消費生活相談員資格試験にチャレンジ2023(7)
2022年度 消費生活相談員資格試験(独立行政法人国民生活センター実施)の問題・正解に簡単な解説等を付した記事シリーズ第七弾、第10問と第11問です。
10.次の文章の[ ]に入る最も適切な語句を、下記の語群の中から1つ選び、解答用紙の解答欄にその番号を記入(マーク)しなさい。なお、同一記号には同一語句が入る。
認知症、知的障害、精神障害などの理由により十分な判断能力を有しない者を保護し、支援する制度を成年後見制度という。民法では、[ ア ]を欠く常況にある者について後見開始の審判ができるとされ、審判を受けた成年被後見人に成年後見人を付すこととされている。成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、自己決定尊重の観点などから、成年被後見人のした[ イ ]については、取り消すことができない。
被保佐人は[ ア ]が著しく不十分な者について、被補助人は[ ア ]が不十分な者について、それぞれ保佐開始の審判、補助開始の審判ができるとされ、審判を受けた被保佐人、被補助人にそれぞれ保佐人、補助人を付すこととされている。成年被後見人よりも判断能力の低下の度合いが軽度なため、自己決定尊重の観点から、保佐人及び補助人に特定の法律行為について代理権を付与するためには、本人の同意は[ ウ ]である。
保佐人の同意を要する行為について、被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず保佐人が同意をしないとき、[ エ ]は、被保佐人の請求により、同意に代わる許可を与えることができる。補助人の同意を要する行為について補助人が同意をしない場合にも、同様の手続きをとることになる。
任意後見契約は、本人があらかじめ任意後見人を選任し、[ オ ]により行うものである。任意後見契約は、[ エ ]が任意後見監督人を選任した時から効力が生ずる。
【語群】
日常生活に関する行為 2. 官報公告 3. 事理弁識能力 4. 不要 5. 家庭裁判所 6. 財産に関する権利の得喪を目的とする行為 7. 戸籍への記載 8. 責任能力 9. 必要 10. 検察官 11. 公正証書 12. 市町村長 13. 権利能力
正解
認知症、知的障害、精神障害などの理由により十分な判断能力を有しない者を保護し、支援する制度を成年後見制度という。民法では、[ ア:3. 事理弁識能力 ]を欠く常況にある者について後見開始の審判ができるとされ、審判を受けた成年被後見人に成年後見人を付すこととされている。成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、自己決定尊重の観点などから、成年被後見人のした[ イ:1. 日常生活に関する行為 ]については、取り消すことができない。
被保佐人は[ ア:3. 事理弁識能力 ]が著しく不十分な者について、被補助人は[ ア:3. 事理弁識能力 ]が不十分な者について、それぞれ保佐開始の審判、補助開始の審判ができるとされ、審判を受けた被保佐人、被補助人にそれぞれ保佐人、補助人を付すこととされている。成年被後見人よりも判断能力の低下の度合いが軽度なため、自己決定尊重の観点から、保佐人及び補助人に特定の法律行為について代理権を付与するためには、本人の同意は[ ウ:9. 必要 ]である。
保佐人の同意を要する行為について、被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず保佐人が同意をしないとき、[ エ:5. 家庭裁判所 ]は、被保佐人の請求により、同意に代わる許可を与えることができる。補助人の同意を要する行為について補助人が同意をしない場合にも、同様の手続きをとることになる。
任意後見契約は、本人があらかじめ任意後見人を選任し、[ オ:11. 公正証書 ]により行うものである。任意後見契約は、[ エ:5. 家庭裁判所 ]が任意後見監督人を選任した時から効力が生ずる。
11.次の文章のうち、下線部が2ヵ所とも正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
① 消費者契約法は、事業者に対し㋐契約条項の内容を明確かつ平易なものとすることを求める一方、消費者に対しては、消費者契約の締結に際し、契約の内容を理解するよう求めている。これらはいずれも㋑努力義務とされている。
正解:○
〔参照条文〕消費者契約法
(事業者及び消費者の努力)
第三条 事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。
一 消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。
二~四 (省略)
2 消費者は、消費者契約を締結するに際しては、事業者から提供された情報を活用し、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解するよう努めるものとする。
② 消費者契約法にいう「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。ここにいう「事業」には、㋐営利の要素は必要とされない。また、消費者契約法の規定は労働契約に㋑適用されない。
