う。最高裁判所の判例では、いわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で違法に金員を取得する手段として著しく高利で貸し付けた場合、元本について、借主は㋑返還する義務を負うとされている。

正解:㋑

〔参照条文〕民法
(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
(原状回復の義務)
第百二十一条の二 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

〔参照URL〕【金融庁】ヤミ金融業者に係る最高裁判決の概要について