正解:○
〔参照URL〕【消費者庁】消費者契約法/逐条解説(第3条、第48条)
③ 消費者契約法第4条第1項第1号は、事業者が消費者を勧誘する際に、重要事項について事実と異なることを告げた場合における消費者の取消権を認めている。「勧誘」とは、消費者の契約締結の意思の形成に影響を与える程度の勧め方をいい、最高裁判所の判例は、不特定多数の消費者に向けられた広告は、㋐「勧誘」に当たることはないとしている。弁護士が「必ず裁判に勝ちます」と言ったのに、裁判に勝てなかった場合、重要事項について事実と異なることを告げた場合に㋑当たらない。
正解:㋐
〔参照URL〕【消費者庁】消費者契約法/逐条解説(第4条)
〔コメント〕上記の判例において上告人となっている適格消費者団体は、京都府内に所在する「京都消費者契約ネットワーク(KCCN)」である。
④ 消費者契約法第4条第3項第4号は、いわゆるデート商法など、消費者の好意を事業者が不当に利用する場合について定めている。㋐消費者の認識において、「勧誘を行う者」が消費者に対し恋愛感情等を有しているかどうかが不明な場合、㋑消費者の恋愛感情等の客体である「勧誘を行う者」が事業者から対価を得ていない場合は、本号の要件に該当しない。
正解:㋑
〔コメント〕対価を得ている必要はない。
〔参照URL〕【消費者庁】消費者契約法/逐条解説(第4条)
⑤ 消費者Aが、サプリメント5箱を1箱1万円(合計5万円)で購入し、代金を支払ったが、6ヵ月後、2箱を費消した後になって、勧誘の際に、当該サプリメントに含まれるアレルギー成分の不実告知により誤認して契約していたことが判明した。Aが㋐当該契約を締結した時から1年間取消権を行使しないときは、取消権は時効によって消滅する。Aが、取消権の時効消滅前に、申込みの意思表示を取り消した場合には、㋑未費消の3箱分についてのみ返還義務を負う。
正解:㋐
〔コメント〕取消権の時効消滅は「追認をできる時から」1年間。
〔参照URL〕【消費者庁】消費者契約法/逐条解説(第7条、第6条の2)
⑥ 消費者契約法第4条第4項の適用により取消しの対象となる過量な内容の消費者契約とは、消費者が締結した消費者契約の目的となるものの分量等が、当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることであり、「分量等」には分量、回数、期間のほか、㋐性能や性質も含まれる。また、「著しく超える」か否かについては、㋑一般的・平均的な消費者を基準として、社会通念を基に規範的に判断される。
正解:㋐
〔コメント〕性能や性質は含まれない。
〔参照URL〕【消費者庁】消費者契約法/逐条解説(第4条)
⑦ 消費者契約法第9条は、消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効について規定している。契約の解除に伴う損害賠償額を予定する場合について規定した第1号において、無効の判断の基準とされる「平均的な損害」とは、㋐当該業種における業界の水準を指すものである。また、最高裁判所の判例は、平均的な損害額の立証責任は基本的には㋑消費者が負うとしている。
正解:㋐
〔コメント〕「平均的な損害の額」は、当該消費者契約の当事者たる個々の事業者に生ずべき損害の額について、契約の類型ごとに合理的な算出根拠に基づき算定された平均値であり、当該業種における業界の水準を指すものではない。
〔参照URL〕【消費者庁】消費者契約法/逐条解説(第9条)
⑧ 消費者契約法第10 条は、消費者の利益を一方的に害する条項の無効を規定している。同条のうち、「法令中の公の秩序に関しない規定」とは、任意規定のことを指し、最高裁判所の判例は、任意規定に㋐明文の規定のみならず一般的な法理等も含まれるとしている。消費者契約の条項が、任意規定の適用による場合と比して「消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する」場合には㋑そのことのみをもって無効となる。
正解:㋑
〔コメント〕信義則に反する程度に両当事者の衡平を損なう形で侵害することが要件。
〔参照URL〕【消費者庁】消費者契約法/逐条解説(第10条)
⑨ 事業者の債務不履行に基づく損害賠償責任に関して、「いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない」旨の消費者契約の条項は、㋐消費者契約法第8条により無効となる。事業者が軽過失の場合に、事業者の損害賠償額について上限を定める消費者契約の条項は、㋑消費者契約法第8条により無効となる。
正解:㋑
〔コメント〕後段の記述は消費者契約法「第9条」により無効。
〔参照URL〕【消費者庁】消費者契約法/逐条解説(第8条、第9条)
⑩ 消費者裁判手続特例法では、特定適格消費者団体が共通義務確認の訴えを提起することができるとしている。その対象となる事案は「消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害」に関するものに㋐限定される。不法行為に基づく民法の規定による損害賠償の請求として共通義務確認の訴えを提起する場合、いわゆる拡大損害、人身損害、逸失利益については、㋑請求の対象とすることができない。
正解:○
〔参照URL〕【政府広報オンライン】消費者団体訴訟制度